番外編7 誰も知らないおとぎ話2 病みを継いだ者
番外編7
集落は地獄と化しました。
「やめて!」
「許して!」
「誰か助けて!」
人々が泣き叫び、逃げ惑う中、彼女は嗤い続けていました。
心地好い血の臭い、心地好い人が壊れる音色。
その全てが彼女を昂らせるのです。
そして…
「彼以外の人間は許さない!」
逃がすつもりは、彼女には全くありませんでした。
鬼となった事で、彼女は鋭い爪と牙、剛力を手に入れました。
それに敵う人間など、誰も居なかった
のです。
全ての邪魔な
「大丈夫、龍馬!」
「大丈夫だよ、依織…」
彼はちゃんと無事でした。
ですが、彼女は…
「何これ…」
彼から感じる匂い、魅惑、音の全てに発情してしまいました。
それ以上に、食欲を感じていたのです。
そう、これこそが鬼の習性。
誰よりも愛しき存在を破壊し、食したくなる性。
例え、元々は人であろうと…
…結局は化け物なのである。
悲しい結末になるのは見え見えだ。
だが、彼は…
「良いよ、依織…」
「え?」
「君は鬼になってしまったのだろう?なら、僕を好きにすると良いよ。」
「結局、僕は何も出来なかったからね。」と自虐的な笑みを浮かべる彼。
その笑みに、彼女の理性は粉々に砕かれた。
いや、理性など最初から無かったのかもしれない。
今、此処に居るのは剥き出しの魂、ありのままの本能だけなのだから。
「いただきます!」
私は全てを貪った。
物理的に、性的に。
やりたい様にやり続けた。
そして、彼は彼女に喰い尽くされて死んでいった。
だが、彼は終始幸せそうだった。
勿論、鬼の彼女も…
「ああ、○、○○の味は喉元だったんだね…」
人を食べた事の無い物には解らない理屈で、彼女は語る。
この言葉を理解できるとするならば…
同じ血を持ち、同じ感性を持つ存在以外に有り得ないだろう。
続く
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