第9話 疾走する本能
第9話
伊織side
この時、私は嗤っていた。
目の前に面白い楽器があるのだから。
…コイツからは良い
ああ、楽しみだ。
コイツには遠慮なんて要らない。
コイツはお兄ちゃんを傷付けた。
コイツは獲物を奪おうとした。
コイツは私より先に
コイツに
コイツを痛め付ければ、
コイツを殺せば、
他の奴の血は見たくないし、味わいたくもないけど、仕方がないよね?
血は兎も角、良い音楽を奏でるんだもの♪
さぁ、何処までコイツは…
「い、伊織…」
お兄ちゃん!?
「あっ、ああ…」
私は何を考えていた?
何をやろうとしていた?
違う、違う、違う、違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違うの違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う!
早く、お兄ちゃんを…
…助けないと。
でも、私も…
「あれ?」
急に身体が重くなって…
…そうして、私の目の前は暗転した。
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気が付けば、私は病院に居た。
事の顛末を聞くと、周りの誰かが通報してくれたらしい。
そして、お兄ちゃんも無事だったらしい。
私のストーカーらしき男も逮捕され、大団円だ。
普通ならば…
「お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん!」
今まで良かった鼻が、より良くなった。
そして、よりお兄ちゃんの匂いが私を刺激してくる。
そして、脳内の
『お兄ちゃんを喰べたい!』
違う…
『お兄ちゃんの全てを喰みたい!』
そんな事は望んでない!
『良い匂い過ぎて狂いそう!』
それは同感…
と、今までの衝動がより凶悪に、より現実的になってきたのだ。
今まで、そんな真剣に考えてきた事は無かったこの衝動…
いや、考えない様にしていたのが正しいのだろう。
その考えない様にしていた物が、現実になってしまった。
日に日にこの、
そして、誰にも聞こえない様に吐露するのだ。
「お兄ちゃんの味ってどんなのだろう?」
続く
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