第8話 目覚める魂 目覚める本能

第8話


今日もお兄ちゃんと一緒に帰れる♪


私はノリノリで下校準備をしていました。


これもストーカー様々だね♪


と、呑気な考えをしていました。


それが悪かったのでしょう…


「あっ、お兄ちゃんの匂いだ…」


もう少しで下駄箱という所で、お兄ちゃんの匂いを強く感じました。


そして、それ以上に…


「…あの時の?」


脳内があの時の事故で埋め尽くされた。


お兄ちゃんがヤバい!


何故か、そう思った。


そして、気が付けば私は走り出していた。


だが、遅かった。


「血の匂い…」


香ばしく、脳内を刺激する匂い。


鉄の様でありながらも、私を興奮させる匂い。


まるで麻薬の様に、私を可笑しくさせ、発情させてしまう魔法の匂い。


この匂いがしたと言う事は…


「お兄ちゃん!」


目の前には惨劇が広がっていた。


何故か刃物を持って、倒れている男。


血塗れで倒れているお兄ちゃん。


え、マズい。ヤバい。素敵。どうしよう?美味しそう。助けなきゃ。食べたい。嗅ぎたい。早く病院に連絡を。エロい。濡れる。あれ、スマホは?あれ?私可笑しい?可笑しくないよ。違う!違わないよ。煩い!無駄だよ。食べたくない。美味しい獲物が転がってるのに?


思考がブレる。


私がもう一人居るみたいに…


あれ、私は…


…私は誰なの?


「危ない、霧崎さん!」


誰かが私に警告する声が聞こえた。


何をだろうか?


もしかして、私自身の事だろうか?


「はは、早く助けてあげるからね!伊織ちゃん!」


先程まで倒れていた男がナイフを振りかざしている。


それを誰に使うの?


あれ、あのナイフにお兄ちゃんの良い匂いが、血の匂いが付いてる…


…もしかして、コイツ?


コイツがお兄ちゃんを…


…許さない。


許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない。


「…殺す!」


私は奴に向かって、渾身の蹴りを繰り出した。


ああ、良い音。


骨の砕ける感触、肉体が悲鳴をあげる心地よい音。


最高で最低な楽器さん…


「…まだまだ演奏できるよね?」


続く

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