第5話 ストーカーという名の当馬
第5話
伊織side
やっぱり、着けられている。
日に日に、向けられる視線の気配や音、臭いに敏感になってくる。
気持ち悪い…
しかも、時々イカ臭い物も臭ってくるのだ。
もしかしなくても、アレだよね?
気持ち悪いし、吐きそうだし、生理的に無理だ。
お兄ちゃんのなら、まぁ、やぶさかではないというか?
ぶっちゃけ、飲んでみたいけどさ。
どんな味するんだろう、お兄ちゃんの味?
ヤバい、動悸が止まらない…
私はそんな変態な女の子じゃない!
少しお兄ちゃんが美味しそうに見える普通の女の子なんだよ!
だから、止まって!
「って、そうじゃない!どうにかしなきゃ!」
何か地獄の朱里ちゃんに『頭ピンクの可愛い義妹ちゃんw』って煽られてそうだけど、今はそんな事は無視だ。
もし相手が獲物を持ってたらどうしよう?
義理の女難お爺ちゃんには、獲物を持った相手との戦い方は教わってないんだよなぁ…
……そうだ、お兄ちゃんに相談しよう!
そうすれば、万事解決だ!
我ながら頭が良い考えだ!
帰ったら、早速お兄ちゃんに相談しようっと…
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竜馬side
家に帰ったら、何か伊織がベッドに正座していた。
うーん、何これ?
「お兄ちゃん、ご相談があります。」
お、おう。
何時になく真面目モードだね、君…
何時もなら、充電タイムとか言って抱き着いてきたり、臭い嗅いだりするのに…
俺、そんなに臭いかな?
何か泣きそう…
って、そうじゃない!
「何の相談だ?友達や恋愛関係は無理だぞ?」
「お兄ちゃんに最初からその関連では期待してないから大丈夫だよ!」
「そ、そうか…」
うん、当然の反応だ。
当然の反応なんだけど、泣きそうです…
しかも、滅茶苦茶良い笑顔で言ってるし…
お兄ちゃん、悲しいよ…
「じゃあ、何の相談なんだ?」
「実は…」
伊織が言っている事を要約すると、どうやらストーカーに着けられているらしい。
ふむ、どうした物か…
警察は実害がないと動かないだろうし、自意識過剰として流される可能性もある。
なら、当分の間は…
「伊織、明日から一緒に登校や下校するぞ。少し早く起きる様になるかもしれないが、我慢してくれ。」
俺に出来る事は少ない。
だが、精一杯やれる事をしよう。
俺の大切な伊織の笑顔を曇らせない為に。
「覚悟しておけよ、ストーカー。本当に伊織に手を出したら、ぶちのめしてやる。」
だから、気が付かなかった。
この事件を切欠に、防波堤が壊れる事を。
溢れ出た愛は、誰にも止められないという事を。
続く
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