第3話 病みを知った者
第3話
伊織side
その後、お兄ちゃんは無事に助かった。
自らの記憶と引き換えに…
…ん?朱里ちゃんはどうなったのかって?
普通に死んだけど、それがどうかしたの?
お兄ちゃんが無事なんだから、別にどうでも良いでしょ?
「…違う!そうじゃない!確かに忌々しい存在だったけど、死んだら死んだで悲しい存在なのに!」
私は私が解らなくなっていった。
あの時から、私の思考は狂い始めた。
少しずつ、ズレていく感覚…
…常識が崩れ、私を呑み込んでいく衝動。
「でも…」
カッコいいと思ったのは本当なのだ。
血塗れで弱々しく転がるお兄ちゃんはこの世の物とは思えない程にカッコよかった。
「うう、もう寝よう…」
明日から頑張ろう。
今色々と考えても疲れるだけだ。
私はそう思いながら、眠りについた。
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『お前は鬼の子なのだ!』
『私の子が死んだのはお前のせいだ!』
『返してよ!私の妹を返してよ!』
『ちっ、忌々しい奴め!これでも喰らえ!』
痛い、痛い、痛い!
やめて、何でそんな事をするの!
私は何もしてないのに!
私達は唯平和に暮らしてただけなのに!
何でそんな事をするの!
許さない、絶対にお前達だけは許さない!
…殺してやる。
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「はっ!」
はぁはぁ、何この夢…
怖くて、でも何処か悲しくて…
…それ以上に辛くて、憎々しい夢だった。
「…お兄ちゃんの所に行こう。」
お兄ちゃんは記憶を失っても、お兄ちゃんのままだった。
私に優しくて、とてもカッコよくて…
…とても、美味しそうで。
「お兄ちゃん、一緒に寝て良い?」
「ん?伊織ちゃんか?良いぞ、ほら入れ。」
と、お兄ちゃんの布団の中に入る。
温かい…
お兄ちゃんの熱を感じる…
ああ、気持ち良いなぁ…
でも、それ以上に…
「もう一度、傷付いて欲しいなぁ…」
お兄ちゃんの生を感じる度に、あの傷付いた姿を思い出す。
現実に現れた生きた芸術。
その姿が興奮を誘い、何故かお股が濡れていき、食欲を沸かせる。
「大好きだよ、お兄ちゃん。」
この想いの果てに何があるのか…
今の私はそれを知らない。
でも、破滅的な未来が訪れるのは間違いないだろう。
「だから、今度こそ永遠に愛し合おうね、お兄ちゃん♪』
何処か混じり合っている様な声は、夜の闇に溶けていき、誰の耳にも届く事はなかった。
続く
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