幕間1

その1 彼が幼馴染と決別した訳①

その1


「朱里、俺と付き合ってくれ!」


遂に言ってしまった。


今まで心の内に閉ざしていた言葉を伝えてしまった。


でも、やっと言えたのだ。


その事に後悔はなかった。


「えっと…その……嬉しいよ、リューくん。」

「…朱里!」

「…でも、ごめんなさい。付き合う事は出来ません!」

「そっか…」


振られた、振られてしまった。


まぁ、それ自体は良かったんだ。


「嬉しいし、リューくんの事は大好きなの。でもね、私はリューくんの事を幼馴染としてしか見れないの。本当にごめんなさい。」


滅茶苦茶泣きそうだし、悲しいけど、受け入れなきゃいけない…


…そう思ってた。


「解った。ごめんな、変な事を言っちゃって。」

「ううん、こっちこそ…」


と、謝り合戦が始まってしまう。


そして、遂に埒があかなくなった頃…


「「ぷっ…」」

「あはは、何してんだろうな俺達…」

「そうだね、何してるんだろう…」


全く、さっきまでシリアスだったのが、馬鹿みたいだ…


そう思って、笑った。


振られた後にも関わらず、心の底から…


「ふぅ、じゃあ帰るか朱里!」

「うん♪一緒に帰ろうか、リューくん!」


だが、この綻びを無視したツケは大きかった。


理不尽にも現実は、俺に理解を拒む事を許さなかった。


-----------------------------------------------------------------


「ねぇ、リューくん。頼みたい事があるの。ちょっと、良い?」

「ああ、何だ?」


俺が朱里に振られてから、1週間も経ってないある日、朱里はこう告げてきた。


「私、好きになっちゃった人が居るの。その人に告白したいんだけど、手伝ってくれる?」

「はぁ?」


俺に手伝え?


お前の事が好きな俺に、お前が違う男とくっ付くのを手伝え?


何を言ってるんだ?


「あのね、その好きな人ってのがリューくんと同じ部活の濱崎くんって人なの。同じ部活のリューくんなら、橋渡しできるよね?」


話の内容は殆ど聞こえなかった。


唯、一つだけ覚えている事があるとするなら…


「ああ、解った。やってみるよ…」


出来るだけ笑顔で、そう答える事だけだった。


あの時の俺はちゃんと笑えてただろうか?


続く

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る