第2話 昼休憩での慰め合い

第2話


昼休憩、それは学校における至福の時間。


疲れる学園生活の中で、唯一ちゃんと身体を休められる時間だ。


まぁ、その殆どは昼食に費やされるんだけどね…


俺もその一人だ。


「あら、今日も弁当を作ってきたのかい、同類?」

「当然だ。購買で戦争なんざしたくないしな。」


あれ、本当に怖いんだよ…


何でパン如きにあんな群がるのだろうか?


あれを見ると、某任天堂ゲームを思い出す。


あれ、100匹で一気に突撃させるとかなり爽快なんだよ。


かなり怖い光景ちゃ、光景なんだけどな…


「はは、そうだね。あれは私も御免被るよ。」

「…全くだ。しかし、そういうお前もパンじゃねぇか。」

「これはちゃんとコンビニで買った物だよ。私は争い事は不得手でね。」

「争うよりはマシか…」


まぁ、コイツは細いもんな。


まるで、繊細な飴細工。


少し触れ方を間違えれば、壊れてしまいそうな儚さがある。


だからこそ、コイツの幼馴染は…


いや、これは唯の妄想だ。


勝手な押し付けはダメだと、まだ学んでいないのか俺は…


「ねぇねぇ、私にも弁当を作ってくれないかい?」

「えぇ、何でだよ…」


嫌だよ、面倒な…


負担は別に無いが、何でそんな事を…


「嫌なのかい?」

「嫌に決まってるだろ…」

「でも、君は好きだろ?」

「何をだよ…」

「人の世話をする事さ、同類。」


コイツ…


…本当に最悪だ。


何処までも、何処までも嫌な位に俺を見透かしてくる。


「やっぱり、嫌いだよお前…」

「ふふ、奇遇だね♪私も君の事が大嫌いさ。」

「成程、やっぱり俺達は仲良しだ。」

「…そうだね。それだけは同意するよ、同類。」


気が付いてるか、香織?


お前が俺を同類と呼ぶ度に…


…自分も同じ存在だと証明している事に。


だからこそ、気が付いてしまった。


自分の浅ましい心の在り方に…


全く、何でこうなるまで気が付けなかったんだろうな、お互い…


「解った、作ってやるよ…」

「やったぁ♪楽しみに待ってるよ♪」

「但し…」

「おや、何だい?」

「…お前も俺に何かしろ。」


そう答えると、張る胸も無い胸を抱え込む様に腕を組み…


「同類って何時もそうだよね!私の事を何だと思っているんだい!」

「何って、同類…」

「そうだよ、同類なんだ。そんなの言われなくても、ちゃんと支払うさ。」


ああ、成程ね。


確かに愚問だったわ、これ…


「すまん、その通りだったな…」

「うんうん、解ってくれるなら嬉しいよ…」


全く、ダメダメだな俺…


「ん?ほらほら、落ち込まない。私が慰めてあげるから、ほら…」


そう告げると、彼女が背中越しに抱きついてくる。


胸の柔らかさは全く感じないが、それ以外は全てが柔らかい。


これが女の子の柔らかさか…


「すまん、助かる…」

「言葉は無用だよ、同類。次は君が慰めてくれれば良いからさ。」


そう言うと、彼女は座り込む。


そして、膝をパンパンと叩き…


「ほら、来たまえ!」

「えっ、何?どうすりゃ良いの?」

「見れば解るだろう?膝枕だよ、膝枕!」


ああ、あの膝枕。


昔、よく伊織にやった覚えがあるよ、うん。


で、何故?


「私は甘えて欲しいんだよ、ほら早く!私に甘える事で、私を君に甘えさせてくれ。」


成程、そういう事か。


コイツにとって甘えてもらうという事は、自分にとってのなのか。


なら、遠慮なく…


「解ったよ…」

「うん、宜しい。」


彼女の膝は心地よい程に、柔らかかった。


ああ、気持ち良いな、これ…


「おや、眠くなったのかい?」

「すまん、めっちゃ眠い…」

「そうかい。なら、眠ると良いよ。私がちゃんと起こしてあげるからさ。」

「そうか、頼む…」


そう告げると、俺は眠りへと落ちていく。


ああ、よく眠れそうだ…


「ふふ、綺麗な顔だな。寝ている時はこんなにも、純朴そうなのに…」


やはり、傷は癒えないのだろう。


それは私も同じなのだが…


「ゆっくりおやすみ、同類。今だけは全てのしがらみを忘れてさ。」


続く

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