第281話

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 「頭を上げてくだされ。そう言われましても、本人の希望もございまする。ワシとしては特段問題はございませぬがこの貸しはできるだけ大きくしておいてもらいましょう。」


 道三としては氏政がここまで欲しがるならばもっと吹っかけても良かったが、今は国を追われている身であることや美濃を信長に譲る予定なことも考えて、少し引き下がった。


 「半兵衛、ここにきてくれたという事は決心してくれたのだと思って良いよな?」


 半兵衛の目をじっと見て問いかける。その様子を道三や周りのもの達は黙って見ていた。


 「はい、私は貴方様の元でこの乱世を生き抜いていきたいと思っております。お引き回しのほどよろしくお願い致しまする。」


 半兵衛が頭を下げた。


 「よし!半兵衛には名を与える!これからは政重と名乗れ!そして、軍略方に任命する!」


 今度は北条側陣営からどよめきが生まれた。何処の馬の骨とも知れない若造がいきなり明智光秀やここにいる里見義堯と同格に扱われているのだ。


 「は…はっ!」


 「まずは、帰ったら伊豆にある軍学校でうちの戦力や戦法について学ぶといい。その後はひたすらに実践だ。山本勘助やここにいる里見義堯、明智光秀など錚々たる軍略家達を俺は揃えたつもりだ。切磋琢磨してその力を役立てて欲しい。」


 実際この戦国の中でうちほど人材に恵まれているのは、毛利や島津、織田くらいだと思える。まあ、そもそも領地拡大しまくった分もあるのでなんとも言えないが。

 道三達と少し話をした後、熱田から伊豆を経由し小田原へと戻った。道三達はこちらが軍を派遣した時に再度合流するらしい。


 帰った後に主だったもの達を集めて半兵衛を紹介し、まずは光秀の下で経験を積ませながら学校にも通わせることになった。


 美濃へと送る援軍として伊豆衆5千を使うことになり、率いる将として美濃の土地勘がある光秀が大将として、副将に工藤政豊、大隊長格(1000〜1500規模の将軍)として秀吉、政直、政信(本田正信改名)、政綱が選ばれた。その配下には尾張から出向してきていた信勝達も参加している。


 稲の刈入時期より少し前に彼らは尾張へと到着。道三や現地の風魔と合流後直ぐに尾張北部へと移動した。

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