第280話
280
「…私はそれでいいのですが、義祖父殿は納得なされないのではないでしょうか。」
道三としては一刻も早く自国を取り戻したいだろう。そんな悠長な事をしていて良いのかという事だ。
「養父殿とは既に話し合っている。美濃は既に譲ってもらった。だからどうしようと問題はない。」
信長はそう言って美濃国譲状を見せてきた。そこには、美濃を娘婿である信長に譲るという事、その代わり道三の隠居所を用意しできるだけの望みを叶える事、美濃国の代官として適正と能力があれば優先的に斎藤龍重、一色右兵衛大輔龍成を任官する事。美濃を離れ道三を頼って来たものに便宜を図る事。などなど道三の余後を保証するための様々な条件が書いてある。
「わかりました。承りましょう。父の配下を動かすことはできないので私の直轄軍を送りますがよろしいですか?数は少ないですけど精鋭だとは思います。」
「勿論だ。むしろそちらの方がいい。現地での移動のために土地勘のあるものを補佐につけるが、現場での直轄軍の指揮は其方に委任する。」
「道三殿からは何か私に対してありますか?」
「そうじゃのう。ワシや二人の息子を帯同させてくれんかのう?勿論戦には参加せぬ。どの様に戦うかを見てみたいのだ。」
観戦武官の様なものか?信長に問題がないならばいいだろう。そう思って目線を向けると頷いて同意を表してくる。
「では、その通りにいたしましょう。」
息の詰まるような空気が弛緩し会談は終了した。
「すまんが、義弟の帰りは熱田まで送ることは出来なさそうだ。直ぐにでも今川に備えなければならぬ。」
「大丈夫です。分かっております。現地の風魔には直ぐに指示を出しましょう。援軍についてはおって連絡いたしますのでよろしくお願いします。」
信長は忝いと頭を軽く下げるとスタスタと部屋から出て行ってしまった。道三殿とその配下、俺と配下達で残されてしまった。
「伊豆守殿のお力で関東はとても過ごしやすいと聞くが…」
道三から関東での施策などについてあれこれ聞かれている間にイケメン君がやって来ていつの間にか話を聞いていた。
「こちらの方は?」
道三の付き人だったので聞いてみる。イケメン君は少しそわそわしている様子を見せているな。
「おお、元々こちらにくる予定があった上に明智のやつに勧められたのもあって付き人にした竹中半兵衛という者だ。明智曰く中々に有能らしいな。」
道三が半兵衛を紹介すると半兵衛は頭を下げる。
「竹中半兵衛重虎にございまする。」
「ようやく、ようやく会えたな。道三殿、この者を配下とする事を許していただけぬでしょうか。もし、それが叶うならば貸ひとつとしてできる限り便宜を図りましょう。」
道三に向かって身を乗り出して頭を下げる。道三は驚いたようにこちらを見ている雰囲気があるし、半兵衛自体も驚いているのが横目に見えた。
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