第279話
※ファンタジー物の新連載を始めました!
1553年 8月 北条氏政
お市殿を那古屋まで送り届けると義兄がわざわざ出迎えに来てくれていた。側にはいかにも悪人の顔をしたおっさんと顔立ちの整った信長とは違うタイプのイケメンに、元服したばかりかどうかというものが二人が居る。他にも護衛らしき男が控えて警戒している。さてさてこの人達が今回の騒動の原因かな?
「わざわざの出迎えありがとうございまする。お市殿は無事に連れて来ました。道もしっかり整備されており治安も良かった為安心してこちらに向かう事が出来ました。」
信長は満足そうに頷くとすぐに踵を返して部屋まで先導し始めた。お市殿は那古屋にいた側使い達がお世話しながら部屋に戻る様だ。信長はずんずんと進み、部屋に入って直ぐに座ると目配せをされたので他の面々に遠慮せずに適当な場所に座る。いかつい親父が同じくらいの速度で座ると若い二人はどうすれば良いか分からずいかつい親父の後ろに座り強そうな雰囲気の護衛二人は部屋の外で待機する様だ。ちなみにイケメン君は一応部屋の外にいるが護衛よりも離れた位置に待機させられていた。
「こちらが俺の養父である斎藤道三殿だ。こちらへ偶々向かっている際に義龍が謀反を起こした為追手を避けてきた。」
信長は端的に伝えるべきことを伝える。
「お初にお目にかかる。斎藤道三に御座る。」
このいかつい親父があの斎藤道三なのか。失礼ながらじっと見てしまう。親子2代にわたって戦国時代の代表ともいえる下剋上を成し遂げた戦国の雄か。体もがっしりしていて如何にもって感じだな。
「私は信長殿の義弟である北条伊豆守氏政にございまする。義理の祖父である道三殿は親族も同然、よろしくお願い申し上げまする。」
互いに軽く頭を下げあうと信長が早速本題を切り出して来た。
「今のこの時期に美濃と今川と二正面でやり合うのは些か厳しい。しかし、かと言って美濃を放置することもできぬ。北条殿から援軍を借りるとすれば幾らだ?」
信長は覚悟を決めた目でこちらをじっと見ている。義理の兄として弟である氏政に力を借りる事は信長にとってよほど恥ずかしいことなのか苛立っている様にも感じとれる。しかし、ここで恥を忍んで頼み込んでいるのだ。
「…そうですね。直接的に軍を送ったとして、北条に対する税の廃止、港の優先使用権、それと美濃にいる武将の引き抜きの許可が最低限になります。もし、風魔達を使って美濃が身動き取れない様にするだけならば、港の優先使用権と何かしらの謝礼で片付くかと。」
信長はハッとした顔をしている。風魔達のことが頭から抜けてしまっていたのだろう。腕を組みじっと考え込む。
「では、港の優先使用権と謝礼として何かを用意するので風魔達による援軍を頼む。それと、今川に勝った後、今川配下の引き抜きや助命、負けた後は織田の配下達全ての引き抜きや宝物の引継ぎを許可して文書にも起こすため今川との戦が始まったら尾張防衛のための軍を出してくれ。」
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