第274話

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 1553年 8月 北条氏政


 今川や北条内の調整を済ませて船に乗って小田原から伊豆、駿東と配下の武将達と顔を合わせたり、この世を去ってしまった者たちの墓へ向かったりなどしていた。歳を取って老衰で亡くなってしまった原胤清などは70歳と言う大往生だった。

 船の手すりに体を預けながら潮風を身に受けて暑さを軽減させているがあまり意味がない気がして来た。潮風を感じていると寝る時や陸に上がった時にどっと疲れるんだよな…


 「そろそろ尾張に着きまするぞ。」


 「ほんとだなぁ、俺はついたらまず寝たいぞ。正信。」


 今回連れて来たメンバーは、馬周りとして里見義弘、工藤政豊、井伊政直。側近として真田幸隆、小姓兼馬周りとして秀吉、正信、政綱(信綱、源太郎)だ。光秀は三国峠や下野上野の内政、義堯は安房、上総下総を、虎高は軍周りの統括を、ちなみに駿東と伊豆の軍は綱成、内政は相模も含めて幻庵が、全体の統括として武蔵を拠点に父が内政をしていた。信勝も帰ってくるかと思ったら学び終わったら帰るとの事でまだ訓練している。


 「光秀には里帰りさせてやりたかったのだがなあ。上杉とは良好な関係なのだし、武田に関しては内政で手いっぱいだろうに、残さなきゃいけなかったのは申し訳ないな…。」


 「きっとそのお言葉だけで光秀殿は泣いて喜びますぞ!」


 こんな暑くて疲れる中でもニッコニコなのは秀吉だ。基本的にこいつが居れば交渉ごとはなんとかなってしまいそうな雰囲気がある。今も船の中を見回っておーやら、すごい!などはしゃいでいるのは見ていて和む。こいつは空気を読むのがうまいし出世するわけだよ。


 熱田に寄港し、タラップから陸に降りると熱田で店を出している風魔のもの達が迎えにきた。荷物と護衛は任せて俺たちは宿に向かった。今日はここで一泊して明日こちらに来る予定の信長とお市殿に会う予定である。


 今川の動きは想定以上に早くなっていて三河を予想以上に果断に統治していた。北条式の農法を導入し史実より兵力や兵糧に余裕を持った義元は民に米を還元し、その代わりに一向宗を処断しまくった。その反動としてやはり三河に動揺が走って史実と同じくらい不安定なままだ。だが、これで三河に兵を割く必要がなくなり駿東がなくても兵力は十二分と言えるようだ。


 多分信長としては今川との戦の時にどう動くのかしっかりと確認したいのだろうな。


 「今考えてもしょうがありませぬよ。風魔のもの達が用意してくれた美味しいものでも食べましょう?」


 政直がこちらを心配する様に見て出された食事を勧めてくる。気遣いに感謝して食事をとり早めに就寝することにした。


 


 

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