第263話 小諸城攻略戦
飯富軍が林城へと向かって進軍し始めた時、信玄もまた、村上の領地へと向けて進軍を始めていた。信玄は直轄軍2500を纏め、上原城の兵は信繁が2000を率いていた。また、松尾城と高遠城の兵3000は穴山が率いて総勢7500で禰津へと向かっていた。
「皆の者!武田の威をここに示し、更なる繁栄を得ようぞ!その為の第一歩として小諸城を落とす!いざ!」
穴山は禰津で信玄と別れると城から四半刻ほどの距離で1日休憩を挟み次の日の明け方進軍を開始した。小諸城に籠る兵士たちは後ろからやってきた武田軍に対して打って出ることもなく籠城戦の形を決め込み、旧来のよくある攻城戦が開始された。
2、3日経った頃、どちらも大きな損失を出すことなく戦の趨勢は変わることがなかった。しかし、この日、この状況に大きな一手が撃ち込まれたのである。
「第一目標の正門を破壊いたしました!第二目標の城内の施設に対する砲撃を開始します!」
大砲の鳴り響く音に負けないように大きな声を張り上げて北条軍の砲兵は状況報告を行なっていた。ここに、北条軍が現れたのは、武田が北条に対して同盟に基づく援軍を求めたからである。氏康は信玄の申し出を快く受けた上に何かと入り用であろうと兵糧を心ばかりと言うには多い量を直ぐに信玄の元へと輸送し、光秀に三国峠への抑えの兵を残して援軍に向かうように指示をした。その援軍である4500の兵を光秀が率いて、小諸城へと進軍していたのである。
「光秀殿、秀吉殿達はいつ城へと突入するのでしょうか?」
光秀の横で幼さが残る顔ながらしっかりと頭を回して実地学習をしているのは氏政が次代の者として目をかけている木下秀吉、井伊政直(史実直虎)、本田正信、真田信綱であった。特に木下秀吉、本田正信は頭のキレが良く、既に1軍の将として働いていても問題なかった。その関係上、砲兵隊を取りまとめているのが本田正信、鉄砲隊を纏めているのが木下秀吉であった。
「秀吉は、砲兵隊の警護のをしていれば良い。今回は手伝い戦なのですから無理をする必要はないのだ。何故か分かるか?」
政直の質問に対し、質問で返す。そこで横にいた真田信綱が答える。
「今回は手伝い戦であるので第一に損害を発生させたくない。第二に武田が周辺諸国へと武威を示したい。第三に砲兵隊の練習程度になればいい。第四に秀吉と正信の箔付けの為の第一歩であるから失敗する可能性を排除したい。というところでしょうか。」
「そうだ。よく分かっているな。今回の城を攻め落としたとしても領土は武田に渡すのだ。それならば最も効率が良く成果が多く得られるように立ち回るのだ。それと、付け加えるならば今回使っている大砲は旧式かつ、弾薬も炸裂式ではなくただの鉄球である。それによって間者や武田に対して戦力を誤認させるのが目的だ。」
少しずつであるがしっかりと次代の将達は育っていた。
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