第254話 猿芝居

 1552年 5月上旬 稲生


 庄内川を挟んで海側に名古屋城、守山城が位置し反対側の山や美濃側に大和守家の清州城、伊勢守家の岩倉城が位置していた。それに対して、信勝達はさらに海側の末森城に位置していた。つまり、信長達は挟撃を受けている立地だったのだ。


 「では、皆の者上手く演技をするのだぞ!」


 信勝の本陣ではごく一部の側近や仲間以外を排した軍議を行っていた。掃除と称して一掃されるような奴らには一番槍や彼らの後詰めなどを任せておりこの場には居なくてもおかしくはなかった。


 「信勝様も信秀様のお子という訳ですな…」


 その中でも信秀の時代から付き従ってきた家臣達が多く、信秀の最も才たる部分は信長に引き継がれているのは間違いがないとは薄々勘づいていたが、信勝自身も実直すぎるところがあると言えど十二分に優秀であり内政家として考えればこの時代においては問題ないと考えていた。その中でも、最近の行動には破天荒さが見え隠れしており、やはり信秀の子なのだと思わされていたのだ。


 「さて、我々の用意した常備兵達にはしっかりと情報が伝達されているな?」


 信勝が兄、信長から譲り受けた山犬と呼ばれる忍びに確認をする。


 「はっ、彼らには常備兵以外の兵達は信長様と挟撃するという内容がしっかりと伝達されております。敵将を捕縛、殺害するまでは農民であろうと容赦なく斬り伏せる事も合わせて伝えてありまする。」


 「うむ、農民達を殺すのは労働力という点では勿体無いが邪魔者を一掃できない方が問題になるのでな。お前たちも配置に着いてもらおう。」


 「御意」


 信長に貸し与えられている一部しか渡されていないため山犬の直属は数少ないと言えど忍びとしては十二分の働きができる者たちを集めていた為、彼らは敵軍における情報欺瞞や敵将の狙い撃ち(毒矢)などを軸にした支援を行うことになっていた。


 ぶおおおおおん。


 鏑矢を撃ち合い、法螺貝を鳴らして突撃させる。信秀の元で毒にも薬にもならず自分の利権だけを守ってきたものや、蝙蝠のように様々な勢力に尻尾を振ってきた者たちを前面に押し出し人が波の流れのように信長軍に向かっていった。

 彼らは今回の作戦を伊勢守、大和守の援護のための奇襲と捉えており、勝利は約束されているものとして功をあげることしか考えていなかったため整然とした突撃など頭になかったのだ。そして、それらを迎え撃つ信長軍は全て常備兵で固められており3500も用意されていた。そんな彼らが陣地をしっかりと用意し、迎え撃とうとしているのだから答えは言わずもがなであった。


最近は更新が遅くて申し訳ないです。

バイトで朝9.00〜夜10.00まで働いている関係で筆が進んでいないです。

本日もお盆の帰省が終わってやっと更新できました。

皆様暑さには十分ご注意ください。作者も頑張りますので頑張りましょう!

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