第214話

 皆様にお知らせです。作者のやる気が復活してきてどんどん書き溜めております。現在配信している第1章は225話に終わる予定にございます。続きも鋭意製作中ですので引き続きお楽しみください。



藤孝の歓待をしながら各地に散らばった重臣達をかき集めた。正月よりは少ないものの多くの北条家のもの達が小田原評定に参加している。


 「さて、来るまでに伝えたとおり現将軍足利義輝様から上洛の命を受けた。皆の忌憚ない意見を聞かせて欲しい。」


 氏康はそう言ったきり手を組み口を固く閉ざした。今回は決定しかするつもりがなく家臣達の意見を広く受け入れるという体勢を見せているのだ。


 「私は行くべきだと思います。しかし、殿が出るまでもないかと、しかるべきご親族に護衛をつけて向かわせるのが吉かと思いまする。」


 そう発言したのは幻庵であった。その然るべき親族というのに幻庵が最有力候補であるのは誰の目から見ても明らかだった。また、幻庵の外交能力は疑うまでもなく確実に彼に任せられるものであった。


 「確かに幻庵殿であれば十分すぎると思いまする。」


 周りからも同意の声が上がり頷いている。


 「しかし、その前に返答をどうするかを論じなければならないのではないだろうか?皆はどう思う?」


 綱成が氏康の少し隣で発言をする。彼の言葉は尤もであったためそのまま議論が続いた。


 「やはり、結論としましては受けるしかないのではないでしょうか。受けた上で佐竹に北条の傘下に組み込まれることを納得させるのが一番よろしいかと考えまする。」


 議論が白熱していく中、笠原が賛成派の意見をまとめて代表で発言する。それに対して待ったをかけたのは光秀であった。


 「お待ちくだされ。そもそも、今の将軍家に従う義理はありましょうか?我々は将軍家よりも朝廷を重視して行動してきておりました。我々は我々で独自の動きをするべきだと考えまする。」


 光秀の意見は過激なものであった。それに比較的新参者である彼はやはり、反感を買っている面もあり怒号が飛び交う結果となった。


 「静かにせい!」


 そう声を張り上げたのは康虎であった。その一言でどちらも声を上げるのはやめてシンッとなった。


 「光秀が言うことにも一理ありまするが、わざわざこちらから事を荒立てる必要もないと思いまする。ここは、我々が先に朝廷から名分を得てしまいましょう。大評定で話しておりました官位を頂くのです。その上で将軍様に謁見し、関東に対して口出しされないようにして追認して頂くのが良いかと存じ上げます。」


 そう上申したのは義堯だった。彼も新参者であったが光秀とは違い関東のもの達にも認められる英雄であった上に、人との関わりを積極的に持ち和を大事にしていたためすんなりと皆の中に言葉が入っていった。


 「それならば、まあ、よろしいのではないでしょうか。」


 光秀の意見に反対的だったものも義堯の提案には納得するところもあり矛を引っ込めた。


 「では、そのように致しましょう。人選はやはり幻庵殿でしょうか?」


 義堯が周りを見渡す。


 「それならば俺が行こう。」


 そう言って氏政が手を上げた。


 「若がここを離れるのはまずうございまする!万が一があった際にどうされるおつもりですか!」


 「ほう、つまり笠原は将軍家との交渉が決裂する可能性があると思っているわけか。俺もそう思うぞ。」


 「なれば、なぜにございますか!」


 「俺が上洛できる時期が今しかないからだ。当主になればそう簡単に動くことなどできない。それに、現在の京の様子を知りたいのだ。また、帝に奏上したいことも多い。我はそもそも年末には上洛する予定で準備も進めていたのだ。文句は言わせん。」

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