第209話
「秀吉と幸隆で戦勝祝いの使者として向かってはくれぬか?文と祝いの品はこちらが用意をしよう。それと、できる事ならば義昭殿と茶室などの個人的面会を取り付け、本腰を入れて交渉に入ってほしい。」
秀吉と幸隆が勿論です。と頭を下げる。本当は光秀を使いたいところだが対上杉 対武田と奴は重要な案件を担っている。義堯は水軍を任せている上、対蝦夷地を任せている。勘助は軍学校で新兵器の戦術や戦略を考え、幹部や軍師を育てている。
「さて、佐竹が動き始めた事で関東地方に近い奥羽の連中が蠢き始めている。我々は交易や貿易、内政に注力しつつ彼らに対応していく方針をとっているが…」
この先は言わずもがな、皆がわかっていた。彼方から火種が降ってくるならば振り払わなければならない。基本的に専守防衛など言ってられない状況となっているのだ。
「とりあえずは、康虎殿に任せておけばよろしいのではないでしょうか?我々は時が起こった時に備えて動けるような体制をとっています。下手に動くよりも殿がなされたい事をなすべきかと考えまする。」
源太郎が意見を具申する。
「私も基本的には源太郎殿と同意見ですが、新領地、特に下野方面への街道整備に力を入れるべきかと。そうすれば北条の全軍をもってことに当たれます。」
次郎法師の意見が出てくる。
「いえ、そのような甘い考えは危のうございまする。いつでも最悪の場合を想定して動くべきかと。今川 武田 上杉 佐竹 蘆名 あたりが連合して北条を押さえようとすれば何処かに綻びが生じますぞ?」
秀吉が意見を具申する。このように3人プラス正信が自分たちの考えを述べて討論をする。
「みなの言はわかった。そもそも、我々に出来ることは少ない。それよりも私の上洛予定について話をしよう。」
「上洛にございますか!?そのような話は一切聞いておりませぬが?」
幸隆と義堯が驚き声を荒げる。
「それはそうだ。直勝以外には初めて伝えたからな。帝に今の地位を確固たるものとして認めて頂くためにも直接御礼とお話をせねばならないと考えている。ツテは正直いくらでもあるが近衛前久殿を頼る予定だ。」
「なるほど、驚きましたが行く必要性も理解いたしました。ですが、それを氏康様がお認めになるでしょうか?嫡男ですぞ?」
「父上は認めざるおえないさ。今手に入れた領土を不当に責められない大義を得られるのだからな。それに、京に行くのは北条にとって利が大きいのもある。今は風魔たちが商人として京に向かい情報を集めてくれているが、有力者たちと面会しツテを作るとなればある程度の地位のものがいくのがいい。その点俺ならば嫡男の見識を広めるためだとかでいきやすいだろ?」
「はぁ、わかり申した。それが必要なことなのですな?なれば万が一のことがないよう仔細を詰めるとしましょうぞ。氏康様が氏政様の行動を止めようとした場合は我々は手伝いませぬぞ?」
幸隆がやれやれといった様子で周りをまとめて予定を立て始めた。いつのまにか備えていた風魔小太郎たちとも情報交換をしながら航路の確認を義堯として、この後直勝とも打ち合わせをしなければと言っている。さて、あらかたこれでやるべきことは終わったなとひと段落して茶を啜っていた氏政であった。部下の気持ちは何のその、戦国のブラックさに慣れきっていたのであった。
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