第208話
「このままの勢いで行ければ5年後には関東だけで東側殆どの民へと配給ができる可能性を秘めているな…」
「日の下の半分をですか!?真にそんな事が可能でございまするのか!?」
小姓達の副まとめ役である本田正信が驚きをあらわにしている。まとめ役をしているのは次郎法師の為、形としては配下である本田正信が次郎法師の顔を立てているからだ。
「ああ、完全に毎年タダ飯を食べさせることは無理だが全国のもの達が金を払ってきたら提供できるくらいの量は、用意できるはずだ。」
これで用意したかったピースは揃ったと確信できた氏政はニヤける顔を抑えるために片手で口元を覆い隠すが目元で笑っているのが周りのもの達にはバレバレだった。
「殿!」
風魔の配下がこちらにやってきた。
「どうした?火急の件のようだが。」
「はっ!してやられました。佐竹が兵を上げ岩城に進軍しております!佐竹は常備兵を活用しているようでその速度は速く、既に岩城は敗色濃厚にございます!」
「あー、あーー、そうきたのか。なるほどなるほど。」
いくつか予想していた中では面白い手を打ってきたな。多分だが、
「我々の国境線にも1500ほどですが兵が出てきており康虎様が対応するために守備隊を率いて出撃いたしました!」
「そうきたか。よく報告してくれたな。風魔には落ち度はないから気にするな。」
風魔達を下がらせ、康虎にはそのまま警戒だけしておくように指示を出す。今回北条ができることは、ほぼない。できる事といえば相馬に船を出してこれからの事を決めさせるくらいだ。相馬の現当主は息子をこちらに学ばせるために送ってもいいと言っているからな、実質は留学生として、周りからは人質と見えるように預かってもいい。そうすれば伊達と佐竹への牽制にもなる。
「義堯を呼べ!」
相馬への伝令として義堯を使うのは勿体無いが、あちら側へ本気度を見せる為でもある。それに佐竹への牽制ともなるしな。
そのようにしてとりあえずの対応をしていると佐竹から直接使者が来て手紙を渡された。そこには、佐竹は悪くないよ!これ以上侵攻しないからよろしくね!と要約するとこんな感じだった。
「使者殿、佐竹義昭殿に伝えていただきたい。食料やなにやら足りぬものがあれば直ぐにでも支援する用意がある為いつでも声をかけてくれとな。」
「はっ!」
使者が帰ってから集められるだけの家臣を集めて評定を行った。ここではこれからの動きや佐竹への対応を話し合う為だった。氏康からは既に氏政に全権を任せると指示書が出ていた。氏康は氏康で西の対応に追われておりそちらに対応している暇はないとのことである。
「さて、佐竹は拡張路線を取ってきたが我々がやることは変わらない、新たに手に入れた領土を北条の領土とするために手を尽くすのだ。佐竹はこちらを酷く恐れているようだ。」
何人かが疑問を感じているように唸っている。
「奴らはこちらの国境線には兵を置かずに出兵した。つまりは、我々に反抗する気は一切ない、攻められたらそこまでと割り切って全力で外征をしたという事だな。しかも、常備兵を使っているから農民、つまりは我々が民と呼ぶもの達には一切被害を与えていない。良くやるよ。」
「なるほど、我々は関東の民を荒らす事を許さないのを大義として行動しておりますれば手出しする理由はありませぬな。」
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