第207話

「敵が打って出て参りました!」


 うおおおおおと雄叫びを上げながらガムシャラに突っ込んでくる敵軍を見つめながら佐竹義昭は冷静に指示を出していた。


 「鉄砲隊500を正面で斉射させよ!撃ったのちに騎馬隊を突撃!それに合わせて足軽達を進軍させるのだ!」


 敵の半分がこちらの射程内に入っているのを見て斉射をさせた。その音と威力によって先方150ほどを討ち取り負傷者を多数生み出した。やはりというか、一番大きな戦果は相手にパニックを起こさせ指揮系統を崩し切った事だった。


 「敵が立て直す前にこちらが踏み潰すのだ!そのまま敵を食い破れ!」


 真壁が足軽達を指揮しながら敵を押さえ込む。特に工夫をせずとも足軽達を前へ前へと進めるだけで敵は潰走して行く。足軽達は勝ち戦とわかり調子が上がりより戦果をもたらす。佐竹義昭が予想していた通りの戦果をもたらしていた。


 「鉄砲隊は足軽隊2000とこのまま城へ向かって制圧に入れ!正門を抑えたら守り切るのだ!残りの兵は残党狩りに入れ!大塚は逃すなよ!生死は問わぬ!首を取ったものには格別の恩賞をやるぞ!一塊で討ち取ったもの達全員に渡す!」


 足軽達は義昭の言葉を聞いた足軽達は最後の一踏ん張りと雄叫びを上げながら攻めあげる。独断専行で軍が崩れないように一塊ごとにしっかりと敵を1人ずつ倒していく。


 それから数刻後、岩城の全ての城を抑えた佐竹義昭は岩城家臣達の中で有用そうだったり忠誠を尽くしそうなもの、佐竹のやり方についていけそうなもの達を選別し残りのもの達には帰農するか他へ放逐されるか選ばさせた。

 ここで斬首にしないのは岩城の統治をやりやすくする為でもあるが下手に殺しまくればそれを理由に他家から攻められる可能性があるからであった。


 義昭はその対応をする間に手紙を認め、伊達や相馬、北条などの有力な家に今回の件の結末やこれからの事などを記しておいた。要約すると岩城は佐竹の家臣と供託して乗っ取りを画策していた為成敗したこと、しかし、成敗し脅威を取り去ったがそれ以上は望まないので親族や家臣を殺さずに放逐にしたこと。これからはもう岩城は佐竹が治め、より豊かにしていく為何卒よろしくということをこねくり回していた。


 それぞれの反応は面白い事となっていた。


 伊達からは相馬と当たることになるだろうからこれからは仲良くしていこう。岩城のことはしょうがないと思う、我々とは仲良くしようという話になった。伊達は天文の乱から完全には立ち直っておらず、家臣達の力も強くするしかなかった状況や、伊達晴宗の子供達との婚姻を岩城や二階堂とは結んでいなかったこともあり佐竹とは協調路線を歩むつもりだった。


 相馬からはやや反抗的な歓迎と言うところだった。二正面作戦を強いられる可能性があった岩城を潰してくれたのは嬉しかったのだが、佐竹自体も敵になる可能性を含んでおり、こちらに協力的だと言うわけでもなかった為全体として否定的な立場となっていた。


 それに対して北条だが…


 少し時は遡る。北条では農繁期という事もあり少し慌ただしい日が進んでいた。と言っても他の国に比べれば断然スムーズに回っているし問題も起きていない為、働いているもの達からすれば働きやすい職場なのだが。


 「今年は凄いですね。明らかに土地を整備して農作業に手を加えたおかげで関東のほとんどの国で石高が5割以上増えています!」


 そばで報告書をまとめていた源太郎や秀吉達がはしゃいでいた。実際の数字で見て差がはっきりとわかると凄さもよく分かるようだ。

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