第187話
氏政は年始の大評定までに全体の計画書のチェックに追われていた。康虎や直勝 幻庵はさすがと言うべきかあらかた綺麗な草案書が出来ていた。そしてそれぞれの連携や予定が重ならないように邪魔にならないように調整する中間管理職が氏政に回ってきていた。
「めんどくさすぎる…全ての所に俺が関わっているから仕方がないのだがやり過ぎたかな。」
だが、やりすぎなければもっと酷い状態だったかもしれない。上野と下野はまだまだ服従しきっていなかっただろうし北条を関東の支配者と心の底から従うことは無かった。武力を見せ内政力を見せる必要があった。
「殿、そのような事をおっしゃる暇が有れば少しでも作業を進めましょう。微力ながら我らもお付き合い致しますので。」
今俺は自分の作業部屋で小姓やそば付き達、正信 次郎法師 秀吉 源太郎 それと見守り役のような形で幸隆と義堯と共に作業をしていた。
「だな。まずは軍から行くか。」
正信に目線をやると彼は頷いて読み上げ始めた。
「康虎様は現在相模 房総の軍で警備や正規軍を賄っている現状を撤廃するために上野国 下野国に軍学校で教育を開始、また武蔵にある軍学校から人員を補充し北関東方面の軍を任せるつもりのようです。」
「まあ、今は占領してやっと軍を徴兵出来るほどに落ち着いて来たばかりだからな。ここからだろう。何か問題や調整が必要なことはあるか?」
見渡しながら聞くと次郎法師が手を上げているので発言を許可した。
「では、現在内政を行なっている関係で労働力として次男以降の男手などを徴用しています。軍に回すと一時的にですが労働力の低下が見込まれます。」
「ならば、常陸方面の流れ者を使えばいかがでしょうか!常陸に対して動くためにあちらに出かけていましたが人が溢れて職が足りないようです。そのために軍に入るものも多く発展もしていますが。」
秀吉がそれに合わせて手を上げながら楽しそうに発言する。発言を許可してないことに対して源太郎は少しムッとしていたが秀吉だからと苦笑していた。彼にはなにか魅力が溢れているのだ。
「なるほどな、房総の軍を戻す予定だからそれに合わせて彼らを上野 下野に呼び寄せるとしよう。まずはお触れを出さなければな。源太郎描いておいてくれ。」
「はっ、付け加えますと少しずつですが甲斐からやってきている人員もいますがそちらはどうしますか?」
源太郎が書きながらこちらを見て訪ねてくる。
「甲斐から来たものたちは痩せ細っていて体力もない、最近になって飢えずに済んでいるようだがまだまだ食料が足りていないのだろう。そのようなものたちに長距離移動は厳しい。彼らは保護対象だ、労って忠誠心を植え付けることが肝要だと思う。」
「わかりました。そのように伝えておきます。」
周りを見ると特に意見はないようなので軽く頷き源太郎に合図する。
「軍の内訳や割り振りは最後に纏めるとしましょう。次は海についてです。直勝様は現在北条水軍の艦船 伊豆型(ガレオン)を現在10隻 安宅型を30隻 関型80隻 小早150隻を配備しております。今はこの数を集中運用する事でどこにも負けないでしょうが東に西に軍を派遣したいのでこの倍を軍として配備したいそうです。また、それとは別に防衛用にその半分を手元に残しておきたいと。」
周りのものたちは北条海軍の全容を知らなかったのであろうだいぶ驚いており表情に出ていた。ガレオンは現在武装していない商船用のものが15隻ほど存在しておりどれも北条傘下の商人に任せている。指揮官は北条軍のものがやっているので離反して持っていかれることはない。
「現在造船中、進水待ちのものはどうなっている?」
源太郎が別の資料を開く。その隣で秀吉がチラチラと気になるのか横から覗こうとしていたので源太郎は少し横に体を寄せながら共に見るようだ。微笑ましくて少し笑ってしまいそうになった。
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