第188話
「はっ、現在伊豆港4港で合計4隻造船中
で、別に3隻は進水式待ちです。殿はこれらを商船にするか軍船にするかは直勝様や若殿に任せるためまだ決めかねているようです。安宅は半年に各港で5隻ずつ合計20隻が生産可能であり小早に至っては合計100隻も目じゃないようです。しかし、その場合には修理や整備、他の種類の船の生産が止まることになりますのでそこの割り振りも必要となります。」
義堯は水軍を自分で扱っていた経験もありこの生産力の大きさにびっくりしているようでこめかみを抑えながら頭を左右に振っていた。まあ、その気持ちはわかる。幸隆に至っては内陸国にいたせいか意味がわかな過ぎて無表情になっている。
「わかった。今から計画するとしよう。房総や相模の港はどうなっている?」
「はっ、元々あった港を再利用する形で整備していますので大体は終わっております。伊豆とは違い大型艦の生産は不可能ですし、可能だったとしても間者対策が出来ていませんので危険が高いかと。その代わりにですが従来の小早は生産可能ですしバレても問題ないかと思います。」
「相模や房総でも千葉側に近い方は小早の生産をさせる。それと安房の守りを風魔で固めさせろ。安房だけに限って守りの手間を省き、そこで安宅船を作るのだ。それと、小早の追加装備は安房で付けさせろ。伊豆はガレオンの生産と整備に全ての力を注力させるのだ。」
小早や安宅の追加装備は鉄板である。分厚い必要はなく、薄いがある程度の硬さがある鉄を貼り付けている。これによって投石や矢を弾きながら突貫できるようにしている。操船が容易で内側からしか開けないようになっているため大分使い勝手はいいと思っている。
「と、なりますと年間ガレオン8隻 安宅15隻 関船20隻 小早多数といったところですかね。問題は材料となる木材ですね。鉄などは伊豆で生産され備蓄されている分があるので問題はございませんが、平野が多く、防備のために切れない山などもございますので木材を輸入する必要が大きいかと。」
「そこは、武田や上杉、東北から輸入していくしかないでしょうね…。出来るだけ依存度を下げるためにも多数の方面から輸入致しませんか?」
源太郎のまとめと問題提起に対して正信が提案をする。彼らだけで論題が進むのは良い面と悪い面があるとは思うが俺は自由にさせたかった。俺や幸隆義堯の前だけならば失敗したり間違っていれば指摘してやれる。そうして人材を鍛えていくのだ。というか、俺が何をしなくてもこいつらの地頭は良いから関係ない気も最近してきた。
「現在武田と今川 佐竹は北条に対して依存しています。我々が荷止めをすればそこに住む民の不満が一気に積もり、その矛先は統治をしている大名に向いてしまう状態と言っても過言ではありません。彼らから輸入するのはやめておいたほうがいいのではないでしょうか?」
佐竹との関係で経済に対して敏感になっている秀吉が意見を言う。周りも頷いてはいるが俺は少し疑問に思った。
「それでは、結局は東北や上杉から輸入することになり彼らに依存することになるのでは?それならば最大の潜在量がある武田も巻き込んで武田とその他で半分ずつくらいの依存度にした方がよろしいのではないでしょうか?」
次郎法師が手を挙げながら発言する。そうなのだ、武田は現在日本の木材大国となっており、輸送地の近さなどを考えても利用しない手はないのだ。それに…
「それに、武田から輸入しない姿勢を見せれば三国同盟を結んでいながらも互いに不信感がある状態となってしまいます。それでは同盟の意味が薄れてしまうかと。」
そう言うことだ。武田は我々に対し疑いを持つ事になってしまう。今はまだ、武田と事を荒げるわけには行かない。今は…。
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