第157話

 馬を早足でかけさせながら整備した道を進んで河越城を出て、平井城まで向かう。平井城には既に3000の手勢が勘助によって集められており、残りの2000他の各城に配備されている。


 「それで幸隆、報告とはなんなのだ?」


 「はっ、壬生が戦を始める前に謀反を起こした為戦況が混乱致しました。壬生としては現在の体制に不満があり宇都宮にはついていけない。軍を出さないと主張しているため、宇都宮本家は留守役を多めに残した上で那須に向かわなければならなくなったそうです。」


 「なるほどな。それで宇都宮本家からの救援要請でもきたか?」


 幸隆は大きく頷きこちらをじっと見つめる。これは判断を求められる場面だ。壬生を討伐し宇都宮に我々の手を入れるのか。それとも壬生に協力することで壬生を傀儡に下野全土を支配下に置くか。


 「兵力はどのような配分となっている?」


 「はっ、那須はかき集めても500程の兵力にございまする。対して宇都宮は本家に着くもの達だけで2000を壬生側についたもの達で800を用意できます。ですので宇都宮は1000で割って留守を守るつもりではないでしょうか?」


 「康虎に伝えよ。背後は我々に任されよと宇都宮本家に伝え、実際は圧力をかけるだけで攻めずとも良いとな。那須と宇都宮本家との戦の結果次第では壬生が宇都宮に対して何かしでかすかもしれん。そうすれば我々の予定通りに進めるのだ。もし、宇都宮本家が勝った場合は即座に壬生を攻め落とさせろ。そしてそのまま駐屯させ実効支配するのだ。」


 「はっ!しかと伝えまする。」


 史実通りに那須が勝ってくれた方が有難い。もしかすれば我々の思っている以上に事は簡単に進むかもしれないな。


 「佐竹はどうしている?」


 「佐竹は様子見をするようです。不戦の盟約もあるためどちらにも肩入れはせぬ。もし必要となれば足利公が命じている宇都宮につくとの事です。」


 「あちらも刈り入れどき、下手に兵を動かせないか。」


 「それもあるようですが、我々の嫌がらせが思った以上に効いているようです。秀吉殿が義堯殿の元で城作りも学び実行しているようでしてそのおかげか人員がどんどんと霞ヶ浦のほとりにできている城下町に集まっているそうです。その為佐竹はまともに兵を招集するのも難しいのかと。」


 「流石にこれだけすればあちらも我々が仕掛けて来ていることに気づいているだろうな。」


 「はっ、おっしゃる通りかと。しかし、彼らにはどうしようもありませぬからな。いやでもこちらに依存することになりまする。北の方から米などを輸入しているようですが量が全然足りておらず5.6年と言わず3.4年でこちらに膝をつく可能性もあります。」


 「よし、よくわかった。今は佐竹は動けないという事だな。では、我々は予定通りに山内上杉に押しかけるとしようか。」


 山内上杉が抑える城は大きく分けて3つ 国峰城 箕輪城 沼田城だ。国峰に山内上杉は詰めており、箕輪城は長野業正が、沼田城は沼田家が抑えている。どちらも山内上杉配下としては山内上杉に負けないほどの規模と兵力であり、最近長野と山内上杉の仲が良くないこともあってギクシャクとしている。


 「義堯から長野に関しての連絡はないのか?」


 「はい、こちらに靡くように手紙を送ったりもしたそうですが上杉の元で守護代をしている以上我々は最後の一兵たりとも屈したりはしないと手紙が送られたそうです。」


 「箕輪城を落とすのは最後となるかな?先に箕輪城を落としてしまいたい所ではあるがここで手間取ると実虎に憲政の救援連絡が届いてしまうかもしれぬしな。よし、では軍を三つに分けよう。1隊は光秀がもう1隊は幸隆が指揮しろそれぞれ2000を預ける。その兵力を使って国峰と沼田を落としてこい。残りの1000は勘助をつけて俺が直接箕輪城を包囲する。」

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