第153話


  光秀や義堯 他の直臣達は流石にここまで助言をすれば各々が勝手に理解して納得しているようだ。まあ、今回は小姓達に経験を積ませたいのだから特に問題はない。秀吉がもしいい案を出せるなら誰かの指導のもとで今回の作戦を実行させても良い。


 「…恐れながら申し上げます。情報が不足しておりますのでいくつかお尋ねしたいのですがよろしいでしょうか?」


 おっ、良いところに気づくじゃないか。さて何を聞くのかな。俺は首肯して続きを促す。


 「さすれば、殿は常陸をどのくらいまでに御したいのでしょうか?また、そこに裂ける人員や予算はどれほどになりましょうか?」


 「5、6年程でこちらとの交渉に付かせられることが出来ればそれで良いと考えている。先ほどまでも話をしていたが下野や上野 三国峠に関してなどやることはまだまだ多いからな下手に常陸を刺激してこちらに反旗を翻されると面倒だ。それと人員は風魔の常陸に忍ばせている配下や商人に扮した風魔達、必要であれば国境での大規模な軍事訓練を行ったりかな?金銭は気にせずとも良い。なんとでも工面出来るほどに稼いでおるからな。」


 最初はどんなものが来るかワクワクしていたが今はここまで頭が回る秀吉に驚きっぱなしだ。少し期待もし始めている。


 「で、あれば、霞ヶ浦辺り一帯を大規模な開発にかけるのは如何でしょうか?現在我々はまだ小田 古河公方領を完全に手中に収められている訳ではありませぬ。民心はこちらに傾いており一揆などが起きる心配は御座いませぬがやはり、長年手を加えてきた所には及びませぬ。ですからこそ、今手を加えるのです。」


 一旦秀吉は話を区切る。光秀達大人役は理解しているようだが他の二人が未だ理解できていないようだ。手を出してやるか。


 「ふむ、それをする利点はなんだと思う?」


 ざっと周りを見渡し目配せをしてるとその意思を汲み取った義堯が補助に入る。


 「はっ、さすれば周りの人々は北条領の裕福さを目にし羨ましく思うでしょう、我々が開発に来た人々にその土地を開発した分だけ渡せば佐竹の人々もこちら側に逃げ出してくるかと。こちらには税を取る関所は御座いませんので一度流れが始まれば段々と人も増えていくことでしょうし、なによりも人が集まれば集落ができ活気があれば商人達が寄ってきます。商人不足の常陸の人々は否が応でもこちらにやってくる必要が出てくるのではないでしょうか?」


 そして風魔小太郎が付け加える。


 「更に、我々が常陸でも佐竹のお膝元あたりに配下達を使って噂を流布できまするし佐竹に対しての情報を少しでも遅らせたり規制することも可能です。彼らが南の方がどうなっているかに気づく頃にはもう手遅れ…という可能性もなきにしもあらずでしょう。」


 「よし、ならばその策を採用してみようではないか。そうだな…義堯の元につける。義堯、お前は今までの業務とは別に常陸に対する謀略を任せる。そこで秀吉をお主の元で鍛え上げてほしい。頼めるか?」


 「はっ、勿論に御座いまする。しかし、私の指導はちと厳しいですぞ?」


 義堯は顔をニヤッとさせてこちらを見る。そこに対して秀吉が一歩にじり寄って手を突き義堯の方に頭を下げた。


 「何卒!よろしくお願い申し上げます!私はついていきまするので!どうか!どうか!」


 「だ、そうだが?」


 俺もニヤニヤしながら義堯の方を見る。


 「これはいじめがいがありそうに御座いまするな!はっはっはっ。」


 「さて、先ほどの策に加えて小太郎、流布する内容は次男以降の跡を継げない農民を移住させるのと腕っ節に自信のある奴を兵として雇うことを前提に勧誘しまくれ。我々が意図的に行動しているのがバレるのは仕方がないがなるべく相手を挑発しないようにしたいから少しずつでいい。大掛かりに集めるとすぐにバレるからな。それと、軍学校を急ぎ建てるのだ。風魔の手のものを多く入れて監視を強くしろ。相手の間者を引き入れて一網打尽にしてくれるわ。」

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