第152話
「さて、三河の話は連絡が来るまで終いにしよう。戦に関する予定もあらかたは話し終えたし今まで触れてこなかった佐竹について話をしようか。小太郎?」
俺は佐竹について現状がどうなっているかをみんなに説明するように促す。武田 今川 越後上杉 以外の大きな相手と言えばもう残りは佐竹くらいだ。
「はっ、佐竹は昨年に失った兵の過半数を補充したようです。と言っても元々大きな被害を下野や常陸勢力は受けておりませんでしたので当然のことかと。それと殿からの命で始めていた商人をこちらに流すという行動は上手くいっています。北条領内に居を構えて商売や職人活動を行う時にこちら側がある程度資金を負担し活動しやすく支援する制度が彼らにとって大きな決断の一因となったようです。」
「ほう?それは初耳だな。」
勘助が不思議そうに話を聞こうとする。この中で経済に関して興味を持っているのは義堯 光秀くらいだ。他は軍略や謀略 内政には長けているが少し経済という枠組みで考えることに追いついていないのだ。それもしょうがない気がする。光秀は言わずもがなだが、義堯は一国を治めていたという経験からまだ理解が追いついているくらいだからな。
「ああ、それは俺が文官と話し合って父に意見具申して可決してもらった制度なんだ。具体的には他国から北条領に来る場合、その旅費や居が決まるまでの滞在費などを半額請負い、必要となれば残りの半分を借財として全額払う制度なんだ。利に聡い商人は北条に来る方が利を求められると分かっているからどんどんと元の国の居住を捨てこちらにやってこれるのだ。勿論お抱え商人などの大口は別だがな。それに商人に紛れた間者もいる可能性があるから風魔に監視はさせている。」
「なるほど、ご教示ありがとうございまする。小太郎殿、話を遮ってしまって申し訳ござらぬ。」
「いえ、問題ございませぬ。さて、結果としてですが佐竹領内の職人 商人の引き抜きは8割方移住完了しており、お抱え商人となっている商人の枠とは別に風魔の配下たちが運営している商人が潜り込めることになりました。一部の商品を安く売ることで城内の者達に接触する事が可能になったのです。佐竹はまだ気づいていないようでございますが常陸に住む住人は物が買えないことに段々と気づき始めるものもおりあちらでは物の価値が上がっております。」
ここで小太郎が一息つく。周りの面子はじっと次の言葉を待っている。特に小姓3人組は軍学校でも習わないような内容が出てきているため驚き戸惑っているようだ。それぞれ特徴があり次郎法師はひっしに食らいつこうとしており、源太郎は理解をしながらも頭を整理するために黙っている。それに比べて秀吉は銭勘定に強いのか楽しそうに話を聞いている。
「はっはっはっ、他の小姓達はこの話を聞くのに精一杯のようだが秀吉は楽しそうにしているな。なにかあるのか?」
秀吉は猿っぽいが人に好まれる顔を崩してくしゃっと笑ってこちらに答える。
「はい!特に普通の調略や破壊工作とは違い銭を使って相手に被害を与えているという点が北条らしい、というよりは氏政様らしくて大変素晴らしいかと!それに、このまま行けば好きな時に風魔の商人様が荷を止める事で相手にまともな戦をさせずに勝利することができまする!」
ほうっと周りの直臣達も驚いたように秀吉の方を見ている。今の話をここまで咀嚼できているのは経済系に関するセンスがある。
「では、秀吉よ。もし、お主ならば常陸をどうやって屈服させる?勿論だが武力行使をせずにだ。お主は先程荷を止める事で戦に勝てると言ったが戦を起こさずに北条に臣下の礼を取らせて俸禄制度に組み込むのだ。どうだ?皆も考えてみよ。」
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