第150話
「なんだと?それならば北条と協力して事に当たれるのではないか?」
長尾景信が直江に尋ねる。
「いや、そんなことはない。少なくとも上杉の同族である山内上杉を北条は攻めるだろう。その際に我々が北条と結んでいたら我々は見捨てる事になる。そうなれば外聞が悪い。そこをつかれて政景達が調子に乗ることも考えられてしまうのだ。」
景虎がここは答える。
「なれば北条とは敵対して武田とも敵対すると?そもそも、彼らは同盟を結んでいるため我々はどちらとも敵対する事にはなると思いますが。」
「いや、考えてもみよ、山内上杉がこちらを頼る頃には北条は上野を支配しているのだぞ。我々が兵を出すには三国峠を越える必要がある。しかし、峠を越えた際には大量の熟練兵達が待ち構えておるのだ下手に侵攻すれば我々が手痛い目を見る。だから付かず離れずを維持するのだ。直江に頼んで配下を送り込み北条との縁を結ぶ。武田に関しては北条と裏で協力できるかも知れんのだ使わないてはない。」
「分かりました。後ほど書状を認めて頂きますぞ?」
「分かっておる。」
「では、北信に関しては北条との協力のもと対武田の前線とすると言うことでよろしいか?」
他のみんなに確認をとる。
「最後に越中に関してですが、あそこは一向一揆の力を借りて神保が椎名を圧倒しはじめておりまする。ですので椎名から救援要請が来るのは時間の問題かと思われます。また、本家の畠山家とは別の能登畠山家は家内の重臣が鎬を削り合い越中の統制が取れていないため手が入ることはないと思われます。もし制圧するのであれば越中が一番現実的で楽だと思われます。
しかし、椎名や神保は景虎様のお父上為景様が完膚なきまで叩き潰しましたので椎名はこちらに対してぎりぎりまで救援を要請することないと思われます。」
「越後国内を落ち着かせるためにも我の元に一致団結して外敵に向かう事で対応したい。そのためには勝てる敵を用意する必要がある。神保に人を入れて椎名に侵攻させるように仕向けることは可能か?」
景虎は直江の事を見つめながら話す。
「可能です。軒猿達を使って必ずやその任を達成して見せましょう。」
「わかった。我々は定実様から任された越後半国の土地をしっかりと治める事、それに政景達を抑える事、定実様がご存命の間に我が養子に入り上杉の家督を継ぐ。そして、その大義名分のもと政景達を完全に家臣とする。これがとりあえずの目標だ。皆もしかと理解しておけ。」
「「「はっ!」」」
〜〜〜
北条氏政
今川対織田の戦と武田の侵攻が終わり三国同盟の動きとしてはひと段落ついた頃、長尾景虎が上杉定実から上杉を継ぎ上杉実虎として越後を統一した。そして、その動きに乗じて実虎の配下直江から軒猿を通してこちらに接触があった。
彼らの言い分としては、北信濃に手を入れていることはこちらも理解している。武田にバラすつもりもない為協力できるならしたいとの事だ。上杉は仮想敵を武田に定めているようだ。というのも実虎の叔父である高梨氏が北信におり武田が北信に行くのは確実とも言えるので敵対するのはほぼ確定なのだ。
我々としても武田が北を向くきっかけになってくれれば嬉しいので武田と上杉が敵対してもこちら側は今行なっている支援以外は何も手を出さない事を確約しておいた。また、山内上杉を攻めたとしても救援依頼が届かなければ越後上杉は動くつもりがないとも書面には残さない形でだが伝えられた。
これは我々にとって誤算であったがいい誤算だった。上杉と同盟を結ぶという事にはならなかったが付かず離れずを維持できるのだ。こちらとしてもありがたい。この知らせを聞いた俺は直ぐに呼べるメンバーを招集してこの前決めたことの変更を行った。
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