第148話
武田軍の木曽侵攻を受けて周辺の対応は様々であった。まずは友国と言える今川についてだが三河を抑える上で北を心配しなくて良くなりこの出来事を良い出来事として受け取っていた。それとは反対に織田や美濃などでは対武田に対する警戒を強めていた。特に東美濃で武田と接した斎藤は東美濃の統制に苦労していた。
東美濃を収めているのは遠山七頭と呼ばれる遠山一族達だった。彼らは七頭それぞれが遠山一族の代表になりたく日々争っており時には外部の勢力の支援を受けていた。彼らが一致団結するのは外敵が襲ってきた時のみであった。そんな彼らを抱えこむのは容易な事ではなく斎藤も武田も完全に支配しようとはせずにどちらの庇護下に入れるかで争い始めたのだった。
南信から少し北西に進んだ飛騨国では姉小路国司家と庶流の三木氏が大きな勢力として台頭していた。本家である姉小路国司家の下に纏まっており武田に対しても屈しないほどの名家であり信玄も流石にそうそう手が出せないかと思われたがそこにはまだまだ火種が眠っていたのだ。この世は戦国時代、武田に飲まれるくらいならばその力を借りて下剋上を…と考える奴も居た。
具体的には庶流である三木直頼が隣国美濃の土岐氏と手を結んで実力をつけていっており、飛騨の南半分を征服し、三木氏が戦国大名として躍進する基礎を築いていた。今は飛騨北部を支配する国人の江馬時経と飛騨の覇権を巡り争っておりどちらも武田の支援を借りて纏めて潰してしまおうかと考えていたのだ。
その空気を察知していた他の二家も黙って待つわけがなく他家から力を借りようとしたが加賀には一向一揆による百姓による国で、越中では神保氏や椎名氏など戦国大名になりきれない有力国人しかいなかったため、彼らは決断を迫られていた。
〜〜〜
越後でも歯車が狂いはじめてきていた。去年の48年までは史実と同じような流れを追ってきた越後であったが49年今年、史実ではあり得なかった上杉定実が北条 武田の急激な拡張に危機感を感じ、現在の戦乱にまみれた越後では持たないと判断した為、軍の才能とカリスマ性に溢れる景虎を後継者に指名し晴景とその一派に景虎を主君として二心なきように仕えることを厳命したのであった。
「景虎よ、ワシの身体はそう長くはない…。この越後は広大で豊かな土地である。が故に、武士達はそれぞれの利を求めて争いが絶えぬのじゃ、この状況をまとめ上げ越後の地を守ってくれるのはお主しかおらぬと思って今回任せたのじゃ。ワシにはこのように託すことしか出来ぬ…申し訳ないのぅ。」
定実は自室で景虎と彼を支える本庄実乃、景虎の母・虎御前の実家である栖吉城主・長尾景信(古志長尾家)、与板城主・直江実綱、三条城主・山吉行盛らがそばに控えていた。
「いえ、私を選んでいただけで十分にございますれば…。」
景虎がじっと目を見つめながら答える。その横から直江実綱が声をかける。
「もし、可能でありますれば足利義輝様へ越後守護を任じて頂けるように定実様から一筆頂ければありがたいのですが…。実際今は定実様もいらっしゃることで反対派を抑えられておりまするがまだまだ景虎様のお立場は盤石とは言えませぬ。もし、万が一があったとしても景虎様ならば退けられると思いますが。」
そう簡単に纏まらないのは目に見えていたことであった。坂戸城主・長尾政景(上田長尾家)や蒲原郡奥山荘の黒川城主・黒川清実らは晴景派は一族の坂戸城主・長尾政景を晴景の代わりに旗がわりとして内部で燻っていたのであった。
「そうか、なればワシが一筆書いておくとしよう。…南には武田と北条がおり、東北は魑魅魍魎が跋扈しておる。これからの舵取り任せるぞ。上杉の縁戚が一つなくなり、もう一つの山内上杉も虫の息だ。奴がこちらを頼ってきた時は…ゴホッ ゴホッ」
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