第139話
「そうなれば、壬生に着くものが多いだろう。我々の入り込む余地がなくなるのでは…?」
勘助の提案に意見を提案したのは幸隆だ。彼らは互いに批判し合うのではなく穴埋めをする形で建設的に話を進めるため、俺はどちらかと言うと道筋を示せばいいので楽だ。
「うぅむ…。」
「なれば、下剋上を唆す上に宇都宮の当主の遺児を助け出す手助けもして彼らを擁立して宇都宮を制圧、その後那須も制圧してはいかがでしょうか?遺児の後見をする事で実質的に下野を北条の支配下に置きましょう。」
義堯が提案に提案を重ねてより完璧なものへと計画を立てていく。
「うむ、それがいいと思う。風魔に連絡は後で俺がやっておこう、それに合わせてだがこの機に乗じて山内上杉を上野から完全に追い出したいのだが何かいい案はないか?」
これには予想外だったのか皆が一様に考え込む。光秀にも伝えていなかった事なので光秀さえも驚いているようだ。
「まずは、なぜ上杉を早めに追い出す必要が有るのか教えて頂けますか?」
「うむ、ここだけの話で頼みたいのだがな。武田が西を目指しているらしいのだ。」
「はて、それがどうなされたのか?」
「俺は元々武田は北信を目指すものだと思っていたのだ。そして村上や小笠原が長尾景虎を頼り泥沼にハマってもらうことを望んでいた…。その計画が狂ってしまったのでな、早めに景虎が家中を統一できるように強力な護符をやろうと思ってな。それに上野を早くに手に入れられれば三国峠を抑えて景虎の介入を防ぎ侵攻方向を北信に向けることが出来ると思うのだ。
東北に介入されないように蘆名と今手を組もうともしているのだが、まだまだ話が進んでいない状況だ。何とかしたいのだ。」
「なるほど…長尾景虎、若年ながら初陣から今まで数々の武功を立てて立身出世している若者ですな。その軍略は神がかっているとかで最近噂になっております。」
「ああ、実際奴は噂だけでなくしっかりと実力を持っている。下手をしたら我々の手を引かなければならないかもしれないほどだ。正直我々の軍を総動員して遠距離から一方的に当たれれば何とか勝てるかもしれん…それほどまでの男なのだ。」
「そこまで、ですか。万が一上手く追い出せて向ったとしても長尾景虎に頼りましょうか?そもそも向かうのでしょうか?」
光秀がそもそもの疑問を呈してくる。
「最悪上野さえ早めに取れればいいのだ。長尾景虎との対峙は避けられるかも知れないし避けられないかもしれない。山内上杉を残しておくことで景虎が簡単に関東に侵入する事態さえ塞いだ上で武田への圧力をかけ北信濃に目を向けさせられれば…」
「確か、風魔を使って北信濃の支援をしておりましたがこのためだったのですか」
「そうだ、北信濃衆の影響力が大きくなれば信玄は南信を制圧した後美濃や飛騨に向かうことなく一度は北信濃へ出兵するだろうと踏んでの事だ。」
「背に危険を置いたまま手を伸ばすことは難しいですからな。そして、その頃には長尾景虎が越後を統一して北信濃衆の願いを聞き届けられる準備が整っていると…」
「そうだ、そうなった場合が一番有難いな。」
なるほど、と皆が頷く。子供達3人は目まぐるしく自分達の知らないことをどんどんと知り頭がパニックになっているだろうに必死に食らいついてこようとこちらをじっとみている。
「さて、大事なことは話せたし一度休憩を挟もうか。その間にこの計画を実現させるための案でも考えておいてくれ。」
そう言って3人以外の別の側仕えに茶菓子と茶を用意させ持って来させる。
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