第138話
「あ!君は木下秀吉か!見ないうちに大きく…?いや、すまない久しぶりだな。」
小姓として働いていたのは12歳となり元服もすました木下秀吉だった。大きくなったと言えばなったのだが元来背が低いのかあまり大きくはなかったので言葉を濁してしまったのだ。
「はい!お久しぶりにございまする!光秀殿の声かけによりこちらで働かせて頂いております!殿とよりお話がしたいですが、お仕事がございますのでこれで失礼いたしまする!」
秀吉は人垂らしな笑顔と声色でこちらを不快にさせないように気持ちよくその場を後にする。
「ああ、よろしく頼むよ。」
そうか、秀吉がこちらに出てきているのかそうなると他にもきているのか…?まあいい。光秀が来たら聞くとしよう。
タッタッ と音がするとそのまま部屋に入ってくる影がいくつもあった。
「失礼致しまする。お呼びとあり光秀以下4名参りました。」
「よく来てくれたな、少し軍略をねる必要があり呼んだのだ。」
「なるほど、わかりました。念のために襖を全て開けて側使え達を下がらせましょう。」
「そういえば秀吉が軍学校から出てこちらに来ていたのだな。この前に言っていた件か?」
「はっ!木下秀吉以下 真田源太郎 井伊 次郎法師 の3人を出仕させております。」
「その3人なら問題はないだろう。この場に残せ。騒いだりしたら叩き出すがな。」
端の方にいた秀吉達3人は顔を硬らせながらも目を輝かせてこちらを見ていた。
「はぁ、殿がそういうならば。」
「全く殿の思いつきにはいつも驚かされますな!」
快活にそう言って笑うのは義堯だ。安房の英雄と呼ばれた彼は最近は内政などの文の力を強めている息子に期待しているようで毎日が楽しそうだ。
「体の悪い私の心も悪くさせるおつもりでしょうか。」
そう苦笑いしながら胡座を描きゆったりとしているのは山本勘助。関東大蜂起の際に城を次々に落とした事から白い目で見られていた昔とは違い皆に一目を置かれる軍師の一人だ。
「こういうことは今に始まった事にございませぬよ。」
そう最後に締めくくるのは真田源太郎の父 真田幸隆。言わずもがなだが先に紹介したメンバーに劣らない英雄の一人だ。
「さて、今回の議題は二ヶ月ほど後に起こるであろう下野の騒乱についての対応だ。詳しい話は光秀から既に聞いていると思うが3人が居るため軽く説明と確認をするぞ。
下野で那須と宇都宮がそう遠くないうちにぶつかるだろう。那須も宇都宮も関東大蜂起においてそこまで兵の被害を負ってない上に新たに得られた利益もないからな下からの突き上げが痛いのだろう。
それに宇都宮は内部分裂を収めるために外に目を向けさせなければいけない。となれば那須を狙うのは必然だ。ここまではいいな?」
軍師達はさもありなんと頷く。残った3人のうち井伊直虎だけ驚いているが他の二人はそうでもないようだ。真田源太郎は親から聞いていたのだろうが秀吉はどうしたのかな?あの人のいい雰囲気で皆から聞いたのかな?
「そこで我々は手出しをしない。」
「なるほど、どちらか弱った方の助けに応じてもう片方を潰すのですな。兵力で言えば宇都宮が勝つでしょう。そうなれば宇都宮を丸々手に入れて那須を傀儡にする形ですかな?」
そう、間髪入れずに答えたのは山本勘助だった。
「だと、いいがな。宇都宮は身代は大きいけれども中身はスカスカのバラバラだ。もし彼らが負けたとしたらどうする?」
「で、あるならば宇都宮を内部から破綻させる手伝いを今からしておきましょう。壬生氏3代当主であり、権謀術数を駆使して芳賀高経等の重臣を失脚させ、宇都宮家中で絶大な権力を有している 壬生綱房に下剋上するように風魔を使ってみては?」
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