第131話

 「師よ、我々は本隊を率いて鶴翼の陣で敵と正面からぶつかる。その間に朝比奈隊に別働隊3000をつけて側面から松平のみを狙わせるのだ。」


 「よき、お考えかと。」


 「では、我々は坂を下る勢いをそのまま利用して敵へと一気呵成に攻めかかるのだ。途中で止まることは許さぬ!いけい!」


  義元はすぐに決断を変え兵たちの士気が下がる前に織田松平勢力に向けて突撃を敢行した。織田勢力が約8500 松平が独自に3000の兵を動員して松平が左翼を任されていた。


 義元の号令の元各隊が坂を下っていく。義元はそこを狙い裏切り者の首を上げたものには望みの褒美をやると兵たちの士気を鼓舞させ全体で左翼に突撃を敢行させた。


 「うおおおお!首だあ!首を取れ!!!!」


 そこらかしこで恩賞を求めた農民達が突撃していく。その向かった先にはもちろん織田軍もいるのだが、そちら側には岡部や飯尾などの信頼できる将兵を配置し、守りを確実に固めて残りの雑兵を雪崩れ込ませている。


 「敵は未知の戦い方をしてくるわけでは無い!弱兵の織田軍に我々が負ける通りはないぞ!安心して攻めかかれ!」


 「しかり、我々が各々の役割を果たせば必ずや勝てまする。なにせ、義元様が指揮しておりますからな。」


 「くっくっくっ、それは皮肉か?それを言うなれば太原雪斎がいるからであろうよ。織田本隊に対する指揮は任せるぞ。我は少し前に出て松平にとどめを刺してくる。」


 「はっ、お気をつけください。」


 織田軍は統率が取れておりしっかりとしていたが松平勢力は数の圧力に徐々に押されて行って次々に打ち取られていった。その勢いのまま今川の勝利かと思われたが史実よりも兵が強化されており指揮官の能力も高い織田軍は激しく抵抗を重ねていた。しかし、ここで義元が用意しておいた別働隊の騎兵隊が側面から松平軍を強襲していた。


 「かかれー!かかれー!松平広忠の首をとれば褒美は思いのまま!この戦は勝てるぞ!」


 騎兵が突っ込み空けた穴から雑兵が雪崩れ込み乱戦の模様になった。


 「朝比奈隊が敵をバラバラにしてくれ!一気にここで攻め崩すのだ!脇目を降らずに向かえ!」


 ここで大勢が決した。松平勢3000が崩れたことにより戦線の圧力が低下、織田軍は大した被害も出てないが効果的な攻撃もできずに膠着していた。結果的に松平頼みだったため、松平が崩れた今となっては引くしか無くなった。


 「ちっ、此度の戦は負けだな。我は先に引いて戻る。お前達も順次戻ってこい。」


 信秀は早々に見切りをつけるととも周りを率いてさっさと戦場から離れてしまった。それをみた織田軍は各将の元、安祥城まで撤退した。


 今川が岡崎城を抑えて各将兵からの報告を聞いていた。


 「朝比奈が敵将松平広忠を討ち取ったそうだ。今から首を確かめる。」


 朝比奈が持ってきた首桶を除くと実際に広忠と思われるものがあった。


 「よし!良くやったな!これで三河は裏切り者の手から解放された事になる…!各国人集に書状を送れ!我々の庇護を求めるのか織田に着くのかはっきりとさせろ!」


 「はっ!」


 「師よ…少し頼みたい事があるのだが…」


 「わかっておりまする。寿桂尼様も通して働きかけてみます。それと可能であれば北条にも。」


 「うむ…」


 その後は三河の各国人集達が恭順の意を示してきておりそれらを受け入れ、人質として嫡男を今までのように駿河城下に送った。その後には岡崎城周辺を朝比奈と岡部に任せ、兵を5000ほど残した。

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