第130話
松平広忠と三河武士の強さは小勢力が乱立する東北や関東 中国地方であれば遺憾無く発揮できたであろうが場所が悪かった。横は山と海、地続きの場所は大勢力の今川と肥沃な大地を持ち人も多く集まり銭も作れる尾張、運がなかった。そうとしかいえないのだ。
「酒井忠次殿は松平領へと戻られたようです。信広殿は軍を用意し命令を待っておりまする。」
「うむ、では出陣の触れを出すのじゃ!目指すは岡崎城!我々の庇護を求める者達を助けに向かうのじゃ!敵は今川義元!東海道一の弓取りとはいえ北条に負けて落ち目になっている今川だ!恐れずに前へと進め!!!!」
信秀はすぐに軍をだし、第二次小豆坂の戦いへと発展したのだった。奇しくも形は史実の真反対となったのは一興だった。
「父上、我もこの戦に出たいぞ。」
信長が信秀を見送りに来ていた。
「駄目だ。お前には尾張にて留守を任せる。それに嫁も新しく貰うたのだゆっくりしておけ。」
「先程は舐めた演説をしておったようだが、今川は大敵ぞ?」
「わかっておるわ、あんなこと言わなければこちらの兵は及び腰になって前にすら進めなくなる。尾張の兵は飢えも誇りも特にないただの農民ばかりなのだ。」
「なるほどな、氏政のように自前の兵を用意できればな…」
「だな。北条軍は精強で鉄砲を使い無敗だそうだな。我々も銭はある、そろそろお前の兵も揃えても良い時期だ。留守の間に少し計画を考えておくが良い。」
「父上は銭を作り出せるからな。既に将は北条の軍学校に送って育てている、あとは銭で雇った兵を揃えるだけぞ?」
「ああ、お前が提案した奴か、北条のやり方を覚えられる上に将を育てさせられて連絡役にもなる。良い制度だがその分北条への依存度は上がるぞ?」
「別に大丈夫だと思うぞ?土地が隣接しているわけでもなく、我々は交易で互いに利益を出し合っているだけの関係だからな。それよりも兵は何人くらい用意しても良いのだ?」
「そうだな1000人までなら好きにするが良い。では、我はそろそろ向かうとする。留守を頼むぞ。」
「はっ!」
この頃には信長は初陣も済ませており、政務にも関わっていた。信秀が信長をどれほど重視して後継ぎにしようと鍛えていたかが分かる。
〜〜〜
今川義元は後方の兵も根こそぎ動員して小豆坂へと向かっていた。自分を大将として雪斎と朝比奈を副将にして訳1万5千で向かっていた。史実よりも兵が多いのはここ半年の北条のによる急速な経済的発展により人が集まり傭兵崩れの者や農民でも持て余している者たちを兵として利用したからだ。
「師よ、我々が羽ばたくための第一歩だ。負けるわけには行かぬ。任せるぞ。」
「はっ、おまかせあれ!」
義元は自身と雪斎を本体につけ1万の兵で小豆坂の上を占領。副将の朝比奈に残りの5千を任せて別働隊として動かさせていた。
「我が息子は武芸や軍略には秀でて居らぬ、それに決断力も低い、器量が無いのは傍目に見ても分かる。だがあいつは乱世で輝けないだけで内政などには光るものを持っている。3代目に繋ぐだけの力はあるのだ。だからこそ、我がしっかりして基盤を作ってやらねばならぬ…」
「ほほほ、父としての愛情ですかな。」
「どのような子だとしても我が子は可愛いものよ。駿河、三河は周りの敵も手強い者達ばかり、舵取りは必然的に難しいものになる。」
そして、願わくば師が生きているうちに天下を…
「殿!敵が見えました!敵は岡崎城前に布陣してこちらを待ち構えているようでございます!」
岡崎城を取られている以上こちらから坂を降りることもできずにいた。そしてあちら側もそれを理解しており信秀 信広の織田軍は陣を下げ様子を伺っていた。
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