第129話



 そして今川が今年初めに動いた。というのも三国同盟が成った事により力を集中運用することができたからだ。史実でもこの戦いは起こっていた。小豆坂の戦いというやつだな。これによって今川は三河の地盤を仮とは言え手に入れた。河東での失態を取り返した上に家臣たちの目を東から西に向けさせたのだ。その上不満も吹き飛ばしている。よくやるよ。


〜〜〜

 今川義元


 「聞けい!我が兵よ!我々はこれから裏切ろうとしている松平広忠を攻め我々の身を守るのだ!これは裏切り者を討伐するための正統なる戦である!各々奮起せよ!!!」


 義元の演説が終わると進軍が開始された。


 「殿、これならば大丈夫ですな。しかし、このような事を平気で実行なさるとは悪ですのう…」


 雪斎は自分の教え子が知恵を働かせながらも戦国大名とは切っては切り離せない悪どさを見せつけていた事に感慨深い気持ちを持っていた。


 「これも、師の教えがなせる事だな。口八丁手八丁というがまさにその通りだな。物はいいよう、受け取り方も人それぞれ。この戦国の世では付け込まれる方が悪いのだ。それに我々にはもう後がない。ここでコケれば今川は立ち行かなく成ってしまう。今川のこれからを決める重要な戦だなんとしても負けるわけにはいかぬのだ。」


 松平広忠が竹千代を送ると言って送ってこれなかった事実、そしてこちらに対する恭順を見せない事を理由に今川として松平は離反していると断定。あちらにどのような意志があろうともこちらがそう判断したのだから関係無いというように宣戦布告、進軍をしたのだった。


〜〜〜


松平広忠


 「殿!今川義元が駿河をたちこちらに侵攻を開始してきておりまする!」


 「くそ!こうなってはしょうがない…!我々は籠城の準備をするのだ!酒井忠次には織田への使者として向かわせろ!竹千代を人質にすることの追認と援軍を求めるのだ!」


 松平広忠はここにきて織田の属国となる事を承服しプライドを捨てて実利を取ろうとしていた。


 「それと本多忠高と榊原長政をそれぞれ将として3000の兵を動員するのだ!!!ここが踏ん張りどころぞ!我々が勝てば三河で優位に立てる!織田は信秀の元に集まっているとはいえ内部も一枚岩ではない。むしろここで頼みにする事で後々には独立への道が開けるのだ!」


 「「ははっ!」」


松平広忠はこれを受け、織田側につくことを表明 織田への恭順を示して援軍を派遣してもらう事に。


 「信秀殿には是非松平を助けて三河の安寧を保持していただきたい所存にございまする。これは我が殿 松平広忠様の嘘偽りのない心にございますれば、竹千代様はそのままそちらで預かって頂くことも吝かではございませぬ…。」


 酒井忠次は恥ずかしさと悔しさで顔を真っ赤にしそうになりながらもしっかりと手をつき頭を下げて織田信秀に援軍を頼んだ。三河を自力で守れず周りの大勢力に寄生し蝙蝠になりながらも守っていく。その事を織田信秀はおくびにも出さなかったが周りの家臣たちは信秀が居ない所でバカにした笑みを浮かべていたのだ。


 「あいわかった!任せられよ!我々は三河を見捨てぬぞ!」


 信秀殿から援軍の確約をもらった酒井忠次はすぐさま広忠の元に帰ろうと急足になるがその先には上裸で泥をつけた悪ガキのような男子がいた。織田殿の嫡男 うつけと呼ばれている 織田信長か?と思い一応礼を取って出て行こうとすると声をかけられた。


 「お主の名は?」


 まだ幼さは残るが大きな声で話しかけられ驚きながらも直ぐに返事を返す。なぜかそうしなければならないと思わせられたのだ。


 「はっ、松平広忠様配下の酒井忠次と申しまする。」


 「そうか、竹千代は我とよく遊び瓜を食っているぞ!それではな!」


 言いたいことだけ言ってさっさと去っていってしまった。嵐のような人だな…と思いながらも竹千代様が無丁な扱いをされては居ない事が分かりホッとした。それを伝えるためにきたのだろうか?と疑問に思いながらも殿に良い報告ができると先を急ぐのであった。

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