第124話

 そう言えば外交についてもそろそろ考えなければならないな。と氏政が考えているのは既に三ヶ月ほどが経ちある程度の平穏を取り戻した頃だった。関東では北条が主体となって関東大平野の急速な整備が行われていた。そして、そこに商売の目を見つけた商人達が周辺国からもわんさか集まっており空前の復興ブームがやってきていた。


 その効果は如実で街道整備を最近始めた佐竹でも恩恵があるほどだ。しかし、関所がある常陸と関所のない北条領では儲けることのできる利益が大きく違うことを実感した佐竹の商人が徐々に、確実に北条へと移籍していた。


 今はまだお抱え商人や両天秤にかける商人によって佐竹も持ち堪えるだろうが数年後どうなっているか見ものだなと氏政は考えていた。


 それを考慮するとまずは佐竹は放置でいいだろう。いくら経済的に侵攻を仕掛けているからといってこれ以上大きく動くことはできない。他のところに目を向けると宇都宮と那須だな。あちらはあちらで反目し合っておりいつ爆発してもおかしくない状態だが、すぐに爆発してもらっては困るのでここは内密に商人達に紛れ込ませた風魔を使って爆発の時期をずらさせるか。


 山内上杉に関しては放置だな。史実の通り上杉に逃げ込まれるとめんどくさいため監視はしておくが特にこちらから何もできない。というか基本的に北条は立て直したいから何もすることはないのだがな。


 長尾に関してはここから景虎が巻き返して越後を統一するはずだ。そこで内戦がバチバチに起きる。なんとか介入して景虎を暗殺したいが失敗して北条の仕業だとバレるのは避けたい。チラチラと軒猿と呼ばれる景虎の忍びもこちらに来ていることは報告に挙がっている。何もしないと言うことが1番ローリスクローリターンだな。


 次は武田だな。武田に関しては勝手にやってくれ、むしろもっと頑張って上杉とやり合えと願って食料や塩の支援をバンバン行なっている。武田からはめちゃくちゃ感謝されてラブコールのような手紙が何度も来ている。話を聞いていると史実通りに北信を狙うようだ。泥沼にハマってくれると言うならこちらから止める理由もないし頑張れと言って追加の支援をしておいた。


 最後に今川、最初のうちは商人をただ行き来させて北条の豊かさを宣伝して利益を貪って帰って来させているだけだが最近になって船も使って港を使用している。そうすることでこちらの安く大量の物資を流して民の消費を北条に依存させ始めている所だな。


 結局のところ関東に関しては放置 武田今川とは仲良くしようねって感じだな。これをこねくり回して親父に送っておこうと思ったが思い直し具体的にどうするべきかも書いておいた。俺個人としては東北にもそろそろ目を向けていくべきで、できれば会津の蘆名と交流を図るべきだと言うこと、織田 京都との交易を強化するべきだと言うことを書いておいた。


 書いてはいないが甲相駿三国同盟をするべきかどうかは迷っている。甲斐とは組んでもいいとは思う。しかし、今川は北条の下に誓約を行っているから同盟を組む必要もないとも考えているのだ。だから向こうがアクションを起こすまでは様子見になっている。


 こうやってまとめて考えると本当に受身の態度になってしまうなとうんざりするが、能動的に何かをしようにも準備が足りなさすぎる。今は耐える時だな。

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