第115話

 「では、まず小田原城内に作る案はどうでしょうか?我々が管理できる上に城内までは変な奴も入ってきにくいかと。」


 清水がまずは案を出す。


 「しかし、硝石を作るとなれば匂いが問題になりますし、鉄砲の方を作るならば鉄の供給が問題となりませぬか?」


 「なれば鉱山もおおく、周りからの侵入は困難な伊豆の山全体を硝石や武器の生産場としませぬか?河東を抑え小田原があり、港も整備された今ならば敵の忍びが入る方法は限られており、守りやすくもございます。また、我々の里も近くにありますので北条領内でも随一の安全性がございまする。」


 小太郎が伊豆一国を巨大な生産場にしようと提案してきた。


 「それは良い案に聞こえるが実現性はどうだ?」


 「実際山の中でもいくつかある鉱山の間に製鉄所を用意して武器を作り、山の中に硝石作りの山を盛り我々が管理すれば万が一にも敵が入ってもバレる可能性は低いかと。命令さえ頂ければ直ぐにでも可能となります。また、ここは湊や造船所が多いので海軍陸軍両方の武器庫となります。」


 「では、伊豆主要な農地以外にこれ以上増やすのはやめて武器生産所を作る。その分河東の残りの部分や武蔵の残りの部分に労力を振り分け農地を増やそう。それが終われば徐々に他の面も増やすぞ。」


 「はっ!」


 「次に残った房総について話し合いましょう。現在は房総への街道整備は主要な海に面した街や房総半島の先にある平野までの街道整備を終え、山は何も取り掛かっておりません。しかし、港は元々あったのでそこの拡張を行う事でガレオンなども入るようになっています。」


 「安房も山が多い、可能であれば伊豆を武器庫にした後に房総の山を第二の武器庫にするぞ。まずは検地を進めて縄張り図を用意しておけ。10年を目標にしていく。まずは3年で河東と武蔵をほぼ完璧に農地と街道を整備する。また、港に関しても拡張を終える。


 その後の5年間で上野と房総を終える。残りの2年で可能であれば下野と常陸方面を整える。これは敵が攻めてきても守り切れる基盤である上野と武蔵房総を纏められたらだ。」


 父 氏康が全員に方針を示してこの場を締める。


 「ははっ!」


〜〜〜


 俺は韮山城に戻り今までついてきてくれていた伊豆衆と直轄の配下達を集める。各責任者である武士達ばかりだが、各軍の中で隊を纏めるもの、つまり叩き上げの部隊長クラスの者もちらほらといる。


 「みな、此度は集まってくれて感謝する。先日、駿河からの侵攻を食い止め反撃をした事で北条の河東領は支配が盤石になったといえる。それは日頃から康虎の言うことを信じてこの地を守ろうと努力してきたおかげだ。是非誇りに思ってほしい。


 さて、ここで皆には重要なことを伝えねばならぬ。まず、私は今回増えた領地をここ河東のようにする為に上野に行くことになった。それに伴い直轄の配下である 光秀 幸隆 勘助 義堯は俺と共に上野に異動だ。康虎は俺の直轄から離れ上野下野常陸の軍を纏める軍団長となる。それに伴い政豊 義弘 時忠 利胤 胤貞も異動だ。逆に時茂 敏房 昌胤は残って貰わなければならない。


 ここに名前が出てきていないもの、直勝は海軍を纏めるために海軍長として働いてもらう。ちなみにだが、房総は綱成叔父上が、相模 伊豆 河東 武蔵は父氏康が治めることになる。今まで本当にありがとう。」


 俺は広間に集まってこちらを見てくれているのを一人一人見つめ返してしっかりと頭を下げた。この気持ちは本当の気持ちだ。ありがとうの気持ちしか出てこない。

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