第114話
今まで武蔵地域は隣の相模が整備され豊かになるのを横目に敵に対して警戒を続けなければならない苦しい立場だった。だからその発表を聞いて安堵したり喜んだりしているのが文官家臣の一部でチラホラと見える。
「また、房総や河東の港の整備も同時に行う。今回氏政が今川と戦いもぎ取ってきた利権である。港の自由利用と陸上の免税を最大限に活かせるようにするのだ。文官、特に経済担当はここがお主たちの戦場となる。気張れよ。」
「ははっ!」
「武官に対しての説明は後日発表する。何人かは武蔵上野下野常陸に対する新たな軍の役職につくことになるかも知れぬ。頼むぞ。」
この言葉によって広間での会議は終わり宴会へと突入していった。俺はまだまだ酒が飲めないのでさっさと早いうちに退散して次の日に行われる重臣会議に備えることにした。
次の日朝早くから父親に呼び出され義堯を仲間にした時のメンバーを引き連れながら父親の隣の席に座り込む。
「さて、これからの北条の道を決めようではないか。昨日も確認したがとりあえずは内政に力を入れる。詳しく意見があれば聞かせてくれ。」
「まずは街道の整備と領内の治安維持が最優先かと。」
多目が進言する。
「それよりも先に各村や田畑の整備を先にするべきです。数が把握しなければなりませぬし農作業の成果が出るのは後になります。後回しにすればするほど時間を無駄にしてしまうかと。」
これは笠原の意見。
「私の意見としましてはまずは今川との交易で経済力の強化をするべきです。なので港の整備を急ぎましょう。」
直勝が恐れずに意見をいう。
「私としましてはまずは武蔵上野の街道整備、街道が整った所から田畑や村の検知を行うべきかと。」
「海運はどうするのだ?」
「港を整備するのはもちろんですが、現在ある伊豆港と江戸、安房の分で賄えます。なのでどちらかといえば交易用のガレオンや戦艦用も揃えていきます。今は港よりも船の数を増やしましょう。そして、関東に日本各地のものを集めて日の本の中心をここに築きましょう。それが出来てからこれまで以上に外つ国と交易致しましょう。」
「ふむ、外つ国に関しては我々も解らぬことばかりだから理解は難しいが日の本の中心となるのは良いな。」
「はっ!」
「では、氏政には伊豆から上野・武蔵へ移し江戸及び海を担当してもらう。特に街道の整備を任せる。可能であれば北条と他の国の交易を任せる。康虎には下野常陸方面の軍を任せる。領土としては少ないが足りない分は武蔵から補わせる。内政に関しては文官に任せておけば良い。」
「ははっ!」
「そういえば馬はどうなっている?。賭博関係によって金の周りが加速している。身を破滅させる程のめり込む事は制度的に不可能になっている為問題にはなっていないが、夢中になっているものも多いそうだ。それに対する対策も組んでおけ。」
「はっ、馬に関しては競馬場が整い各牧場でも外国馬の種を孕み産まれた馬たちもいくつか出てきたようです。まだまだ数は多くないので走る頻度は土日のみになりますが年が経つほど競馬場も整備されて馬も増えて活気に溢れるでしょう。」
「楽しみにしておるぞ。軍に関してはどうなっている?」
「はっ、損耗自体は想定内ですが消耗品の消費が物凄く多いのでそちらが問題ですね。生産設備をこれまで以上に整える必要がありますが、秘密にしなければならないので早急に増やす事も難しい状況です。また、それに付随して新しく領土に加えた箇所に抑えの兵を置くため軍が分散しております。」
「なんとかしろ。考えて幾つかの案を出せ。その中から使えそうなものを考えてより良くしていこう。」
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