第113話

 北条氏康 氏政



 今回の関東大蜂起は結局上杉古河連合軍の敗北で終わった。結果としては北条軍がその後も上野の一部を実効支配し北条領に組み入れられた。しかし、平井や箕輪城は逃げ延びた上杉憲政が支配している。古河公方領と小田領は勘助が真っ先に押さえて、もとい粉々にしてくれたおかげで此方側になった。そして、その領土についての駆け引きを佐竹と行わなければならない。


 「今回の論功行賞を行う!戦で活躍した主だった武官に感状を送るとともに俸給とは別に特別俸禄を支給する。また、特に活躍していた将、三井虎高!彼は北条に縁もゆかりもない男にもかかわらず、我が息子氏政に付き従い北条家に多大なる貢献をしてくれた!その働きは河東からずっと続くものである!私はこの男を父 氏綱が我が弟 綱成としたように氏政の弟にしようと思う!年は離れているが第二の綱成となってくれることだろう!」


 広間に集まっている諸将からどよめきが起きる。それくらい大きな出来事なのだ。俺も自分の配下がそれほど評価されて鼻が高い。虎高をチラリと見ると無表情だった。喜んでいないのか?


 「大変嬉しい申し出で御座いますが私は氏政様に惚れ込みついてきた男にございますれば、その申し出は某の一存で決められることにはございませぬ。」


 そう言って頭を深々と下げた。周りからは罵声が飛び交うかと思えば、父上の出す威圧感などに圧倒されその場の雰囲気が一気に重苦しくなったことでうんともすんとも声が出なかった。はぁ、手助けをするか。


 「横から失礼致します。虎高よ、俺はお前が綱成叔父上のように俺を支えてくれることを期待している。それに北条家全体にお前が入るくらい認められていることも嬉しいのだ。是非とも義兄弟として俺を助けてくれ。」


 「ははっ!不躾で申し訳ないですが今回の申し出、やはり受け入れさせていただけませぬか?」


 父氏康は雰囲気を緩めると


 「当たり前であろう。むしろ、氏政に対する絶対の忠誠を感じられて俺は感動まで覚えたぞ。やはり、お前のような忠義溢れて能力もある男が氏政に付いている事で安心しているのだ。これからも頼むぞ。」


 「ははっ!」


 「お主にはすでに妻がおるからの、虎高をワシの養子にする。これからは北条康虎と名乗ると良い。次は…」


 色々と続いたが他は感状と俸禄の発表のみとなった。というのも、基本的には領土などが増えたとしても個人には分配されずに俸禄が増えるという形だからだ。それにここでは発表されずとも戦場で活躍したものは順次職位が上がっていく。


 例えば今まで虎高 光秀 幸隆 義堯などは俺の直轄軍である伊豆軍団の中での軍団長だった。しかし、これからは北条家全体として軍を率いれる立場になる。つまり、相模や武蔵、安房の軍を纏められる立場になる。

 他にも政豊や義弘、正木兄弟なども繰り上げで氏政直轄下の軍団長を行えるようになる。簡単に言えば地方軍の団長と全体の軍団長の違いだな。


 それに、この場で名前を発表され個々に戦功を褒められる事は名誉であり北条家でも一目が置かれるようになる。俺は北条家全体としては褒美を出せないのでこの論功行賞の後に俺直下の配下達に論功行賞を行うつもりだ。


 「さて、粗方終わった所でこれからの北条の動きについて説明する。現在我が領土として由比寺尾以東の河東地域、伊豆 相模 武蔵が既に整備されている状況だ。由比寺尾はまだまだ荒削りだがそれほど手間をかけずに整備が終わるだろう。なので残りの房総 常陸霞ヶ浦以南と上野と下野の一部を整備していく必要がある。その手始めとして今まで敵の侵攻を恐れて進めていなかった街道整備を 武蔵全域と房総から河越まで、河越から忍までを整備して領内の利便性を上げる。」

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