第112話
北条氏康
「殿!敵の援軍は氏政様が蹴散らしたようにございます!しかし、橋は敵に利用されない為に破壊しており簡単には戻れない状況です。」
「分かった。なれば我々はこのまま隊を分けて上野を抑える部隊と各方面に追討する部隊を再編成、敵軍が野盗にならぬようにしっかりと各村やその周りの森などを見回れ!特に上杉憲政はなんとしても見つけ出せ!生死は問わん!」
「「ははっ!!」」
西は冨岡 安中、北は沼田 東は館林まで氏康軍本隊で抑える事になる。ここを抑えれば関東の6割以上を抑えることになる。そうすれば後は時間の問題だ。こちらの内政を盛り立てて行く事で周りから人が集まる。人が集まれば敵の経済力や武力を少しずつ、だが確実に削り奪ってくる。最後には何をせずとも我々の勝ちだ。それを免れる為に行動を起こそうにも我々の方が総兵力は上だ。
「氏政には上野への援軍よりも古河、小田側を抑えるように伝令を出せ。それと相模から米や黒鍬、参加型労役に来てくれる民達を連れて上野への道を整備!それと事前に決めておいた上野開発計画に沿って移住希望の民を連れて来い!」
ここからが大事だな。氏政には上野と下野の一部を任せるとしよう。それと海側の開発についてだな。残りの伊豆 河東 相模 武蔵 房総半島は北条本家直轄にして今回増えたり最近育ってきた文官たちに統治の練習をさせながら内政で地盤固めをしなければ…
「氏康様!各隊出発しております!既にここに留まる意味は少ないかと!」
「よし!怪我人を連れてゆっくりと周りを捜索しながら河越城へと向かう!行くぞ!」
〜〜〜
山本勘助
時は少し遡り古河公方勢力が古河を出発して戻れない距離まで行った頃、山本勘助率いる房総衆2000ほどは大砲を馬で引きながら小田城へと向かっていた。
「このまま小田 結城 小山 古河 唐沢山へと向かって落として制圧して行く。各城を落とした後は300ずつ兵を残して行くぞ。我々が動くのが早く確実であるほど本隊である氏政様の負担が減り関東の制圧が進む。」
虎高の軍はカブいているものが多く騒がしいイメージだが、幸隆の軍などは割と普通なくらいのイメージだ。しかし、勘助の軍はどちらかと言うと風魔のような静かにしかし厳かに進む様子だった。特に述べることはないが大砲を使って敵の城門や城をボロボロに破壊して制圧していった。その途中で各村に寄ったが特に何もせずに次の城や砦を落としていった。
民にとっては上が誰になろうとあまり変わりがないので落武者でもない限り民達は何もしてこない。むしろ怯えているくらいだ。我々は彼らに何かすることはない。それは後にくる後方支援部隊がなんとかするだろうと割り切る。人の情がない訳では無いが我々にはやるべきことがあるのだ。
敵の本城である古河城に向かう頃には本隊の戦の様子も伝わってきていた。上杉山内上杉家は氏康様本隊に敗北、佐竹古河公方連合軍は氏政様によって半壊状態。しかし、佐竹は被害をうまく避けて小田領や鹿島領土を通って佐竹領土に帰ろうとしているらしい。
ここで他の城を落としに北上するのは戦線を長くして兵を分散させる愚策だと判断して古河城を睨むだけにして他の兵を制圧した城の援軍へと回した。折角に落とした城を佐竹に火事場泥棒されるのは癪な上に、佐竹の話を聞いている限り常陸の領土への野心は大きように感じる。これは小田領を抑えておくことで佐竹への牽制になるかも知れぬと考えた結果だ。
この判断のせいで古河領土をさっさと制圧できずに下野の領主たちを自領に戻してしまう可能性は高まったが、そのまま制圧して抑えの兵を残していてもしっかりと彼らを抑え込めたかは怪しかったため問題はないと勘助は断言できるほどだった。
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