第55話

「今川義元様渡河に成功!その後に敵の別働隊によって襲撃され窮地に陥っておりまする!義元様が一撃だけ手助けをと!!!雪斎殿にはこの場を離れるなどの伝言もございまする!」


「なにい!!!わかった!岡部元信隊500を送らせる!残った騎馬は全て使え!!!なんとしても殿をお守りするのじゃ!我らは蒲原城からさらに後詰が来ないように攻略を開始する!」


苦渋の決断じゃ、全体で救援に行きたいのは山々じゃがそれでは敵の思う壺じゃ、義元様なら横合いからの手が有れば持ち直せるはずじゃ、こちらは相手の読みを外すように動くべきじゃ。


「臭水隊!投擲準備!!!!蒲原城の敵に目にものを見せてやれ!!!」


臭水、現代では石油と呼ばれるそれは静岡県相良で採取されているものだ。義元も雪斎は蒲原城を攻めるに当たって何か奇天烈な相手の度肝を抜くような武器が無ければ攻略もしくは抑えが難しいと考えた。


その時に考えたのが攻城兵器だ。だが近づかなければいけない点で相手の天雷の武器によってやられてしまう。遠距離からできる攻撃は何か、、火攻めである。三国志にも出てくる伝統的な攻撃方法だ。


簡単な火矢では相手の硬い漆喰と瓦で作られた城はびくともしないだろう。それを攻略する為に相良にある地獄の火を生み出すという臭水を取り寄せ使いやすいように改良を重ねた。


その結果、中くらいのツボに半分ほど臭水をそして口から布を出し火をつけ、投げ入れるという臭水攻めを思いつく。水をかけても消えないその火はまさに地獄の業火でありいくら燃えづらい城といっても混乱確実、またいつかは木の部分に引火、もしくは周りの木に炎上するだろうという非情な判断を含んだ武器である。





 「順次投げ入れるのじゃ!投げ入れ終わるまでは敵の騎馬隊を近づけさせるなよ!盾隊前面に出て相手の矢を防げ!弓隊は相手の騎馬隊を追い払うのじゃ!方円の陣を組むのだ!」


 雪斎は即席の陣地を作り上げ敵の兵器であろう設置場所に向けて可能な限り投げ入れさせる。勿論櫓や確実に木材とわかる場所にもだ。


 「第一に門を狙え!引火したら櫓!そしてその奥にある兵が集まる場所を狙え!あそこに天雷の武器があるぞ!」


 朝比奈泰朝が臭水隊を率いて蒲原城攻略を始める。それを横目に雪斎は素早く頭の中で計算する。最低三の丸であろう場所を抑えることさえできれば天雷の武器は使いづらくなる。そうなれば我らは自由に動けるようになる。


 義元様への援軍を送るのはその後じゃ。先ほどから来る伝令によれば義元様は岡部の突撃により本隊を立て直し敵の騎馬隊を追い返したそうじゃな。むしろ我らは後方からの敵の突撃を警戒する方が良い。


「朝比奈に後方を警戒するように指示を!我らは門が焼け切った後に城内へ突撃する!」


臭水を投げかけ燃やしていると伝令がやってきて殿が敵を追い返しこちらに向かっていると知らせてきた。やはり、相手は精密な狙いができないようで近づくのも正解だったらしい。

殿がくるまでに三の丸は落としたいな。


「雪斎殿!門の片方が焼け落ちました!」


「よし!では乱戦の用意!手柄を立てよ!突撃!」


朝比奈泰朝を先頭に門へと向かって一斉に駆け出す。しかしその時!相手の城壁から黒い棒のようなものが一斉に出てきてこちらを狙う!

指示を出すよりも先に相手の行動が早かった。


ダンッ!ダンッ!ダンッ!


黒い棒から煙と火が吹き出しこちらの兵がどんどんと倒れていく。これが噂に聞く本当の天雷の武器か!!!盾持ちもなすすべなく、甲冑も意味なくどんどんとこちらの兵がやられ、地に倒れ伏していく。この距離だとこちらの声も届かないほどの音量で騎馬も暴れ始める。


朝比奈泰朝はすぐに事態を悟ったのだろう突っ込ませる事なく射程から外れようと一目さんに撤退を行う。


「申し訳ございません!失敗いたしました。」


「いや、今のはしょうがないじゃろう。思った以上に守りが硬いのう。だがこの距離ならば天雷の武器は両方とも使えぬようじゃ。義元様の指示を仰ぐ為にもここで陣を作るぞ。」


「はっ!」


簡易的に半包囲を組み上げこちらから投石や弓矢を射掛けさせるがあまり効果は無いようだ。城壁の奥がどうなっているかはわからないが城壁の隙間から敵が慌てずにこちらを見ているのがわかる。


だが、臭水の攻撃でこちらはいつでも門の中を目指せるし、櫓も壊せた為一方的に攻撃されることもない。被害は大きかったが目標は達成できた。この戦、骨が折れるのう。


全体10000→8500

後方

今川義元本隊2000→1800

鵜殿隊1000→800


中陣

太原雪斎隊3000→2700

飯尾隊1000→800


先陣

岡部元信隊1500→1200

朝比奈泰朝隊1500→1200

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