第17話

ある程度形になるまで側近と蒲原城に詰めて築城を進めていたところ、小太郎が朝廷に献上品を届けてからスカウトをして戻ってきてくれていたのだ。


 「お久しぶりです。無事に任務を遂行してまいりました。献上品を渡すにあたって先に人員確保をいたしまして、光秀殿に献上していただきました。その際に帝が無欲の献身と関東の一部であれ帝の子供[ここでは民]を大事にしてくれている事に大層感動され、氏康様と若殿に官位を与えたいと仰っております。松千代丸様には従五位下伊豆守、氏康様には従五位上相模守と。どちらかと言えば若殿に渡す為に氏康様の官位を、といった形でございまする。」


「それはいい判断だった。小太郎が悪い訳ではないが、素破を卑しむ者も多いし、何よりお前は裏の人間だからな。あまり表には出ない方がいい。それに官位か…。あまり目立ちたくは無かったが、しょうがないな。ありがたくいただこう。それでこの二人が?」


 「はっ!こちらの方が明智光秀殿、こちらが恵瓊殿です。」


 「「お引き立てのほどよろしくお願い申し上げます。」」


 「うむ、見ての通りまだまだ小童ではあるが、北条の豊かさを日の本に広げて皆を笑顔にする為に頑張っておる。是非とも力を奮って欲しい。」


 「「はっ!」」


「では、それぞれ一応自己紹介と聞きたいことや尋ねたいことが有れば言ってくれ。」


「私は美濃の明智荘からきた明智十兵衛光秀といいます。歳は19歳です。得意としていることは交渉や戦略です。個人として武を見せることは好きではありませんが、不得意ではございません。この身御随意に。」


「光秀、これからは俺の付き人兼軍師衆の一人とする。俺の予定の管理や外交などさまざまな事をこなしてもらう。【イメージ的には秘書】では、次は恵瓊。」


「はい!恵瓊です!歳は6歳です!頑張ります!」


「うん!俺とも友達になってくれ!よろしくな!それと恵瓊は日吉丸と共に学校に行ってもらい、成長した先で頑張って欲しい!」


目をキラキラさせながら頑張るぞ!っと意気込みを感じる。


「光秀には来て早々に悪いが、うちの軍について知ってもらうことが多い為、すぐにでも虎高の側で軍について学んでくれ。その後は水軍について直勝に、最後に勘助から本当の軍略について学んで切磋琢磨してくれ。」


「はっ!」


これで最低限の武将数は揃ったかな?河東に虎高を大将として、副将兼軍師として光秀を置いておこう。


そして、里見攻めには直勝、勘助、俺、幸隆。 

俺がうまく立ち回れば河東は北条領として編入できる予定だ。


そしたら現代で言う千葉県に移動して民心を慰撫しながら河越夜戦に備えられる。それに小太郎が戻ってきた事で来年までに幸隆と風魔での調略を始められる。桶狭間が始まるまでに関東の支配を終わらせたい。


時間との勝負になるな。


「よし!では今日も頑張ろう!」


俺はその後に小太郎と幸隆、光秀を夜船に呼び出した。最近は陸上生活をしているが、船の方が密談にはもってこいだろう。


「3人ともよくきてくれた。今日は調略や謀略についての話がしたかった。光秀には俺の付き人として取り次ぎなどが必要になる為来てもらっている。


 調略と謀略は幸隆が考え主導しろ。そして風魔はそれを伝える為に動いてくれ。

俺が頼みたいのは今従属している千葉氏を傘下にまとめる為に、その配下の原親子を利用して領地を北条に差し向けるようにして欲しいのだ。


 俺は来年安房を攻め取る。その流れに任せて北条に臣従して家臣として働いていくしかないという流れにさせろ。


 原親子には主君千葉と同じ立場で北条で働けるとでも言えばいい。その上で安房の統治を任せてもいいなど言えばいい。今も千葉家内を実効支配をしていて親北条であるのは明白だ。ここを取り込めたら千葉は全体としてその流れになる。」


「はっ!しかし、安房を任せるなどと勝手に決めてもよろしいのでしょうか?」


「任せるとしても内政官としてかもしれんし、武官としてかもしれん。安房の部隊を率いる立場でも安房を任せるという言葉には間違いがないだろ?」


「なるほど、たしかに間違っておりませぬな。それに、北条の下であれば千葉も原も同じ武官文官でございまするな。」


幸隆や光秀はやはり頭の回転が早い。すぐに気がついたようだ。


「では、取りかかってくれ。もし他にもこうしたい、ああしたいと思い付いたら、すぐに俺に報告してくれ。可能であればやってもらおう。」

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