第18話
1543年末。何度か今川勢が威力偵察をしてきたが、悉く追い払った。特に有効だったのが弓部隊と弩部隊の混合攻撃だ。
弩部隊は農民を動員して撃たせる練習だけさせた。勿論蒲原の農兵ではなく、興国寺や吉原の農民だ。今川への恩があると撃ちづらいかもしれないからな。
彼らには米を与えて敵が来る度に準備させていた為そこまで不満は出なかった。そして、元々の弓部隊である。常備兵は全ての状況に対応できるように弓、槍、刀と練習させている為、弓を全体で曲射させた。
正面を警戒して盾を構えているところに、遅れて上から弓矢が降ってくる事で相手に大きな被害を出して攻めさせなかった。
だが何度かすると盾を増やし、上と正面の防御を硬くしてきたので固まっているところに向けてトレビュシェットでの投石だ。
回収が難しいものは投石せずに、両手で持てるほどの大きさの石をばら撒いた。こうする事で後で再利用しやすく土地を荒らさずに済む。
こうしているうちに農繁期などを挟んだ為、築城がなんとか間に合い、ある程度は形になった為、兵を丸々残して虎高と光秀に任せて撤退した。
兵もこの一年で増員して、
河東
蒲原城1500
興国寺城500
吉原城500
長久保城1500
の常備兵を用意した。そして、韮山では鉄砲を量産して鉄砲衆を増やしている最中だ。フランキ砲は少しずつだが、増やして蒲原や下田、土肥、小田原に順次設置中だ。河越城には奪われたりすることを考えると設置できないし、道も整備されていない。
伊豆部隊も増えた。
韮山城3000 黒鍬衆700 鉄砲衆(練兵中)300
下田城1500
高谷城1000
丸山城1000
これだけあれば1544年の里見攻め、1545年の今川武田戦、1546年の河越城救出にも間に合うだろう。
それに船も用意できた。ガレオン船だ。こいつは虎の子の部隊だ。里見攻めと今川撃退に役立ってもらう。
1544年の間は河東の常備兵と増やした黒鍬部隊200を使って御殿場と羽鮒に砦のような簡単な市場を築いて、蒲原、長久保、吉原に繋がるように道を敷設した。これで山川や井出から武田が来ても即座に反応できる。
勿論吉原と興国寺の両方とも農閑期に農民を集めて強化をそれぞれ施してある。守るための城というよりは、蔵などを増やして武具や兵糧を置いておくための中間補給基地の役割が大きい。
伊豆の方では、伊豆の山奥に風魔直轄の練兵場兼秘密生産所を点在させた。そのうちのいくつかは鉄砲衆の練習場所として活用している。
相模の方に目を向けてみると、父は城を落とし着々と領土を広げている。その中でも安定し始めた小田原から江戸、三崎や玉縄に道を繋げている。それに江戸の港を拡張して江戸、三崎、下田間の海路をより活かそうとしている。
実際、伊豆や河東で余った分の米を前線に送るのにキャラベル船を使っている。土肥から尾張までにも使っているため、少しずつだが確実に日本中に北条の名前が広がっており、ポルトガル船も何度か来ている。
今年からは船を使って堺に乗り込み、京へと献上品を運んでいる。前年、朝廷以外にも近衛家、後の近衛前久殿に個人的に献上品や献金を渡しているため、そこを通して帝に献上品を直接届けてもらった。キャラベル船が大活躍だな。
そして、幸隆に任せておいた千葉の件だが、想像以上にうまく行きそうだ。原親子は幸隆の提案である千葉をまとめる立場[俺たちからするとただの纏め役で土地などは一切合切渡さない。]を大層欲しがっているようで、北条の言う通りにするから地位を確約してくれとせがんで来た。
だから、真里谷が攻められた時に救援に行く事、俺たちの統治方法を受け入れ従うことを前提に、北条での地位を親父に相談してやると返事はしておいた。
元々親父は千葉に娘を嫁がせて吸収するつもりだったらしいが、内部分裂を起こして一配下として扱えるならそちらでいいと許可もくれたし、結果は上々だろう。
真里谷が攻められた時にギリギリまで待機しておけば原親子の力も削ぐことができる。そこで不満を溜めさせ、北条の統治で民心を慰撫する。そうすれば領民は千葉ではなく、北条を受け入れるようになるだろう。
そのための農具や文官、ここでは伊豆衆だな。あいつらを動かす用意をしている。笠原を房総(上総・下総・安房)の統治文官の纏め役として連れていき、清水を伊豆に残す。戦争はどう終わらせるかではなく、終わらせた後にどうするかが重要だ。
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