第9話

1541年末。増えた石高を利用して今は伊豆の軍を増やす予定だ。できれば完璧な兵農分離をした兵を用意したいが、それは今の財力では厳しいため完璧な農業従事者にも一応訓練をつける。

 そしてそれとは別に常備兵に分ける。そして、農兵はこちらから米を支給して訓練する日を週に2日、それぞれランダムに取り、そのうち戦闘訓練だけではなく座学の時間も作る。

 そこではこれから北条での生活がどうなっていくか、そのために必要な算学や知識を教える。学校も用意する。それとは別に子供達に現代でもあったようなしっかりとした学校を用意する。

 そこでは職業訓練のように鍛冶や木工、事務など様々な経験を積ませて、成績優秀な者は取り立てたり、望むのなら軍学についても学ばせる。

 今は道の整備も楽市楽座も行っていないため米で雇っているが、後々に銭雇いに変えるつもりの常備兵達は通常常備兵と専門常備兵に分ける。黒鍬衆などを専門常備兵とする。これからは鉄砲衆などを設立予定だ。


 そして軍備がこうなる。


伊豆18万石 4500


本城

韮山城1500 通常常備兵1000 黒鍬衆500

長久保城1500 通常常備兵1500


支城[砦]

下田城500 通常常備兵500

高谷城500 通常常備兵500

丸山城500 通常常備兵500


河東1500

興国寺城500 農民500

吉原城1000 農民1000


 うん、一応の形は整ったな。今年のうちに将を集めて、43年に三河で信秀と義元がバチバチにやりあうのを横目に蒲原城を築城するか。

 この期間は信玄がクーデターで乗っ取りを行い、信濃を電撃で落とす為、こっちに構う余裕はないはずだ。うん、一応後で風魔を通じて信玄に戦うつもりはないよってことを伝えとくか。何気に北条が大人しくしてる間に、武田と今川は忙しいんだよね。ここを使おう。


 それと、織田信秀にガレー船ではなく、普通の和船を使って連絡を入れておこう。三河で花見を楽しむときはこちらも富士を見に行こうと思います。そういえば嫡男の才覚があふれているとお聞きします。是非とも仲良くしてくださいっとな。


 うん、こんな感じでいいな。河東地域をガチガチに固めて実効支配しよう。


 長久保で富士吉田城を牽制する。そして睨みながらも建築予定の蒲原城にすぐに兵を派兵できるようにしておこう。井出と御殿場にも支城の建築だな。あそこは平野部だからできれば田畑を増やしたい。御殿場を開拓できれば伊豆はより大きくなれる。35万石は見込める。

 それに井出と興国寺や蒲原をまとめれば25万石はいける。うーん60万石有れば今川義元か武田信玄とタイマン張れるくらいの兵力ではあるが軍を動かす腕や兵士の質がなあ。やっぱりまだ力を蓄えなければいけないな。


 よし!資料も纏めたし、父上との面会に行くか!


 「父上、お久しぶりでございまする」


 「うむ、息災で何よりだ。さて、今回は嫡男としてではなく、韮山城城主として会いにきたと聞いたが?」


父の雰囲気は戦国大名としての威厳にあふれたものに豹変する。俺も伊豆衆などをまとめて経験を積んだといえども、まだまだ敵わないことを思い知らされる。


 「はっ、本日は今年の伊豆での収穫を纏めたものを持ってまいりました。それと軍備拡張をするつもりですので、その軍制について纏めました。それと伊豆で行った政策の効果を纏めました。来年からは関所での税の撤廃と楽市楽座の試行をする予定でございまする。」


 北条氏康、北条綱成、軍師の多目が俺の報告書とこれからの予定を見て品定めをする。


 「ふむ、いいのではないか。実際に結果も出ており、相模の領地でも実践させてみても良いものが多い。特に道と伝馬制は既にやっているしな。」


 「俺はこの軍制度が好きだな。月に1度とかではなく週に2日も集中して練兵ができるのは強い兵を作ることにつながるし、米を支給していることで有事の際にも出陣し続けられる。

 ここに書いてある常備兵が農繁期に出兵できるのは強みとなるだろう。黒鍬衆以外にも専門常備兵というのも増やすつもりみたいだから楽しみだ。」


 「それと、これは報告に載せられないお話なのですが、私の配下が調べた所、甲斐で下克上の動きがあるみたいです。

 その後に信濃に侵攻する予定だとか。そして尾張の織田信秀が今川義元に向けて三河制圧のために出兵する予定で、既に先遣隊が戦いを始めております。

 ですので河東地域を完全に収めるためにも蒲原に本城となる城を築きたいと思っておりまする。

 それに合わせて井出と御殿場に支城を築き、道をつなげる許可をいただけませぬか?費用についてはもちろん伊豆で負担させていただきまする。」


「築城中の防備はどうされます?」


 多目が探るようにこちらに聞いてくる。


 「築城をするのは基本的に黒鍬衆が行いまする。工法や早く組み立てるための工夫もする予定でございまする。そして道が整備されていることで、黒鍬衆500で耐えている間に援軍が間に合う予定でございまする。」


 「ならば何も申すことはございませぬな。」


「とりあえずは今年1年で準備をする予定でございまする。」


  「よし、では成果を期待しているぞ」


  「それとは別にお願いがございまする。我が領内でできた酒や椎茸などを持って、朝廷に献上しに行きたいと考えておりまする。その時に私も行ってもよろしいでしょうか?と言っても、京まで行くわけではなく、尾張まで行って織田信秀殿との会談を行いたいと考えておりまする。」


「流石にそれは…」


 「ふむ、土肥から熱田までか。それならば大したこともないか、いいであろう。その代わり熱田以外に行くことを禁じる。供回りは必ずつけること。いいな?」


 「直勝と小太郎、それに今勧誘している武将を供回りとして連れていきたいと考えております。そして、不躾なお願いでございますが、富永直勝を与力ではなく、私の直臣とさせていただけませぬか?直勝の承諾も得ておりまする。」


 「いいだろう。どうせお前が当主になれば全てそちのものだがな。あと伊豆衆をまとめ上げたらしいじゃないか。伊豆衆も直臣にしておこう。」


 「ありがたき幸せ!」

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