第28話 戦闘試験2
俺とナショスさんとの試合が終わり、ナショスさんを医務室に運んでいる時にふと王様の方を見てみると王様の横で力一杯手を振っているリーン姉様が居た。
リーン姉様、王様とも仲がいいのね…
ナショスさんを医務室まで運び、控え室に戻った。
スーパーモデルのモナード・レイさんも居た。
「おかえり、すごい試合でしたね!」
「いえ、レイさんほどでは」
「何言いってるんですかあんな戦闘、私にはできませんよ!」
「それに… その子も…」
俺が抱きかかえているむーちゃんを見て急に真剣な顔をした。
「おかげでうちのベンちゃんもすっかり委縮しちゃって…」
たしかにいつもむーちゃんを見下していたレイさんの守護霊、ベンちゃんはこっちを見ようとしない。
「たまたまですよ~」
「たまたまね… 私にはその子は只ならぬ者に感じるけど」
「大丈夫ですよ~ 大人しい子ですから、それでは次があるのでこれで」
場が持ちそうになったので離れて次の試合を見に行った。
次の試合が一次試合の最後の組だ。
「第四試合、ガーライム・レグナム殿とイーナ・ダラス殿」
「初め!」
ガーライムさんは人間だが鍛えられた肉体で真っ黒に日焼けしたような肌をしている見かけ渋いおじさまだ。
左手に剣を持っているが普通に剣ではないようで銃と一体になった物に見える。
その横には黒い豹が居るのであれが守護霊だろう。
対するイーナさんは猫耳の猫人だ。
お尻まで伸びた長髪がキラキラした茶色の髪で頭にはピコッと可愛い耳が生えていてなかなかの美猫だ。
尻尾も細く長く複雑に動いている。
守護霊は見えないがむーちゃんの知り合いで亀の守護霊はまだ見ていないからおそらくは彼女の守護霊と思われる。
猫と亀はあまり似合っているとは思えないが能力が合えば強力なコンビになるから何とも言えないな。
ガーライムさんが銃剣の銃をイーナさんに向ける。
「守護霊は出さないのか?」
イーナさんの守護霊が見えずおびき出そうとしているのだろうか。
「どうかにゃ~」
おお、猫語だ!
ヒュ!
イーナさんが突然消えた。
それと同時にガーライムさんが後ろにスッと動いた。
瞬間、ガーライムさんが居た所にイーナさんが現れた。
「ヴゃ!」
「縮地か」
「縮地を避けるとはやるのにゃ~」
「縮地は出口が決まっているからな、1対1で消えて現れるなら自分が居る所と決まっている。しかるにそこに居なければ攻撃を受ける事はない」
おお、そんな回避方法が!
でも複数の出口を選択できるリーン姉様にはその手は通じないな。
「ではこちらも行くぞ、ヒューマ!」
ガーライムさんの近くに居た黒豹が黒い霧に変わっていく。
「にゃー、色黒なのに黒い霧なんて見え難いにゃーずるいにゃー」
黒い霧はそれほど濃くはなかったがガーライムさんの姿は見えなくなった。
ただ見え難くなるものではないようだ。
「こんな事なら日焼けサロンで黒くしておくんだったにゃー」
いやいや、黒くなればいいというものではないだろう。
… 見えまい …
「うーん、しょうがないにゃー」
イーナさんが目を閉じた。
「ここかな?」
イーナさんが左側に短剣を振った。
「ぐぁあ!」
声と共にガーライムさんが現れた。
左腕を切られていた。
「おー、当たったにゃー!」
「く、なぜわかった…」
「内緒!」
イーナさんが追撃をする。
銃剣で防ぐガーライムさん。
すかさず銃剣の銃を連発する。
パパパパンッ!
機関銃ように早い連射でイーナさんを撃った。
あれでは避けようがないか…
「びっくりしたにゃ~」
「! それがお前の守護霊か?」
「おじさん強いにゃ~ じじいが出て来ないといけないなんて」
イーナさんの前、亀が居た。
やはり、イーナさんの守護霊がむーちゃんの知り合いの亀らしい。
… 油断しすぎじゃよ子猫 …
「子猫言うなにゃ!]
… 私からすれば何歳になろうが子猫は子猫じゃ …
「あ~、続きをしてもいいだろうか?」
「おっと、ごめんね~ おじさん~」
「それと私はおじさんでは、ない!」
銃剣を振り下ろしながら抗議している。
俺から見ても立派なおじさんに見えるが何歳なんだガーライムさん。
「え~、どっから見てもおじさんにゃ~渋いにゃ~」
イーナさんまんざらでもないらしい。老け専か?
「わたしは、まだ!37だ!!」
・・・ いや、おじさんだろ?
「立派なおじさんにゃ!」
小器用に攻撃を避けるイーナさん。
「ちょこまかと!」
ジャキン!
銃剣を地面に突き立てた。
すると黒い霧になっていたヒューマが小さい黒豹になって数体現れた。
そのままガーライムさんの周りを取り囲むように浮いている。
「これは避けれまい」
小さい黒豹がガーライムさんの持っている銃剣と同じ形に変化した。
「あ、これはやばいにゃ」
「もう遅い!」
無数の銃剣が火を噴いてイーナさんを撃った。
ギギーン!!
「なに!!!」
ガーライムさんの攻撃は弾かれ、それだけでなく弾いた弾がガーライムさんの右太腿に当たりゲージが減った。
イーナさんを見ると全身緑色のライダースーツみたいな服を着ていた。
全体に六角形の模様が入っている。
さっきまでは革製の服だったのに。
あれも守護霊の力なのだろうか?
… ああなってはガーライム殿の攻撃は通じまい …
… むーちゃん知ってるんだ? …
… うむ、あれはあやつの得意な技だな契約者を自身の体を変化させ鎧として守るのだ …
… あの亀さんの? …
… そうあやつは見かけ通りに防御に特化している …
… だた、装備した物は動くに制限がかかり遅くなる …
… 亀だけに・・・ …
… そうだな・・・ 故にいままで守護契約などしなかったはずだが …
… 余程あの猫娘が気に入ったらしい …
「そ、それはまさか、玄武の鎧か⁉」
「さすがおじさんにゃ!よく知ってたにゃ、さすおじ!」
猫だけに仕草がかわいいな。
「おじさんではないと言っているだろう!」
銃剣をイーナさんに向かい振った。
その後ろからヒューマが襲い掛かっている。
ギャキーン!
全て弾かれ効いていないようだ。
それどころか…
パキィ!
ガーライムさんの銃剣が折れてしまった。
「むぅ、これが折れるとはどんな防御力だ」
「むふふん!」
得意げなイーナさん。
「しかし知っているぞ、その鎧には弱点がある!」
「ええ~さすおじ!物知りにゃ~」
「ヒューマ!」
黒豹がまた黒霧に代わり、その霧がガーライムが持っている銃剣の中に入っていく。
その銃をイーナさんに向ける。
「その鎧は装備した者の動きを極端に遅くする、この銃の連撃には対応できまい」
「防御も鎧の弱いところを狙えば少しは通ろう!」
そういうと銃が黒いオーラを纏った。
バババン!
さっきの連射よりも早くそして重い音がした。
弾は正確にイーナさんの首や腕の関節に当たった。
イリーナさんのゲージが1割ほど減った。
… ほう~あの者なかなかやるではないか …
老獪な声の亀がのんびりと語っている。
「のんびりと語っている場合じゃないのにゃ~」
… 何を言うておる、ほれさっさと動かんか! …
「この亀じじいめ! 可愛い猫にはもっとやさしくするにゃ!」
ババババン!
先ほどよりも鋭く多い銃撃が来た。
フヒュッ
「な、なに!」
撃った先にイーナさんの姿はなかった。
「縮地はその鎧の霊力が邪魔をして使えぬはずだ!」
「ほんとになんでも知ってるにゃーこのイケおじ!」
そういった瞬間にガーライムさんが背中から前に吹き飛んでいた。
「ぐぉあ!!」
勢いが止まらずそのまま闘技場から落ちてしまった。
会場も驚いたのか静かだ。
「にゃ!」
イーナさんが勝利のポーズと取ると会場が沸いた。
ワァァー
「第四試合、勝者、イーナ殿!」
「やったにゃ!」
… やれやれ、まだまだ子猫じゃな …
イーナさんが纏っていた鎧が亀の姿に戻った。
「もう子供だって埋めるにゃ!」
… そういう事をいっとるんじゃないわい …
… まあ、よくやった方じゃ次は油断するでないぞ …
「ふふふん~」
ご機嫌でイーナさんは戻っていった。
… むーちゃんさん、なんか凄そうなお知り合いですね? …
… あやつが守護契約するわけだな、あれはあの猫の身体強化での動きだ …
… え、遅くなった動きを強化した力技であんな早くうごいてたの? …
… うむ、速度だけならヒロミ殿と並ぶかもしれんな …
… え~防御も半端ないのに速度もって凄すぎるよ~ …
… まあ、なんとかなるであろう、ほら次呼ばれるかもしれんぞ …
おっと、控え室に行かなきゃ。
「皆様、1次試合ごくろうさまでした。この後2次試合へ移ります」
そのまま連戦するのか、ちょっときついな。
「では2次試合、第一は、ヒロミ・ライラック殿とレイダース・ネル殿」
「準備をして闘技場入り口までお越しください」
おおう、次だった。
心の準備をする間もないな…
まあ、レイさんや猫娘に当たらなかったのは良かったけど。
ワァァァァー
観客が盛り上がっている。
今年はかなりハイレベルな試合だそうでいつもより盛り上がっているらしい。
「これより勝ち残った4人にて2次試合を開始したします!」
「最初の試合は、ヒロミ・ライラック殿とレイダース・ネル殿です!」
2回目でもこの登場する時は緊張する~
反対側から険しいライオン顔のレイダースさんがやってくる。
闘技場中央で並び、王様へ一礼する。
その横でリーン姉様がウインクしている…
いつもと変わらないリーン姉様をみてちょっと、ホッした。
「開始!」
レイダースさんの守護霊がいきなり動いた。
体が黄色く光りレイダースさんの右腕に吸い込まれていった。
そしてレイダースさんの右手を覆う形を作る。
その姿は…
腕の先端にアヒルの顔が付いていた…
くっ、相変わらず笑わせてくれるコンビだ。
… ヒロミ殿、油断するでないぞ、あれはあれで厄介かもしれん …
むーちゃんにそう言わしめるとは気を引き締めなければ!
ババッ!
レイダースさんが右手にアヒルと付けたまま何やらポーズを取る。
「その神獣の霊力は先ほど見せてもらった!我が守護霊も我と共にあるなら強大な霊力にも遅れは取るまい」
… どういう事?むーちゃん …
… うむ、守護霊そのままだと私の霊力の波動をそのまま受けてしまうがああして契約主と一体になる事でそれが軽減されるようだ …
… 一見変態にしか見えない恰好でもちゃんと意味があるのね …
… くるぞ …
レイダースさんが右手のアヒルを付き出した!
すると物凄い速さでアヒルの顔が伸びてクチバシで攻撃を仕掛けてきた。
しかも残像が見える程に早く何匹ものアヒルが見えた。
思考加速発動!
… ぷっ! …
… どうした!ヒロミ殿? …
… いや、あの格好で真面目な顔をして攻撃でアヒルの顔が何匹も居るんだよ …
… ひろみ殿何を言っているのかわからないんだが …
… いや、ごめんまじめにやるから …
… しかし、アヒルの顔早いね、思考加速でもちょっと緩めると直ぐ違う所に顔がある …
… 恰好に惑わされて見くびっていたかもしれんな …
… うーん、でもたぶん大丈夫じゃないかな …
… ほう、何か考えがあるようだな …
… それじゃ行ってみるね …
身体強化を行い、アヒルの顔が向かって来た時にギリギリまで引き付けた後に一気に前に出た。
レイダースさんの右手、アヒルの根元の所までくると腕とアヒルの境目を掴んだ。
そしてそれを思いっきり上に上げてみた。
するとアヒルの顔はバランスを崩し、上に向かって突き出た後にそのまま地面に向かって突進して地面に刺さってしまった。
その間にレイダースさんの腕とアヒルの根元を力で引っぺがした。
「ぐぉお!」
そしてそのまま、レイダースさんの腕を取って引っ張り前のめりになったレイダースさんをそのまま背中に載せる感じで背中で上に押し上げ握っていた腕を引っ張った。
柔道でいう1本背負いだ。
普通は腕をつかんだまま床に落とすがその腕を振り回して場外に投げ飛ばした。
「なぁああにぃいいいい~」
そう言いながらレイダースさんは場外へ飛んで行った。
「勝者、ヒロミ・ライラック殿!」
「やったね!」
… ヒロミ殿、今の技は? …
… 背負い投げの事?私の故郷の武術だよ、見様見真似でやったらできちゃった …
… ヒロミ殿の故郷は武術も洗練されているのだな …
… 護身術とかで習った事があるんだよ …
… ちょっと!ヒロ!何、今の技! …
うお! リーン姉様からいきなり念話が来た。
… リーン姉様、今はだめですよ! …
… うう・・・ わかったわ今夜たっぷり聞かせてもらうからね! …
リーン姉様にも見せてなかったからな。
当然の反応だとは思うけど…
次はいよいよ決勝だ!
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