第26話 面 接

 知り合いに会っていたというむーちゃんが帰ってきた。

 姿を消していたらしく他の人には見られていないらしい。

 俺には見えてるけどね。


「むーちゃん知り合いが居たの?」


… うむ、亀を見かけてな知り合いかと思い声をかけていた …


「知り合いだったの?」


… ああ、玄武といってなかなか根性のある亀でな …


 え、玄武ってあの玄武?超有名じゃん。


「私の故郷では超有名な霊獣ですね」


… さすがヒロミ殿、あやつを知っているか。あやつは長生きでな …


… 古い知り合いの一人なのだ …


「そんなすごい霊獣が守護霊だったの?」


… そうだな、どうも最近守護霊として契約したらしい …


「最近というと、試験を受ける人の守護霊という事になりますね」


「今年試験を受ける人でそんな人は聞いてなかったけど…」


 リーン姉様は訝し気な顔をして唸った。


… まあ、あやつ自体は真面目なやつだし問題なかろう …


「うーん、そうね!むーちゃんもいるしね」


 そう言うとさっとむーちゃんを抱きしめるリーン姉様。


 ザワザワ…

 部屋がざわついてきた。

 適正検査が終わったようだ。


「皆様、適正検査おつかれさまでした。これより面接に入ります」


「適正検査と同様に番号を呼ばれた方からどうぞ」


「1番の方、奥へどうぞ!」


 いよいよ面接か~

 緊張する~


「緊張してる?ヒロ」


「え、ええ、まあ」


「大丈夫よ~ 今日の衣装はバッチリだし見せつけておやりなさい!」


 いや、服を見せる試験じゃないんですが。

 そう、今日の服のセレクトはリーン姉様が行った。

 真珠色の和服生地を見た目洋風のドレスのように仕上げた逸品だった。

 襟は和服のごとくV字切れ込んでおり袖は洋風のフリルがついており肘までに濃い紫の藤の花のような刺繍が入っている。

 スカートも和風の如く布を重ねて巻いているように見えるがシルエットは丈の短いドレススカートになっている。

 ここにも藤の花、右胸から下の方にかけても藤の花の刺繍がある。

 俺の捏紫ねし色の髪が生える服だ。

 そういえばこの部屋に入った時から皆の視線を感じる。

 まあ、それはリーン姉様が有名だからだと思うけどね。


「やれるだけがんばってみます」


 むーちゃんは戦闘試験のみ参加が許されているらしく適正検査と面接には参加できない。

 一人というのが最近なかったので余計に不安になっているのだろう。

 ここは思い切っていくしかあるまい。

 そうこうしているうちに16番が呼ばれた。

 近くの扉から15番が戻って来た。

 何やら絶望したような顔をしているが何か失敗したのだろうか?

 そんなの見ると余計に不安になるよ~。


「17番の方、奥へどうぞー」


「あ、はいー」


 来た!


「落ち着いて行ってらっしゃい、待ってるわ」


「はい、行ってきます」


 適正検査と同様に隣の部屋らしく白板で本人かを確認してから中に入る。


「失礼します」


 中に入ると先ほどの希少鉱物の玉は撤収されており真ん中に試験管と思われる男が座って待っていた。


「こちらへどうぞ」


 その男が近くに来るように促す。


「ヒロミ・ライラックさんですね?」


「はい、そうです」


「では、降霊術士の面接を開始いたします」


「まず、私をどう思いますか?」


 え?なにその質問…

 いや、どう思うかと問われれば明らかにおかしい所はあるのだが…

 この試験管の男、頭の上に白い物が…

う で始まり途中が ん で最後が こ! のようにとぐろを巻いて乗っかっているのだ。

 この試験管はその事をまるで何もないかのように自然体で真面目そうな顔で眼鏡をクイっと位置を直しているのであった。

 あまりのギャップに思わず吹き出しそうになったのを必死に我慢した。


「ど、どう思うというとあの…その頭の物は帽子なのでしょうか?」


「ほう!君にはこれが見えるのだね?」


「はい…」


 !!! これは守護霊か?

 ステータスを確認する。


<守護霊>

  白蛇びゃくだ

  通称 はくさん

  属性 霊獣

  能力 天候制御(中) 隠密 巻き付き 噛みつき

     擬態 真面目 敏感肌


「あの、なぜ頭の上でとぐろを巻いているのでしょうか?」


「これは、もし見えたとしても帽子と思わせる為だよ」


 試験管が真面目な顔で眼鏡直す。


 くっ! そんなビジュアルで真面目に答えないでくれ!

 笑いが…


「この子は白さんと言ってね擬態が得意なんだ」


 擬態って帽子に?それともあれに?

 笑いを堪えていると白さんがとぐろのてっぺんからぴょこっと顔をだして試験管の耳元まで頭を持って行き、なにやら話をしているようだ。


「ほう、それは本当なのかね?」


 なにが本当?


「あたなには連れがいるようですね」


「はい、シャリーン姉様が…」


「いえ、そちらでなくてもう一つの」


「あ~むーちゃんでしょうか?」


「そのむーちゃんとはどんな方でしょうか?」


「えーと、私の守護霊ではないのですがある事情で私を守ってくれている友達です」


「ああ、シャリーン様から戦闘試験の参加申請があった方ですね」


 リーン姉様、そんな申請してくれていたんだ。


「いや、この白さんは敏感でね君にまとわりついた霊気が只者ではないと言っているのだよ、おそらくその君を守る者の霊力だと思うのだけど」


 たしかにむーちゃんはすごい霊気の持ち主だが今は隠蔽しているはず、それを見抜くとは本当に敏感なんだな、白さん。


「あー、シャリーン姉様の守護霊ではないでしょうか?」


「ふむ、それも考えられるが…まあいいでしょう戦闘試験になればわかる事ですから」


「面接は終了です、あなたは合格です」


「へ?」


「この面接はこの白さんを見抜けるか、また白さんが受験者をどのように感じるかで判断をしています」


「適正の乏しい者には白さんは姿さえ見る事ができません、見えても帽子に見えるはずです」


「そして白さんはその者が正しい心を持つかどうかを敏感に感じる事ができます」


「そうしてその者が降霊術士に相応しいかを判断しています」


 それでさっきの受験者は落ち込んでいたのか、きっと白さんが見えなかったんだな。


「さすが、シャリーン様鍛え、あのガルシア・ライラックさんのご子息ですね実に見事な適正でしたよ」


 ここでもお父様が出てきた!こんだけ有名なの家庭でも話しておこうよ~お父様。


「おつかれさまでした。戻って明日の説明を聞いて準備をしてください」


「は、はい、ありがとうございました」


 面接はあっさり終わってしまった。

 リーン姉様はこうなる事を知っていたんだな。

 苦手の面接が終わり安堵して戻った。


「おかえり~ 大丈夫だったでしょ?」


「うん、あれって面接と言えるのか…」


「まあ、それだけ降霊術士が特殊ってことかしらね」


 この後は宿舎に行くが明日の説明があるようなので残りの受験者が終わるのを待っている状態だ。


… そういえばむーちゃんの霊気を感じた守護霊が面接で居たよ …


 他の受験生に内容がばれないように念話で伝えた。


… 白であろう? …


… むーちゃん知ってたの? …


… あやつがミミズのように小さい頃に会ったことがある …


 さすがむーちゃん顔が広いな。


… 隠密が得意だが私には効かんからな …


 ザワザワ…

 また部屋が騒がしくなった、面接試験も終わったようだ。


「皆様、本日の試験は終了しました。おつかれさまでした」


「この後ですが宿泊棟に移動して頂き、お休みください」


「明日は戦闘試験になります。今日合格した方は十分な準備をして挑んでください」


「それでは解散!」


 今日合格できなかった人は試験に落ちた人になるが同じようここに泊まり明日の戦闘試験を見学しなければならないらしい。

 そうする事で自分の実力を理解し再度試験に受けるのか諦めるのかの判断をさせる為らしい。

 今日合格した人とか人数は発表されていないので明日にならないとわからない。

 そういえばあのスーパーモデルはどうしたんだ?

 居ないようだったが?


「リーン姉様、ミレード・レイさんはどうしたんでしょう?いなかったみたいですが」


「ああ、あの子は適正検査と面接は免除よ」


「ええ、それって実質合格しているという事では?」


「そうね、知名度と実力も知られてるからね、それにここの連中はああいうのに弱いのよね~ アイドルとかにも弱いし…」


 な、なるほどリーン姉様が俺の服をコーディネイトするはずだ。

 実際はあんまり関係なかったけどね。

 まあ、試験管の目が時頼きょろきょろして動揺する時もあったけど。


「明日はむーちゃんも出番だね」


… うむ、やっと少し霊力を開放できるな …


「リーン姉様、むーちゃんと試験に出れるように申請してくれたと聞きました」


「あ、だってあなた達はセットだしね♡」


「色々とありがとうございました」


 今までも分もお礼を込めて頭を下げた。


「ちょ、ヒロは私の妹なのだから当然でしょ!そんな事はしない!」


「でもお世話になってばっかりで」


「私はヒロと一緒に居られるだけでいいのよ」


「私もです、リーン姉様」


 これからもできれば男に戻れても一緒に居れればいいな…


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