第25話 降霊術士試験

 今日はいよいよ降霊術士の試験だ。

 リーン姉様、むーちゃんと会場に向かった。

 会場である降霊術ギルドは王城の敷地内にあるとの事でリーン姉様に案内してもらう。

 俺の場合、試験を受けるにも色々と問題が起こる可能性があるのでその対処も含めて霊舞騎士団のリーン姉様が付いてきてくれる。

 そもそも降霊術士試験は後見人が居ないと受けれられないらしい。

 まずは王城への入り口での検問だ。

 入口と言っても王城ははるか奥にありどれだけ広い敷地なのか想像もつかない。


「こんにちは~試験を受けに来ました」


「こ、これはシャリーン様!おつかれさまです!」


 検問の人の態度からリーン姉様、やはり結構偉い人なんだな~と感じた。


「試験を受けられるのはその方ですか?」


「ええ、私の妹です」


「妹様!がいらしたんですね!」


 何度目だろうこのやり取り。


「えーと、シャリーン様この生き物は?」


 リーン姉様の腕に抱かれているむーちゃんの事らしい。


「これはむーちゃんです」


「は、あ、お名前ではなく…」


「わかってますよ、この子はヒロのアーティファクトです」


 え、そうだったの?


「そうなんですか?なんとも珍しいですな」


「そうでしょ? で?いいかしら?」


「は、どうぞお通りください」


 まだほんの入り口なのにさすがにチェックが厳しい…

 アーティファクトとした方が説明しやすかったんだろうな。

 守護霊じゃないし。

 俺とむーちゃんだけだったら入れなかったかも。


「それじゃ、この馬車で行くわよ」


 敷地内で馬車ですか、たしかに見える範囲でそれらしい建物はないから遠いのだろう。

 一同は貴族が乗るようなふわふわの椅子がある馬車に乗った。

 30分くらい石畳の綺麗に舗装された道を進んできた。

 まわりは綺麗な庭園のような庭が広がって時折大小の建物があったが人の気配は見当たらなかった。

 進む方向に見える範囲で壁が続いておりその一部に問がある。

 そこに向かっているようだ。

 後ろを見ると同じように馬車な馬車が連なっていた。


「リーン姉様、広いですね」


「そうでしょ、ここは城の外庭と呼ばれて綺麗だけど一歩入ったら罠だらけよ」


「さすが王城ですね」


「そしてこれが中庭に入る問ね」


 馬車が問を通り抜ける、この馬車はそのまま通れるらしく門番に止められている他の馬車が居た。

 問を抜けると林?森か?というような木々が生い茂った中に綺麗に整った道を進んでいく。

 その道は真っすぐ中心には続いておらず中心に向かって旋回するような道だった。

 ほどなくして左手に大きな門が見えてきた。


「ここが降霊術ギルドよ」


 やっと着いた。

 この門もすごく大きく高い。

 問を通り過ぎてホテルのロビー前みたいな所に入り止まった。


「ここで受付をしましょう」


 馬車は快適だったが予想以上に遠すぎて試験の前に疲れてしまった。


「受付いいかしら?」


「はーい、受験の方でしょうか~ !!」


「シャリーン様! いらしてたんですね。言ってもらえれば迎に行ったのに」


「今日、私は付き添いだからね。元気だった?ミーシャ」


「はい、おかげさまで毎日忙しいですよ~」


 そう言う受付は身長がリーン姉様よりかなり大きくなりより頭には立派なウサギのような耳が生えていた。

 腕と脚には白い毛があり、胸が…かなりでかい!

 兎人というやつか。体は細く背が高く、胸がでかい!


「相変わらず大きいわね…」

 

 リーン姉様、どちらの事を言ってるのだろう…

 胸を見てるから胸の事だな。


「まだまだ成長期ですから~」


「あっそう…」


 リーン姉様なにやら悔しいそうだ。

 俺もこの体になってその辺の感情はわかる気がする。俺の胸はリーン姉様より少し大きいしね。


「それで受験される方はそちらですか?」


「あ、はい、ヒロと言います」


「あなたがあのヒロ様ですね、ではこちらを触ってください」


 あのってどのヒロ様なんだろう… 俺の情報は降霊術ギルド関係者には伝わっているようだ。

 白い石板のような板を差し出された。


「これに右の手の平を押し付けてください」


「はい」


 手を押し付ける。

 板が光り、上の方に ヒロ・ライラック という文字が浮かんだ」


「はい、いいですよ~ 本人確認できました。試験登録も完了です」


 え、もう? 簡単だな。


「こちらが試験のガイドになりますのでご覧になり受験してください」


「奥に休憩所がありますのでそこで時間までお過ごしください」


「ありがとう、ミーシャ行ってくるわ」


「ありがとうございました」


 リーン姉様と共に挨拶をして奥に進んだ。


「ヒロ様、シャリーン様、その真魂を持って良い出会いがありますように!」


 ぽわぽわした感じのうさ耳だったが気持ちのいい感じの兎だったな。

 色々デカかったし。

 奥に進むと大きな部屋がありテーブルが無数に設置してあった。

 すでに受験者がかなり来ていてざわざわしてる。

 適当なテーブルに座り一息ついた。


「飲み物取ってくるからヒロはそのガイドを良くみておいてね」


「はい、リーン姉様ありがとう」


 飲み物取りに行くときくらいむーちゃんを置いていけばいいのに抱いたまま行ってしまった。さすがモフる者だな。

 さて、試験の内容は…

 ふむふむ。

 試験は適正検査から始まり、面接があり翌日に実戦試験があるようだ。

 ここに宿泊施設もあり受験者は皆ここに泊まるようになっている。

 ガイドには番号が付いておりそれが俺の受験番号になるらしい。

 番号は17番。

 ざっと部屋を見渡すとそれ以上の人数がいるので受験者本人だけでなくリーン姉様みたいな後見人も交じっているようだ。

 初めの適正検査はお昼から開始か、今は昼前なのでお昼を食べてからかな。


「お待たせ~」


 リーン姉様が帰ってきた…

 両手にお昼だろうかバスケットをぶら下げたままむーちゃんを抱きかかえておりそのむーちゃんも両手でバスケットを持っていた。


「リーン姉様、言ってくれれば行ったのに!」


「大丈夫よ、むーちゃんが居たから。それよりお昼食べちゃいましょ」


 てきぱきと食事をテーブルに広げ、むーちゃんも自分の横に配置している。

 ほんとにこの人は年はあまり変わらないのにしっかりしてるな~。

 持ってきた食事はここで用意されたものでサンドイッチやスープ、果汁など結構な豪華さだった。


「美味しいですねこれ」


「前はねぜんぜん良くな無くて私が霊舞騎士団の副団長になった時に改正させたのよ」


 お~リーン姉様、ナイスです!

 さすリーン!


「なるほど、だから美味しくてオシャレなんですね」


「ふふふ、ありがとう」


 よし、リーン姉様のおかげで腹ごしらえはバッチリだ!


「時間になりましたので降霊術士試験を開始します!」


 奥の扉からそれらしき係員が入ってきて宣言した。


「試験に際しましてはガイドにありますが内容、結果など一切他言無用です」


「内容が漏れた場合には退場、資格取り消しもありますのでご注意ください」


 適正検査と面接でなにかを秘密にすることがあるのだろうか?


「リーン姉様、何か特殊な試験になるのでしょうか?」


「ん?いいえ、これは適正試験で受験者の資質が図られるからその情報が漏れないようにするためね。面接内容も秘密だしね」


 なるほど、すると俺が捏紫ねしの資質という事は他の受験者にはバレないのか。


「ただ、資質は合格して資格授与の時に発表されるから合格者にはわかっちゃうけどね」


 最終的にはバレてしまうのね…


「では、番号でお呼びしますの呼ばれた方は白板チェックを受けてから奥に進んでください。」


「1番の方、奥へどうぞ!」


 緑色の体をしたトカゲのような人物が手を挙げて置くに進んでいった。

 リザードマンというやつだろうか?

 他にも待機している連中の中には見たことがない種族の人が結構いた。

 受付のミーシャさんと同じ兎人や猫耳な人、立派な角がある人も居た。

 他半分位は見た目普通の人間みたいだ。

 人間以外、亜人とでもいうのかそういう人達の方が降霊術士の資質が高い事が多いらしい。

 ただ、ここ王都は捏紫ねしの英雄が居た関係で人間で降霊術士になる人が多いらしい。


「2番の方、奥へどうぞ!」


 反対側の扉から先ほどのリザードマンが戻ってきた。

 俺が呼ばれるのはもう少し後だな。

 うとうとしているむーちゃんを抱きかかえてリーン姉様とどちらがモフるかなどやり取りをしながら待っていた。


「17番の方、奥へどうぞ!」


 おっと俺の番だな!


「では行ってきます。リーン姉様」


「適正検査は神殿と似たようなものだから気軽にね、何かあったら私の名を出してね」


「はい、わかりました」


 少し緊張しながら奥へ進む。

 途中で入り口で触ったのと同じ白い板に手を押し付けて本人か確認が行われ、隣の部屋に入るように言われた。


「失礼します」


 中に入ると神殿で触った玉よりも倍以上もある玉が部屋中央に設置してあった。

 その先に試験管みたいなおっさんが座っている。

 そしてそのおっさんの両サイドに槍を持った護衛が立っていた。

 そのおっさんは胸に赤紫せきしの石を付けていたので降霊術士なのだろう。

 むっすりした顔は良く見る降霊術士と同じで感情を表に出さないようだ。


「君があのヒロ・ライラックだね」


 ここでもあのとか言われるよ…


「は、はい」


「男性と聞いていたのだが違ったようだね」


「え、ええ、何かの間違いでしょうね!」


 女に変わったと言っても信じてはもらえないだろう。


「では、その玉に触れなさい」


「はい」


 この玉って希少素材で柔らかい金属なんだよね~

 そっと両手で掴んで以前親友のアレックがやっていたようにもみもみしてみた。

 おお~ 重厚な手触りなのになんとも言えない柔らかさが気持ちいい。

 メタルスライムを触っている感じなのだろうか…


「触るだけでわかるからそんなに揉まなくてもいいぞ」


 は!思わず気持ちよくてもみもみしてしまった。

 球が深い紫色に代わり、そして同じように深い紫色のオーラで包まれた。

 あれ、こんなオーラ―って前出てたっけ?


「な! なんだこれは!」


 え、なんかいけないのでしょうか⁉


捏紫ねしとは聞いていたがこの反応はさらに強い反応!」


 修行してさらに捏紫ねし色に染まってしまったのでしょうか?


「も、もういい、手を放して」


「はい」


「これ程とはガルシアの息子だけあるな…」


「父を知っているのですか?」


「ああ、あやつと昔色々あってな。あやつも色々と変態… 規格外だったからな」


 お父様、ここでも変態とか言われてますが… どんだけ~


「あやつは元気にしているか?」


「ええ、すこぶる元気ですね」


「そうか…」


 おや、むっすりした人と思ったが少し表情が優し感じになったな。


「あ、いや、すまん試験中だったな。確認は以上だ出ていいぞ」


「は、はい、ありがとうございました」


 あー、緊張した。

 まさかお父様の話が出てくるとは思いもしなかった。

 入った扉から出て待合の部屋へ戻った。


「おかえり!どうだった?」


「試験管が父の知り合いだったみたいで緊張しました」


「そうなんだ、ヒロのお父様は有名だからね降霊術ギルドでも知っている人は沢山いると思うよ」


「そうなの?全然知らなかった」


「適正検査の方は?色は言っちゃだめよ」


「そっちは前と同じ色だったけどなんか回りに同じ色のオーラが出てて、試験管は驚いてた」


「すごいじゃない最適合してたのね」


「あれってそういう意味なのね」


 あれ、むーちゃんが居ない。


「とこでむーちゃんが居ないみたいだけど」


「ああ、むーちゃんは知り合いが居たみたいで今会ってるわ」


「むーちゃんの知り合いって守護霊なんじゃ」


「そうでしょうね、ついて来てほしくなさそうだったんでここで待ってた」


「むーちゃんの知り合いの守護霊って物凄い高位の霊では?」


「たぶんね、今は気配を隠してるのか全然わからないけど」


「まあ、後で聞いてみたら?」


「そうですね」


「次は面接ね!」


 うう… 面接かぁ~ うまく答えられるかわからないんだよな~


「面接で落とされる事があるのでしょうか?」


「うーん、人格的に問題がなければ大丈夫じゃないかな~」


「まあ、普通の面接じゃないしね」


 え、なにそれ!


「リーン姉様、普通じゃない面接ってなんなんのでしょう?」


「それは受けてみてからのお・た・の・し・み♡」


 そんな意味深げに… 不安でしかない…





 

 

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