第24話 スーパー
夕べは散々だったな…
服の着せ替えはまだいいけど下着の着せ替えは…
む~ちゃんは逃げるし。
「さ~て、今日は新しい服の発表会があるってモナから聞いたのでそこに行ってみましょう~」
「あの~」
「はい!なんでしょう?」
「試験の準備はしなくていいの?」
「大丈夫よ~、ヒロならもう合格!」
「試験は簡単なの?リーン姉様」
「うーん、合格するのは全体の1割くらいかな」
「え⁉」
「それって難関なんじゃ?」
「降霊術士には資質があれば合格するからヒロは大丈夫よ」
「戦闘試験もあるけどそれは負けても実力を見るだけだから不合格は無いわ」
「戦闘試験・・・ リーン姉様、試験は他にはどんなのが?」
「あとは適正検査と面接くらいよ」
面 接 !
超苦手なんですが!
「面接苦手なんだけど…」
「面接なんて話を聞くだけだから昨日買った服でオシャレしていけばイチコロよ!」
なんか、心配になってきた…
「さあ、ここよ」
商業区の広場に大きな噴水がありその噴水に続くステージ、ランウェイが設置されている。
おお~ まんまファッションショーだな。
「前に行くわよ、良い席で見ないとね」
リーン姉様に引きずるようにステージの前に連れていかれた。
「これより!ファッション街合同の発表会を行います!」
「有名、無名、色とりどりのファッションをご覧くださーい!」
ステージの傍では楽器を持った楽団が乗りの良いリズムを刻んでいる。
噴水側のステージ奥が光り出した。
その光の中から奇抜な服をまとったモデルが表れた。
おーあれってどういう仕組みなんだろう、テレポートかな?
服よりも不思議な仕掛けのような演出が気になる。
服はもう一生分見たからね…
ワー!!
なんだか観客から歓声が上がっている。
ステージ奥で白い光の中に赤い服を着たモデルが立っていた。
みんなそのモデルに歓声を上げているようだ。
「ミレード・レイじゃない、これに出てたんだ」
「ミレード・レイ?」
「ヒロは知らないかな?1年前位から出てきたモデルでこの王都では超有名な子よ」
ほーこの世界にもスーパーモデルみたいなのが居るのか。
「ヒロは良~く見ておくといいわよ」
「そうなの?」
リーン姉様が意味深げにウインクしている。
良~くって昨日に続き、服とか着こなしを見ろってことかな?
ステージの奥から悠々と歩いてくる。
ステージ半ばでまだ遠いがその圧倒的な存在感が伝わってくる。
モデル、ほっそいわ~
スラっとした脚に細い腕、身長もかなり高い。
染めているのかわからないが真っ赤で艶やかに伸びたストレートの髪。
顔の輪郭もちゃんと物が食べれるのか?という感じのすっと伸びた顎。
目は小さくはないが切れのある目をしている。
そして肩には同じようにスラっとした気品に溢れた鳥が立っている。
なんで鳥⁉
モデルの優雅なウォーキングに合わせるように流し目っぽい姿勢でポーズを決めている真っ赤な鳥。
モデルの服よりも赤く、燃えるような赤だ。
モデルが目の前まで来た。
鳥がこちらを見ている気がする…
モデルも綺麗だが鳥も同じようなオーラ―を放っていた。
… ふ・・・ …
!!! 鳥がこちらを見て見下したような視線を送ってきた。
こいつ、守護霊だ!
あまりのモデルとの一体感で最初は飾りかと思った。
「リーン姉様、あの鳥って…」
「そう、あの子の守護霊だね。あの子も降霊術士なのよ」
「正式にはまだ候補だけどね、ヒロと同じ試験を受けるはずだよ」
モデルで降霊術士とはよく分からん組み合わせだが一緒の試験なのか…
なんか一緒にされるのが恥ずかしい感じになる。
あ、ステータス見忘れた…
今度会ったら確認しよう。
彼女の出番が終わっても大歓声が続いていた。
「どうだった?」
「どうと言われても~ もう服は沢山見たから…」
「服もそうだけど、あの子よ」
「ああ、そのスーパーモデルですか?」
「スーパーモデル?」
「とってもすごいモデルさんの事です」
「へー、確かにあの子はモデルとしてはスーパーモデルかもね」
「降霊術士としてはどうなの?」
「確か
「サイアスさんと同じなんだ、あの鳥も高位の守護霊だよね」
「ミーちゃんよりも強いかもよ、むーちゃん程の霊圧は感じないけど」
むーちゃんの威嚇は圧が凄かったしな。
「戦闘試験で相手するかもよ〜」
「え〜 相手したくないです」
「ヒロならあれくらい一瞬でしょ?」
リーン姉様としか戦った事がないから凄く不安だ。
「そういえばむーちゃん今日は大人しかったね」
… 先日のハヅチの件で少しやり過ぎたのでな …
… 今の世をもっと理解せねばな …
「それであの鳥に見下されてたのね」
「むーちゃんの可愛さを気がつけないなんて態度の大きいただの鳥よね〜」
そういうとリーン姉様はむーちゃんを抱きしめた。
むーちゃんも最近は抵抗するのを諦めたらしい。
「サイアスさんも来ればよかったのに」
「あの人は商人だから忙しいんでしょ、夜に会えるわよ」
「私たちは美味しい物でも食べに行きましょう」
ここ王都はさすがに食べ物も色々あって毎日食べ歩きしてもいいくらいだ。
二人と一匹で食事をする店を探してブラブラした。
すると雑多に飲食店が並ぶ先で見覚えのあるのが目に入った。
「リーン姉様、あれ!」
どんぶりに面らしき物が入っている絵の看板。
そして店名が うーどん と書いてある。
なぜうーなのか知らんがあれはうどんだ!
「どこ?」
「あそこ、うーどんと書いてあるとこ!」
この世界に来てから似たようなのは食べた事があるが微妙に違った。
さだ子さんの所では日本食がほとんどだったがうどんはなかった。
俺は転生前からうどんが好きだった。
そばもいいがやはりうどんだな。
「それじゃそこに行ってみしょう~」
一同は うーどんのお店に入った。
「らっしゃいませ~、お好きな席にどうぞ~」
店内はカウンターと4人掛けのテーブルが5つあり半数が客で埋まっていた。
入口付近のテーブル席に座った。
メニューを見ると絵が書いてありなかなか親切な店だ。
「こんな食べ物あったのね」
「リーン姉様も食べた事はないですか?」
「面やパンとかはあまり食べないのよ」
炭水化物系食べないのね、だからそんなに細いのか!
「私の故郷にもあるんですこれ」
「故郷ってあっちの?」
リーン姉様には女になってしまってリーン姉様の部屋で作法を教えてもらったあの日に自分が異世界人で有る事を話していた。
最初は驚いていたけどやっぱりね… と言われてしまった。
この世界の人とは色々違うところがあったらしい。
それでも例え異世界人でも、例え男でも女でも俺は俺って事でリーン姉様は信頼してくれていた。
「そうそう、この肉うどんというがおいしくて…」
メニューには肉うーどんとなっているが…
しかも肉が白毛オーク肉と書いてあった。
オークは森を移動する際に何度も見たが白毛とは?
「リーン姉様、白毛オークというのは?」
「あら、知らないの? オークと言っても4本足で歩いて全身が白く猪の魔物に似てるわね」
それって、白豚では…
「この王都の外でも飼育されてるわよ」
養豚か…
「そうなんですね、その養豚ん… 飼育されてるの見てみたいね」
「試験終わって時間あったら行ってみましょう」
結局、俺は肉うーどん、リーン姉様はホブ根天うーどん、むーちゃんは月見うーどん… ツキヨミ様、友食いじゃ…
以上を頼んだ。
むーちゃんがチンチラの恰好でちょこんと椅子に立っておりそれが珍しいのか注目を浴びていた。
しばらくすると店の外が騒がしくなった。
「なんだろ?」
歓声のような声が上がっている。
「有名人でも来たんじゃない?ここでは良く見かけるからね」
さすが都会、歩けば有名人に出合うか。
歓声が店に近づいてきて店の直ぐ外に人が沢山集まっている感じがした。
「いらしゃいませー! 申し訳ありません相席でもよろしいでしょうか?」
「はい、構いません」
若い、芯が強そうな女性な声がした。
「お客様、相席よろしいでしょうか?」
気が付くと席が俺らの所しか空いていなかった。
「いいよね?ヒロ」
「はいお任せします」
「いいですよ、どうぞー」
「ありがとうございますー、お客様こちらでお願いします~」
「すみません、お邪魔します」
そう言ってリーン姉様の隣にその客は座った。
真っ赤で艶やかに伸びたストレートの髪、物凄い綺麗な体のラインをした少女だった。
そしてその肩には気品に溢れる燃えるよう赤の鳥が居た。
「あれ?その鳥…」
思わず口に出てしまった。
「!!!」
その少女が驚いてこっちを見ている。
「あたな、この子が見えるの?」
「え、あ、いや…」
「ヒロ、もう遅いよ」
「!!!」
少女がまた驚いて今度はリーン姉様を見ている。
しかしのその顔は尊敬に満ちた顔だ。
「あなた様はシャリーン様では⁉」
「そうですがお会いした事がありましたか?」
「い、いえ、私の憧れの… ごにょごにょ…」
さすがリーン姉様、スーパーモデルでさえも憧れる存在だったのか。
しかし、超絶美少女が二人も目の前に居るとそのオーラでパニックになりそうだ。
「以前、
「そうだったんですか、ありがとうございます。今は霊舞騎士団はお休みしててこの子と冒険者をしているのですよ」
「なるほど、どうりで最近お見掛けしないと思ってました。」
「でも、ここでお会いできるとは感激です!」
「私もお会いできてうれしいですわ、ミレード・レイさん」
「私の事をご存じなんですか!」
いやいや、こんだけ騒がれて知らないやつは居ないだろう…
案外天然かこの子?
「今日も綺麗でしたよ、発表会」
「ああ、シャリーン様に見て頂けるなんて出場してよかったです」
ミレードとリーン姉様が話をしている間、ミレードの肩に乗っている真っ赤な鳥は俺の隣で器用にうーどんを啜っているむーちゃんを睨んでいた。
「紹介が遅れました、この子は私の妹のヒロです」
「初めまして、妹のヒロです」
「まあ、初めましてシャリーン様に妹様がいらっしゃると知りませんでした」
「ヒロも明日の試験を受けるのですよ、よろしくおねがいしますね」
「それは、協力なライバル登場ですね」
「いえいえ、私などはリーン姉様の足元にも及ばないので…」
「ご謙遜を… ベン!なんて顔してるの⁉」
この鳥、ベンと呼ばれているのか。
ステータスは…
あ、あれ?表示されないな。
モナードさんも見えない。
隠蔽能力でもあるのか?
… ふん! …
あいかわらずむーちゃんに敵対意識を向けているようだ。
「すみません、そちらの丸い方が気になるようで」
「うちのベンは丸いのが苦手なんですよ」
自分がほっそいから丸いのは苦手なんだろうか…
うちのむーちゃんだって、お風呂に入ればすごいん細いんだからね!!
「この子はむーちゃんと言って私の友達です」
「かわいいお友達ですね」
むーちゃんは気配を隠しているらしく普通のペットと思われているようだ。
正体知ったらべんちゃん卒倒するぞ。
「ご注文はいかがでしょうか~」
「あ、すみません私はネギうーどんで」
「かしこまりました~」
む、ねぎうーどんもうまそうだな。
「ヒロ様、明日はよろしくお願いいたします」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
このような有名人が来やすく食事に出てくると混乱するんじゃないかと尋ねたところ王都では有名人が多いのでその者が入った店などにはファンは入らない暗黙のルールみたいのがあるらしい。
なので外は出てくるのは待ってるのか騒がしいがだれも入って騒ぎ立てる者はいなかった。
彼女のネギうーどんも来て皆、それぞれのうーどんを黙々と啜った。
想像していた味に近くそれなりに美味しかったのだが終始むーちゃんを睨むベンのおかげで落ち着かないまま全部食べてしまった。
「それでは私はこれで、リーン姉様の今度サインくださいね」
「私のでよければ」
「ヒロ様、明日またお会いしましょう」
「はい、お互いがんばりましょう」
モナード・レイとその肩にいた赤い鳥は店から出て行った。
その瞬間に大きな歓声が上がっていた。
「有名になるのも大変ですねリーン姉様」
「そうね、彼女くらいなると気軽に街のお店に行きづらいわね」
まあ、リーン姉様も大概でしたけどね。
一緒に街を歩いていたら周りがざわついていたもの。
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