第23話 王 都
試験は明後日からなので今日は王都を見学に行くことになった。
この国、ディアマンディはあの
降霊術士も
降霊術ギルド本部もここにあり、国を超えて世界の降霊術士をまとめているらしい。
現在の王は6代目で他国とも良好、驚いた事にこの世界では大きな戦争などはこの国が出来てから発生していないとの事だった。
地球の中世的な文化でありながら戦争が無いとは信じられない。
文化の進んだ地球でさえ、絶えずどこかが争っているのに…
この国が
問題があれば、有能な人材を国をまたいで派遣し解決している。
その中核を担うのが
霊無騎士団は世界中に支部がありどの国であれ問題があれば解決に向かう世界の秩序を守る組織。
しかし、各国の政治には中立な態度を取り政治的問題で争いに発展しそうな場合は調停役まで行っている。
強力な組織だが組織内の秩序は守護霊で保たれているらしい。
世界のバランスを崩すものを看破できる守護霊が居り、その眷属と共に霊無騎士団と活躍している。
だが、最近は魔族と言われる存在が色々ちょっかいを出して来ているらしくこの前俺が襲われたのも魔族によるものだった。
魔族の事はまだ詳細がわかっていないが統率された動きから魔族をまとめる者がいるのではないか、魔王が居るのではないか?と噂されている。
と、リーン姉様に教えてもらった。
現在、リーン姉様とサイアスさん、俺、他の人には見えないがむーちゃんとミーちゃんも一緒に王都の街に出てきている。
王都は中央に王城、その周りに貴族街、またその周りに商業区や工業区など各エリアに分かれ配置された国になる。
その国の名ディアマンディの通り、上から見ると大粒のダイヤのような形をしているのだ。
中央の王城の一番高い塔の上には俺が儀式の神殿で見たのとは比較にならない大きさのダイヤがはめ込まれておりキラキラと街を照らしていた。
リーン姉様が俺の服を探したいとの事で一同は商業区のファッション街と言われる所に来ていた。
「リーン姉様、すごいですね~ こんなに沢山のお店!」
辺境の領、そのまた辺境に住んでいた俺は久しぶりに見る大都市に興奮してしまった。
「ここは、世界中の色んな服が売られているのよ」
「新しい服の発表する場とかもあるから見ごたえあるわよ~」
ファッションショーかな?それは見てみたい。
ファッション街の中央はいかにも高級!という雰囲気を出してる店が並んでいた。
その一つでリーン姉様が行きつけの店があるとの事でそこに入った。
「いらっしゃいませ」
「モナ!お久しぶり」
「ヒナ!久しぶりね、お元気だった?」
「ええ、色々あったけど元気にしてたわ」
「おや、そちらは…」
「私の妹のヒロよ!」
「あんたに妹様が居たとは…」
「こんにちは、この店の店主のモナード・ナターシャよ」
「初めましてリーン姉様がお世話になっています」
「ヒナの妹にしては礼儀正しいわね~」
「どういう意味よ!」
行きつけの店というか友達の店みたいな感じだな。
「それで、今日は?」
「このヒロの服を見繕ってほしいのよ」
「なるほど…」
急に何か寒気がした…
こちらをじっと見る店長さんの後ろに何かいるのが見える。
これって、守護霊か?
「おや、この子が見えるの?」
「はい、あなたの守護霊ですか?」
「そこまで見えるなんてさすがヒナの妹だね」
「この子はハヅチというのよ」
ハヅチ…聞いたことないな。
ステータスを見てみる。
<守護霊>
通称 ハヅチ
属性 神属
能力 布生成 布制御 採寸目 布縛り 布攻め
モナード・ナターシャの守護霊
内気
「布の神様…」
「そこまでわかるの⁈」
「そう、ハヅチは布を支配する神なの」
「この子のおかげでこの店を繁盛してるのよ」
むーちゃんが言っていた霊気、その気配が強く感じる。
かなり力を持った守護霊のようだ。
しかし、布縛りと布攻めってなんなの?
… モナ、この子やばいよ …
いきなりやばいって言われた。
「どういう事?」
… この子は・・ !!! …
ん?どうした?
ハヅチが急に怯えているように見えた。
そしてハヅチの霊気を軽く上回る気配が後ろからする⁉
後ろを見るとむーちゃんがハヅチを威嚇していた。
「こ、こら!むーちゃん、め!」
リーン姉様がむーちゃんを抱きかかえる。
「この子達は大丈夫だよ…」
… そうか・・・リーン殿が言うのであれば信じよう …
店主もハヅチも呆けている。
「おーい、戻ってこ~い!」
むーちゃんの霊気に当てられて思考が停止してしまったようだ。
「は! 何?今の?」
「ごめんね、この子が心配して威嚇しちゃったみたいで」
「あら、かわいい!」
さっきまで怯えていたのにマイペースだな店主さん。
… あ、あなた様は …
… すまぬ、余計な事をしたようだ …
「むーちゃんは私達の事思ってやってるので大丈夫!」
「それで?どういう事?」
「ヒロはね、明後日の降霊術士試験を受けるんだけど」
「ヒナの妹ならそれくらい普通じゃない?」
「しかも
「はい?」
「あの
「うん」
「うんってどんだけなのあんたの妹?」
「道理でおっかないのが一緒に居るわけだ…」
「むーちゃんはかわいいよ」
「あーあー わかったわよ、あんたいつも何かあるからね」
「何も聞かなかった、見なかった! それでいいわね?」
「さすがわかってらっしゃる」
リーン姉様が抱きかかえたむーちゃんを店主に差し出す。
「モフモフしてもいいわよ」
… シャリーン殿! …
「これは、確かにけしからん…モフモフ」
むーちゃんは店主さんに捕まってしまった。
ハヅチは何も話さなくなってしまった。
どうやらむーちゃんの正体や俺の守護霊についてもわかっている感じだ。
「という事で服おねがい」
「OK~」
それから3時間… 店主とハヅチによる服選びが行われた。
サイアスさんは早々にげんなりして出て行ってしまった。
「これもいいね~」
「どれどれ、きゃ~ いいわね」
つ、ついて行けん…
「服はこれくらいでいいかな」
お、やっと終わりか!
「次は~ これ!」
「え!」
リーン姉様が両手で広げて見せたのは下着だった。
「あ、そ、それは何枚があるし~ 大丈夫かと」
「何を言ってるのよ、下着こそ素敵なのを持ってなきゃね!」
「そうそう」
だめだ、リーン姉様と店主さんで意気投合してて逆らえない!
ハヅチを見ると何やらはぁはぁ言ってる!
変態守護霊か!
それからさらに2時間が経過した。
むーちゃんは椅子の上で大の字で寝てる。
「ふう、こんな感じかな~」
地獄のロードがやっと終わった。
「ヒロ、おつかれさま!」
「あ、ありがとう…」
「どれも可愛いから毎日オシャレできるわよ」
着こなすのが難しそうなんですが。
「下着はこんなに要らなかったのでは?」
下着を30着選ばされていた。
「こんなの序の口よ!」
「また今度沢山選びましょう」
まだ、買うんかい!
「明後日の試験、頑張るんだよ!」
「は、はい、ありがとうモナさん、ハヅチ」
… 自信作いっぱいだからたのしんでね …
「それじゃ美味しいもの食べてもどりましょう!」
いいですな!もうクタクタ…
「むーちゃん、サイアスさん達に連絡してくれる?」
ぐったりのむーちゃんを抱きかかえてキゲン良さそうにしているリーン姉様。
… わかった・・・ …
「それじゃーモナ、またね!」
「ありがとうございましたー」
… また来いよ~ …
いや… 当分いいです~
「宿に戻ったら買ったの見てみようね~」
!! 宿に戻ったら今度は着せ替えごっこ始まるのか…
「むーちゃんの服もあるからね~」
… !! い、いや、女性に部屋に入るのはほら、あれであるから …
「大丈夫よね、ヒロ?」
もう好きにして…
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