第16話 むーちゃん

 あれからシャリーンさんが着替えを持って来てくれた。さだ子さんも一緒だ。


「着替えましたか?」


 シャリーンさんは後ろを向いていた。


「はい、ありがとうございます」


… 壊した …


 さだ子さんが壊れた修練場を見て言った。


「あ、すみません…」


… 謝る必要は無い、さだ子が元に戻す。それよりこの場所は捏紫ねしの英雄でも壊れない様になってた。それを壊すの異常 …


「そうですよ!今までここで凄い人達が修行して来ましたが全然壊れなかったのにここまで破壊してしまうなんて… 」


 なんかすみません…


「お父様があの暴虐のガルシアさんなんですよね?」


「その二つ名は聞かされてなかったのでわからないのですが…そうみたいです」


 親父はそんなに有名だったのか⁉︎


「お父様の身体能力を受継ぎ、捏紫ねしの魔力属性で魔力も膨大… 身体強化を行った時にそれが倍増されてとんでもない力になったようですね!」


 少し興奮気味になってるシャリーンさん。しかし、あれだと逆に困ると思うんだが…


「ですが!あれでは実戦では使えませんのでもっと制御できるようにならないとですね!」


「そうですよね… あんなのまともに動ける気がしないです」


「ヒロミ様が元々凄い方というのがわかってきましたのでその都度修行内容は見直しましょう」


 そう言ったシャリーンさんは何やら考えている。


「…… もう他にはないですよね?」


「他と言いますと?」


「身体能力が優れているとか魔力が強いとかの他に何か他の人より優れている所です」


 うーん、他と言ってもな〜 アレック以外身内しか知らないし…

 

「あ!…」


「まだ何かあるんですか⁉︎」


「いや、先程の模擬戦で魔力感知を自分にしたんですが… 自分の能力も見えたんです…」


「先日、私の能力が見えたと言っていましたね?ステータスですか? 同じものが見えたと⁉︎」


「はい、自分の魔力状況を見ようと思ってみたんですがステータスが見えてしまって」


「どのように見えているのでしょうか?」


「えーと、文字が浮かんでるんです。そこにLVとかHP、MP、スキルや特性とかです。後、守護霊の情報も」


「自分や他人の能力を可視できるんですか⁉︎」


「ええ、内容はなんだか自分にとって知りたい内容が出てる気がします」


「それはどのような?」


「例えば、シャリーンさんのスリーサイズとか」


「スリーサイズ?」


「ああ、身体の大きさですね。胸回りの大きさ、腰回りの大きさ、お尻回りの大きさですね」


「な! なんですかその余計な情報は!」


 やば、言わなきゃよかった…


「ヒロミ様、その情報は絶対に忘れるように!」


「他の人に漏れたら… わかってますね?」


 おお、魔力とは違う何かが立ち上って凄い威圧感だ!


「わっわかってますよ、忘れます!」


「よろしい!!」


 あー、怖かった。


「それで?ヒロミ様のステータスはどのようになっていたんですか?」


 再度、自分のステータスを見てみた。


 【ヒロミ・ライラック】

  LV 15

  HP 8652

  MP 27390

  降霊術士見習い (捏紫ねし

  年齢 15歳 男?

 【スキル】

  巨力(大)  快足(中) 堅体(大) 自己強化(中) 魔力検知(小)

 【特 性】

  毒耐性(極)  麻痺耐性(極)  変態の息子 ヒナの弟子 元おっさん 思春期

 <守護霊>

  天照大御神アマテラスオオミカミ

  通称 自称神様

  属性 神属

  能力 ****

  自由奔放 バカンス中 創世者


 あれ、なんか増えてる…とりあえず、当たり障りの無い所を教えた。


「魔力感知ではなく、魔力検知なんですか?」


「ええ、魔力検知とありますね。これでステータスが見れるのかな?」


「そうかもしれませんね聞いた事がないスキルです」


「他には毒耐性と麻痺耐性もあると?」


「ええ、(極)となってるのでおそらくほぼ効かないかと」


「毒も麻痺も徐々に耐性を上げていくものですがヒロミ様の年でそこまでとは信じられません」


「えーと、毒、麻痺については説明できます…」


「お聞きしましょう」


「私も最近知った事なんですが…」


「実家で出される食事は必ず、毒と麻痺になる食材が入っていて小さい頃から食べていたので… そういう事だと思います!」


 シャリーンさんが口をあんぐりしてる。


「親父が言うには、毒だろうが、麻痺だろうが慣らしてしまえばお腹壊さない!」


「だそうで…」


「お、お父様の方針なんですね…」


「いやー、母が言うには… 毒や麻痺を持っている食材は実は美味しくてそれを食べたかったから…らしいです」


「しょ、食に煩い方だったんですね…」


 普通は驚くよね… 小さい頃が当たり前に食べてたから全然違和感なかったけど。そういえば、お客さんが食事に来た時は出て来ない料理があったからあれがそうだったのか。


「後は忘れてましたが、守護霊が天照アマテラス様なんですよね!」


 彼女の目がキラキラしてる。


「え、はい…」


「あの創造神、天照様なのですよ!すごいですよね!」


「そうなんですが… 実は… 天照様は今忙しいらしくて私の近くには居ないみたいです」


 ステータスにもバカンス中とあるしな!


「どおりで気配を感じないと思いました、わざと御隠れになっているのかと思いましたよ」


「ですが… 守護霊が居ないと守護霊と協力した修行ができませんね~」


 そういえば、代わりを寄越すとか言ってたな。


「あの、なんか代わりの守護霊を付けてくれるらしいのですが…」


「!! そんな事が可能なんですね?」


「普通は守護霊は交代したり、複数契約したりはしないのですか?」


「守護霊はその人の運命に関わる関係なので簡単には変わる事はありませんね。複数の守護霊と契約している人も見たことがないです」


「それで?代わりの守護霊は来られているのですか?」


「それがまだなんです…」


「天照様の代わりとなれる守護霊はなかなか居ないでしょうからね~」


 うーん、どんな代わりが来るのかすごく不安だな。

 あの自称神様だしな…


「あ、あれは⁉」


 シャリーンさんが屋敷の庭の方を見ている。見てみると屋敷の庭から白い光の柱上っていた。


「なんでしょうかあれ?」


「わかりません、行ってみましょう」


 庭の方に行くとあのチンチラ像があった場所に光の柱が昇っていた。強い光だが青白く神々しくて安心する光だった。光の柱が細くなり小さくなって中にチンチラ像が見えてきた。しばらくすると光は消えてしまった。なんだったんだろう?


… あ、あのお方は!!! …


 さだ子さんが同様しているが目の前には台座に鎮座しているチンチラ像しか見えない。何かあるかと良くみていると。


「キュッ!」


 !!! チンチラ像がこっちを向いた!


「像が動いている!なんですかあれ?シャリーンさん⁈」


「わ、私もわかりません… でも、危険な感じはしないですね」


 ピョーン


 チンチラ像が台座から飛び降りてこっちに向かってくる。


「こっちきますよ!」


「ヒロミ様、押さないでください!」


 二人ともパニック状態だ。


… 大丈夫、天照様の使いの方 …


 さだ子さんは冷静に頭を下げている。


「え、あのチンチラが?!」


「そうなのですか?!」


 チンチラは目の前にぴょんぴょん飛び跳ね来て止まった。きゅるっとした目でこちらを見つめている。額に三日月の模様が付いていた。


… あなたがヒロミ殿ですね? …


 チンチラがしゃべったぁ!


「は、はひ!」


… 我が姉、天照より頼まれヒロミ殿をお守りに来ました …


「あ、代わりの方ですね!」


… 本来なら天照があなたの傍に居なければならないのですが何分色々ありまして …


 バカンス中だからな… それにしてもきゅるんとした恰好で声が真面目青年のような声だな。我が姉?… 天照の兄弟か… だれだろう?


「えーと、それでどちら様でしょうか?」


… 私は月読命ツクヨミノミコト …


「ツクヨミ 様!?」


… 私を存じて? …


「私の故郷(地球)では有名なので」


… ほう、有名と! …


 うれしそうだなツクヨミ様。月読といえば天照と対象の神様で色々な神話やラノベにも出てくるからな~。


「ほ、本当に月読様なのですか⁈」


 シャリーンさんが興奮している。


「天照様だけでなく、月読様にまでお会いできるなんて!しかもなんて愛らしい!」


 今にも飛び掛かりそうだ。


「それにしても月読様はチンチラだったんですね?」


… これはこの世界における仮の姿だが天照が可愛いからと勝手に決めてしまって …


「さすが天照様!可愛いですね!」


「シャ、シャリーンさん、落ち着いて」


 シャリーンさんのステータスは特性 モフる者 だからな。我慢できないらしい。あ、捕まった。


… こ、これ! 何をする! …


「ああ、この滑らかな毛並み、愛らしい姿!いいですわ~!」


 綺麗なお姉さんに可愛い小動物…なかなかいいものだ…


… ヒロミ殿!見てないでこの者をどうにかして! …


 しかし、日本で見たチンチラよりずいぶん大きいな。2倍位大きいんじゃないか?バスケットボールくらいある。たしかにモフり概がありそうだ。俺も後でモフってみよう…


… いいかげんにしなさい! …


 あ、ツクヨミ様が切れた! ツクヨミ様の体が強烈に青白い光を放ちその光にシャリーンさんが吹き飛ばされる。って、俺も飛ばされる!


… 少し落ち着きなさい …


 二人とも数メートル飛ばされてしまった。


「も、申し訳ございません!」


 シャリーンさんも正気に戻ったようだ。


… ともかく、これからヒロミ殿を守護する者として同行させてもらいます …


「あ、よろしくお願いします。ツクヨミ様…」


… 何かありますか?ヒロミ殿? …


「いや、ツクヨミ様というのが呼び難くて…なにか愛称を」


「はい!」


 シャリーンさんがシュタッ!と手をあげる。


「はい、シャリーンさん!」


「愛称はがいいと思います!」


「いや、それそのままだし…」


 ツクヨミ様も沈黙している。月読、月… ムーン。これだ!


「愛称はにしましょう!」


… え、いやそれは …


「いいですね!!さすがヒロミ様!」


 シャリーンさんも気にいったらしい。


「では今後はむーちゃんと呼ばせて頂きます」


… 決定なんですね …


 俺とシャリーンさんでキラキラした目をチンチラ月読様に向ける。


… さすが天照が選びしお方だ、天照そっくりですね …


 なぬ! あの自称神様とそっくりとな⁈


「その天照は今何を?」


… ヒロミ殿の傍には居れない状況ですが天照はいつも見守っています …


… あの日の思いもあるでしょうし …


「あの日?」


… いえ、なんでもありません。とにかく天照は間違いなくヒロミ殿の守護霊ですのであなたが困難に当たった時は必ず力になるでしょう …


 自称神様の感じなので不安はあるがツクヨミ様の言葉には何やら思いが感じられるし信じるしかないか。


「では、これからよろしくお願いします! むーちゃん!」


「わたしもこれからよろしくお願いします!」


 シャリーンさんが手をわきわきしていた。







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