第15話 模擬戦

 修行3日目、今日は外の石畳の広場に居る。シャリーンさんが昨日の狩の様子をサイアスさんから聞いたらしく俺の体力を確認したいと模擬戦をやる事になった。まあ、模擬戦は毎日やると言っていたが色々あってまだだったからな。

 模擬戦と言っても戦う訳ではなく俺がシャリーンさんを追いかけて触る事が出来ればいいらしい。触ると言ってもあの瞬間移動、縮地を使われたら無理では?と思うけど。


「それでは私は逃げますのでそれを追いかけて私の身体に触れる事ができるようになりましょう」


 そう言うシャリーンさん、今日は緑の和服を着ている。緑に紫の花が咲き誇っている。その花の上には鳳凰かな?黄金のキラキラした鳥が羽を広げている。亜麻色の髪と良く合ってなんとも綺麗だ。いつもと同じで裾は膝から少し上と短く、細い白い足が露わになっている。後は右手に畳んだ扇子らしき物を持っている。あれで防ぐのかな?


「いつでもいいですよ♡」


 閉じた扇子を下に構えてウインクした。思わず変な所を触りに行きたくなりますな!とりあえず行ってみる。

 シャリーンさんに向かってダッシュした。縮地も使わずあっさりと避けられた。親父の相手で結構鍛えれていると思っていたけど全然捉えられる感じがしないな。


「ヒロミ様、これは降霊術士の模擬戦である事を考えてみて下さい」


 ふむ、普通では無理ということか。とりあえず魔力感知で見てみる。シャリーンさんの光を思い浮かべてみた。シャリーンさんの体を光が包んでいるのが見える。良くみると光が揺らいでいるようだ。試しに揺らぎが大きい方へ周り込む形で向かってみた。同時シャリーンさんもその方向に動き出している。


「コツを掴んだようですね」


 そう言うとその場から消えてしまった。縮地か!光が流れた方向へ向かったが既にそこには居なかった…


「予測だけでは私は捉えられませんよ」


 どうやらそのようだ。縮地を使う時に何か見えればいいんだが…シャリーンさんに向かいながら足をよく見てみる。綺麗な足だ…… じゃなくて。

 ん? 消える時に全身の光が小さくなっている気がする。やはり魔力が関係しているらしい… 俺の状態はどうなんだ?自分自身を魔力感知で見てみる。


【ヒロミ・ライラック】

  LV 15

  HP 8652

  MP 27890

  降霊術士見習い (捏紫ねし

  年齢 15歳 男?

 【スキル】

  巨力(大)  快足(中) 堅体(大)

 【特 性】

  毒耐性(極) 麻痺耐性(極)  変態の息子 ヒナの弟子 元おっさん 思春期 

 <守護霊>

  天照大御神アマテラスオオミカミ

  通称 自称神様

  属性 神属

  能力 ****

  自由奔放 バカンス中 創世者


 おお、自分のステータスも見れるのか!…いや、そうじゃなくて!しかも突っ込みどころ満載なステータスだな!思春期なんだね…性別に?付いてるし、男の子ですよ!

 気になるがステータスは後だ、今は自分の魔力状況を確認しないと。改めて魔力を見るイメージに集中する… 体全体が光ってる!それも眩しいくらいに!

 シャリーンさんと全然違うな⁉︎彼女は光は強いが全身をその光で薄く包まれている感じだ。俺は魔力を無駄に出してるのか?そうであるなら彼女の様子を参考に真似してみよう。


「何か気がついたようですね」


 そう言うと動きを止めこちらを見ている。


 まずは無駄に出ている魔力を内に留める… 内に圧縮するイメージか? お、外に出ていた光が体に近くなって来た…。しかしこれでは反発が大き過ぎて油断したら反動で吹き出しそうだな…

 このやり方じゃないのか? もう一度彼女を見てみる。すると彼女は小さく円を描きながらクルクルと歩き始めた。回る… クルクルと… 循環か!

 圧縮するのではなく身体の中で回る、循環するイメージをしてみる。右手から頭左手、左足、右足と腹の下を中心に魔力を循環させる。自分の中で力のようなものが回っているのがわかった。


「そうです!それを維持して、そしてその循環を段々と早くして下さい」


 なるほど循環を早めて力の方向を一定にする事で制御し易くするのか!体を見るとさっきとは全く違い光っているがすごく薄い、肌にピッタリ張り付いている感じだ。


「いいですよ、すごく滑らかです」


「今度はそのまま再度私を追いかけて下さい」


 言うと同時に目の前から彼女が消えた…?あれ、さっきとは違い移動している姿がハッキリ見える。これなら追い付けるか?飛び出そうと踏ん張った瞬間。


 ドガァアアーーーン‼︎


 お足元が思いっきり滑って盛大にこけてしまった。後ろですごい音がした。


「あいたた…」


「大丈夫ですか⁉︎」


「すみません、滑ってしまいました」


 シャリーンさんはフルフルと頭を振っている。


「とんでもない人ですね、後ろを見て下さい」


 そういえば後ろで何か大きな音がしてたな。


「え⁉︎」


 後ろを見ると足元から後ろに大きく地面が陥没していた。その先には石の壁にここにあったであろう床石が刺さっていた。


「ヒロミ様がさっき行ったのは身体強化です、強化され踏み出そうとした時にその力に床石が耐えられず飛ばされてしまったのです」


「はい?¿?」


「信じられませんよね… 私も目の前で見てなければ信じられません!」


「後、足は大丈夫ですか…?」


 なんだか彼女の顔が赤いな…言われて自分の足を見た。衝撃で飛んでしまったのか下半身の服がなかった。いや、かろうじて下着は残っているが…


「怪我などは無いみたいです、ちょっとスースーしますが」


「それはよかった、防御も強化されていたのでしょうね」


 こっちを見てくれない。いや、今見られても恥ずかしいが…


「わっ私は着替えを持って来ますね!」


 そう言うと目の前から一瞬で消えてしまった。縮地瞬間移動を使って行かなくても…

 それにしてもあれが身体強化なのか。床が突然柔らかくなった感じで思いっきり踏み抜いてしまった。体は強化できるが服は強化されないのか…

 危うく俺の思春期を迎えた何かを見せてしまうところだったな…




 

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