第13話 降霊術士の修行

 … 朝だにゃ〜 …


 一緒の部屋だったミーちゃんに起こされた。


 もう朝か、昨夜は亜麻色の彼女… いやもう名前で呼ぶようにしよう。シャリーンさんの手料理なるものを頂いた。なんとすき焼きだった。醤油とかこの世界にないのに座敷童のさだ子さんが作ったと言っていたな。魔獣の肉だったが普通の獣より美味かった。醤油、分けてくれないかな…


「サイアスさんは?」


… もう行ってるにゃ、早く行くにゃ …


 顔を洗い、良い匂いがする部屋へ移動した。


「おはようございます」


 先に席に着いていたサイアスさんが挨拶をしてきた。


「おはようございます、良くお休みでしたね」


「良く眠れました」


 シャリーンさんとさだ子さんが朝食を持って部屋に入って来た。


「おはようございます!」


… おはようございます …


「さあ、しっかり食べて修行頑張りましょう!」


 朝から元気だな。


「ミーちゃんはこっちね!」


 ぽんぽんと自分の膝を叩いて呼んでいる。


… はいにゃ …


 今日は素直だな、ミーちゃん。サイアスさんは昨日同様見事な正座で待っている。

 

「ではいただきます!」


 シャリーンさんの掛け声で皆食べ始める。

 焼き魚と白いご飯、味噌汁…味噌もあるのか⁉︎

 昨日の余りらしきすき焼きを小鉢にそれぞれ入れてある。お浸しと懐かし過ぎて泣きそうだ。


「美味しいですね!」


「そうでしょうー! 英雄が再現した故郷の料理だそうです。さだ子さんから教えてもらったんですよ」


 さだ子さんは照れてシャリーンさんの後ろに隠れてしまった。後ろから膝の上にいるミーちゃんの尻尾を引っ張ってる。


… さ、さだ子、やめるのにゃ〜 …


 楽しそうなシャリーンさんを見て彼女の周りは良い霊が集まるんだなと思った。美味しい朝食の後はいよいよ修行開始だ!


    ⚔     ⚔     ⚔


 昨日家に入る前に見た石畳の広場、そのさらに奥に道場のような建物があり今そこに居る。綺麗に磨かれた板張りの床、奥の壁側にはここにも小さいチンチラ像が置いてありその上の壁には明らかに日本語で「あい らぶ ゆー」と書いてある立派な額が掛けてある…

 思わず 何でやねん! と突っ込み入れたくなる空間になっていた。


「シャ、シャリーンさん、ここに書いてあるのは?」


「それは捏紫ねしの英雄が書いたもので世界平和を思う言葉だそうですよ、読めませんけどね」


 道場でアイラブユーはどうなんだ?ねしのの英雄よ… 道場の雰囲気に合わせる為かひらがなで書いてあるし、せめてあいは漢字を使おうよ…


「気合が入りますよね!」


「そ、そうですね〜」


 こっちは気が抜けてしまった。


「それでは、まずは魔力感知からです」


「魔力感知を広範囲に出来る事で周りの状況を把握する事が可能です」


「敵の位置を知る為ですね?」


「いえ、ここではそれがないとご飯が取れませんので最優先で覚えてもらいます」


 飯の為か!


「ご飯の為か! と思いましたね?」


「あ、はい…」


 顔に出てたかな?


「ご飯は大事ですよ。食べれなければ修行もうまくいきませんよ」


 たしかに腹が減っては修行どころではない。


「まずは私の魔力を感じて下さい」


「… どのようすれば?」


 …ん? 彼女の体が光ってる気がする。


「見えましたか?」


「なんか光ってますね」


「そうです、それが魔力ですね。今は少し見え易くしてます」


「次はその光を感じたまま目を閉じて下さい」


「光を感じるはずです、感じたらそれを追って下さい」


 言われるままに目を閉じさっき見た光を思い浮かべる。目を閉じるとさっきの光の感覚がある。

 あれ? 光が後ろの少し離れた所で感じる。

 彼女は目に前に居るはずだが… 光を感じる方向に体を向けてその光に集中してみた。

 これは…彼女で間違いない。いつの間にそこに…

 光が人の形に見えて来た、その瞬間に右方向へ光の線が流れ一瞬うちに右側にその光がある。瞬間移動してるという事だろうか?


「驚きました、もう見えているようですね?」


 光が移動した方向から声が聞こえた。


「これが魔力感知ですか?」


「そうです、光はどのような形をしていますか?」


「シャリーンさんの姿をしてます」


「そこまで見えるのですか⁉︎」


「ええ、驚いている顔がわかります」


「… すごいですね、私がそこまで見えるようなるまで10日はかかりましたよ」


 10日は… 余り変わらない気が。


「ちなみに一般的なの降霊術士だと3ヶ月くらいでようやく光の形がその者の形に見えてきます。」


「そうなんですか⁉︎」


 俺ってすごいのか…?


「今度はそのまま光を意識して目を開けてみて下さい」


 光のイメージのままそこに彼女が居た。

 そして全身が光の膜で覆われている。


「そのまま私の動きを追って下さい」


 言うが早いか彼女が見えなくなった… と思ったが彼女を覆っていた光が移動した軌跡を作っていて移動した所がわかる。いや、しかし移動速度が早過ぎる!


「見えましたね?」


「はい、なんとか光の軌跡だけは…」


「そこまで見えるだけでも素晴らしいです!」


「感覚を鍛えれば移動する前に予測出来るようになりますよ」


 息も切らさず何事もなかったように笑顔でこちらを見てる。 笑顔が眩しい…


「そうしましたら今度は自分の光を感じてみて下さい」


「自分を…」


 目を閉じて自分自身が光るイメージをしてみる。

 すると自分を光が包んでいるのが見えた。


「光に包まれてます!」


「本当に筋が良いですね、そのままその光が大きくゆっくり広がる様子を思い浮かべて下さい。そして広がる時にその中に何があるのかを感じるのです」


 この光がゆっくり広がるイメージと… 少し大きくなって来たかな?


「もう少し早く広げても良いですよ、早くなり過ぎないよう注意して下さい」


 もう少し早く…


 光が広がるのを感じる、すると周りの情報が入って来た。まさにレーダーの如く、いやそれ以上に細くわかるな。道場の床、天井… 何やらそれ以上に情報が来てる感じだがそれはわからないな…


「広がった中に知りたいと思うものがあったら少しだけそれに意識を持って行って下さい」


 なるほど、範囲で探ってその中から個々に集中と…

 ! これはシャリーンさんだな、声がした方向と違う所に居る、また瞬間移動したのか?シャリーンさんを見るイメージをした。


 【シャリーン・ヒナ】

  LV 258

  HP 4985

  MP 8581

  降霊術士 (漆紫)

  年齢 17歳 女

 【スキル】

  縮地 扇の舞 剣の舞 漆紫しっしの癒し

 【特 性】

  慈愛 モフる者 料理好 王国降霊術士序列3位

  霊舞騎士団副団長(現在冒険者)

  スリーサイズ 80・48・72

 <守護霊>

  天邇岐志国邇岐志天津日高日子番能邇邇芸命アメニギシクニニギシアマツヒコヒコホノニニギノミコト

  通称 ニニギ

  属性 神属

  能力 ****

  家庭的 天照の孫


 何これ?まるでゲームで見るやつと同じように目の前に広がっている。すごいなこれ! スリーサイズまで… シャリーンさんさすがナイスバディ!

 ってこれステータス情報なのか?


「私を感じましたか」


 感じるどころかまるっと見えてます…


「シャリーンさん、なんか色々見えるんですがこれがこれが普通ですか?」


「そうですね周りにあるものが色々分かると思います。その中で自分の知識にあるものはそれと認識できる感じですね」


「いえ、なんかシャリーンさんのLVとか、能力とかスリーサイズも…」


「な! なんですかそれ⁉︎」


「ステータ… その人の情報が文字で見えます!」


 こっちの人にステータスと言っても通じない気がする。


「そんな事は見た事も聞いた事もないですね…」


「ヒロミ様特有の能力かもしれませんね」


 そうなのか? ゲームの知識とかが可視化されたのかな?さすが異世界!

 

「その能力については今後確認していきましょう」


「折角なのでそのまま広域検索をしてみましょう」


「意識をまた全体に置いて、光がさらに広がるよう意識してください」


 ふむふむ、広がる感じね…


「細かい情報を願って意識を広げ過ぎると情報が押し寄せて来て大変な事になりますので注意して…」


「え・・・」


 その瞬間、大量の情報が押し寄せてきた!あ、頭がいっぱいに…

 

「大丈夫ですか⁉」


 意識が遠くなる瞬間、実家の庭で親父が巨大な岩を砕いて砂利を作っているのが見えた…





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