第11話 再会

 馬車は森深い道を順調? に進んでいた。

 天気は良いが木々が生い茂りたまに木漏れ日が通り過ぎる位で薄暗い道。

 魔獣も結構な数で襲って来ていた。

 しかし、サイアスさんとミーちゃんがあっという間に片付けてくれるので問題なくここまで来た。

 ミーちゃんは現在俺の膝の上に居てゴロゴロ言ってる…


… 魔獣ってのは霊が憑依した状態なんだにゃ〜 …


 ミーちゃんから魔獣の講義を受けている。


「普通の獣に守護霊が憑いた感じかな?」


… いにゃ〜 守護霊になれないやつが行き場を求めて獣に寄って行くんだにゃ、その獣と相性が良い霊だとそのまま憑依して魔力を求めて人を襲う魔獣になるのにゃ …


 魔獣は霊憑きなのか。


「力のある霊だとあぶないのでは?」


… 魔獣については殆どが弱い霊が憑いてるにゃ …


「たまに強いの悪霊が憑く事もありますがね!」


 サイアスさんが御者席から話に加わってくる。


「そんなのがダンジョンに住みついて弱い魔獣を従えてダンジョンボスになったりします」


「魔獣に憑いてる霊は見えたり、話したりできるのでしょうか?」


「見える事もありますが弱い霊だと無理ですね。ダンジョンボスクラスは見えますし話もできますが大抵は問答無用で襲ってきます」


 魔獣との意思疎通は難しいか…


「他は200年程前から魔物の国ができまして、そこでは力のある悪霊を宿した人間が魔人と呼ばれ、魔人達が支配しています」


「その魔物の国が捏紫ねしの英雄が居なくなってから勢力を拡大しているのですよ」


 つまり俺がこの世界に呼ばれたのは…

 …まさかね

 しかし、あの自称神様だからな…

 不安要素がどんどん増してくるな。

 修行真面目にやろう…


「もうすぐ着きますよ!」


 おお、やっとか。

 出発してから5日か、結構遠かったな。

 森が開けて来たところに大きい湖が見えてきた。

 湖の横道を進んで行くと先に屋敷があった。

 2階建だが懐かし形をしている。

 屋根は瓦で木造の昔ながらの日本家屋!

 しかも豪邸!

 なんでここに日本の家が?

 似たような家は見かけるがここまで完璧な日本家屋は見た事がない。


「あの家が修行の場になります」


「変わった家ですね?」


捏紫ねしの英雄が住んでいた所で自分で建てたそうですよ」


 捏紫ねしの英雄… 日本人だったのか⁉︎

 この世界、地球のそれも日本の文化が結構あるのは捏紫ねしの英雄の影響だろうか…

 そう思いながら家に近づいている時だった。


 ⁉︎ なんか雰囲気が変わった?

 どんよりした空気が軽くなり爽やかな感じだ。


「家の結界に入りました。魔獣よけですね。これも捏紫ねしの英雄が作った結界だそうです」


 捏紫ねしの英雄なんでも有りだな!


 家の前に誰か立っている。

 しかも和服… でもうちのお母様と同じように裾が割と短い。

 可愛いけどさ…

 英雄様が流行らせたのかな?

 なんか見覚えある髪の色をしてるな…

 馬車は家の前で停止した。


「いらっしゃいませ、ヒロミ様」


 和服を着た亜麻色の彼女だった。

 そういえば彼女が面倒見るとかなんとか言ってたしな。


「儀式の時はありがとうございました」


 よし、始めが肝心だ! 挨拶はしっかりと!


「これからよろしくお願いします」


「私に任せて頂ければバッチリですよ」


 そう言うと軽くウインクをした。

 うっ…

 可愛すぎて思わず目を逸らしてしまった。

 もったいない…


「サイアスさんもお久しぶりですね、ミーちゃん元気ですか」


「シャリーン様もお元気そうで!ミーちゃんは…」


 荷物を下ろす手を止めて挨拶をしているサイアスさん。

 王国の序列では彼女の方が上なんだよな…

 このサイアスさんよりも強いのか…

 彼女方を見るとニッコリ微笑んでいる。

 そうは見えないな…

 守護霊のニニギさんが凄いのかな?

 家庭的な感じなのに。


「ミーちゃんどこですかー?」


 そういえばミーちゃん姿が見えないな。

 ミーちゃんを意識してみる。

 居た、サイアスさんの後ろに隠れてるな。

 彼女の目が一瞬キラーンとしたように感じた。


「そこですね〜」


 サイアスさんの後ろに居るのを見つけたようだ。


「捕まえたー♡」


 え、いつの間にそこに⁉︎

 彼女は一瞬にしてサイアスさんの後ろに移動していた。

 瞬間移動でもできるのか?

 ミーちゃんもあっさり捕まってるし。


… は、放すにゃー! …


 すっごいモフってる…


( シャリーン様はミーちゃんが大好きでして、素早いミーちゃんもシャリーン様にはあの始末で苦手にしてるようです)


 サイアスさんが近く来てこっそり教えてくれた。

 あのモフモフ感は分かる気がする。

 しかしミーちゃんが手も足も出ないとは凄いな序列3位。

 ここに来るまでのミーちゃんの活躍を見ているから余計にそう思う。

 尻尾は頑張って抵抗してるが…

 ミーちゃんは尻尾で必死に彼女の頭をペシペシ叩いている。


「シャリーン様、そろそろ…」


「は! 申し訳ありませんヒロミ様」


 ミーちゃんを名残り惜しそうに手放した。

 その瞬間ミーちゃんの姿は見えなくなった。

 本当に苦手らしい。


「お疲れでしょう、とりあえず中へどうぞ。」


「サイアスさんもご一緒に」


「お邪魔させて頂きます」


 立派な木造の玄関を入ると一段高くなった立派な板の廊下が真っ直ぐ続いている。


「履き物はこちらで脱いでお上がり下さい」


 日本家屋なら土足厳禁は当たり前か。

 この世界でも似たような家があるが一般的には土足が普通だ。


「お邪魔します」


 靴を脱いで廊下を進む。

 廊下の突き当たりを左に行くと中庭に続く縁側がありそこを通された。

 テニスコート以上の広さはあろう庭は緑の芝と玉砂利が敷き詰められており池もある。

 日本庭園風だが…

 中央の玉砂利のところに灯籠見たいのがあり台座の上には神殿で見た玉を掲げたチンチラ像が鎮座していた。

 ここにもあの像か…

 庭の奥の方に門がありその奥は何やら石畳の広場になっているようだ。

 あそこで修行するのかな?


「こちらでお待ち下さい、お茶をお持ちしますね」


 客間と思われる部屋に通された。

 何帖あるんだよ?と言う程広い畳の部屋だ。

 ほぼ中央に大きい座敷テーブルと座布団が12枚テーブルを囲むように配置してある。

 適当に座布団に座って一緒に入って来たサイアスさんに聞いてみた


「サイアスさんはこの家は来たことあるんですよね?」


「ええ、何度かお邪魔してます。私もここで修行しましたので」


 そう言うサイアスさんは見事な直立不動の正座で座っている。

 真面目か!


「サイアスさんもシャリーンさんが先生なんです?」


「いえ、私の先生はクロード・バーンと言う方ですね。当時の王国序列3位だった方です」


「だった?」


「シャリーン様が降霊術士になられて順位が変わってそれを機に引退された方でして」


「シャリーンさん凄いのですね…」


「何せ降霊術士になって1年経たないうちに序列3位ですからね」


 亜麻色の彼女、凄い人だった…


「シャリーンさんって何歳なのでしょう?」


「今年17歳になられたと思いますよ」


 若いな! というかその歳で序列3位とかどんだけなんだ?


「私と二つ違いですか、若いですね」


「ええ、まったくです! ですが実力は王国が認める方ですので大丈夫ですよ」


 何が大丈夫か全くわからないが頷いておこう…


「楽しそうですね」


 亜麻色の彼女が部屋の戻って来た。

 一緒に小さい子供?がお茶をお盆に乗せて彼女の横に居る。

 お手伝いさんのお子さんかな?

 … まさか彼女の子供!!!


「挨拶が遅れました、この子はこの家を管理している さだ子さんです」


… よろしくお願いします、お茶をどうぞ …


 この頭に直接入って来る感じ、この子も守護霊か⁉︎


「さだ子さんお久しぶりです」


… サイアスさんも相変わらずサングラスですね …


「いやー、まだまだ未熟で!」


 サングラスで未熟? なんだろうな?

 後で聞いてみよう。


「さだ子さんはお分かりのように守護霊です、捏紫ねしの英雄が居た頃からこの家を守ってくれているんですよ」


「そんな昔から!」


 さだ子さんはモジモジして照れている。

 それにしてもさだ子さんの格好はまるで、日本のアレだな…

 オカッパ頭に和服、子供…


「さだ子さんは座敷童ざしきわらしですか?」


「! よくわかりましたね?」


「座敷童の事を聞いた事があってそのものだなーと」


「さすがヒロミ様、よくご存知ですね」


 日本にいた時の知識だがな!


「彼女のおかげでここでの生活もバッチリですよ!」


「そして修行もね♡」


 またもや可愛らしくウインクをしてる。

 それを見たさだ子さんもウインクしようと頑張っているが出来ないらしい。

 こっちはこっちで可愛いな。


「ではこれからの事を説明しますね」


 いよいよ修行の開始か…

 それにしてもミーちゃんはどこ行ったんだ?



 





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