第6話 なんてこった!

 「神様だよ〜」


 性別の区別がつかない頭の中に直接聴こえてきた慌てて周りを探す。

 姿は見えない…

 いや、何か見えてきた…

 何も無かった空間にゆっくりと姿が現れてきた。

 人の形が段々とはっきりしてくる。


「待ってたよ〜」


「俺を?」


「うんうん」


 なんか軽い感じだな…


「だって君、厳格なの嫌いでしょ?」


 ! 思ってる事が分かるのか⁉︎


「だって神様だもん」


 なんかしばきたくなってきた…


「神様しばいたらダメだよ〜」


 … …


「う〜ん、そろそろかな…」


 急に真面目な声で自称神様は言った。

 突然、俺の頭の中に何かが溢れて来た。


 なっ! なんだこれ!


 綺麗に整った壁や床、机には光る板が置いてある。

 ベッドに綺麗な布が掛けられている部屋、全身を写す大きな鏡を見る知らない?顔、四角い建物が並び馬が居ない鉄の馬車が走り回っている町並みの映像が流れ込んで来る。


 どこだ… ここ?

 

 …


 いっ いや… 俺はこれを知っている⁉︎

 頭の中の霧が晴れる様に思い出していた。


 俺は… 転生者だ!!!


「思い出したみたいだね〜」


 この神様の事も思い出した!


「あんたか…?」


「どうだったかい?あっちの世界は?」


「どうもこうも転生前の記憶は無かったんだ完全にあっちの世界の人だったよ」


 周りは変態ばかりだったが。


「幼い君を守るには彼らが必要だったからね〜」


 心を読むのやめてもらえますかね?


「つれないな〜 私と君の仲じゃないか〜」


 俺はこの自称神様に異世界に転生させられた。

 転生前は地球の普通のサラリーマン… 49際。

 結婚もしておらず 、異性とのそういう関係も無く… …

 なんか哀しくなってきた。


「してないんじゃなくてできなかったんじゃ?」


「うっさいわ!」


「転生前を振り返ってるんだから静かにして!」

 

 結婚はあれだ、良い縁が無かったんだな…


「… ウンソウダネー 」


 すごい馬鹿にされてる気がする。

 転生前の俺は工場のエンジニアをしていた。

 ある日、仕事が終わっての帰り道にそいつに会った。

 そいつは帰りをとぼとぼ歩いていた俺を呼び止めいきなり言ってきた。


「異世界好きですか?」


「すみません、興味無いんで」


 危ない人と判断した俺は関わりにならないようにその場を離れようと無視して行こうとした。


「あなたもうすぐ死んじゃいますよ?」


 落ち着き払った声でそいつは言った。


「最近、胸が痛い時がありませんか?」


 俺はギョッとした。確かに最近心臓の辺りに違和感があったからだ。


「何故そんな事を?」


 普段ならこんなの無視するんだが何故か気になった。


「私、神様ですから〜」


 やっぱりただの危ない人だった!

 自分を神様とか、やばいでしょ⁉︎


「危ない人ではないですよ。本物ですから」


 !!! 思ってる事が聞こえているだと⁉︎

 

「はい、聞こえていますよ」


 まじかーー⁉︎


「まじです」


 本当なのかー⁉︎


「本当です」


 そんな顔でー?


「顔は関係ないと思いますが…」


 そんな声でー?


「遊んでませんか?」


 いや、面白かったんで…


「神で遊ばないように」


「面倒なのでもう連れて行っちゃいますね〜」


「え、ちょっ! 行くとはまだ言ってない…」


「大丈夫、パソコンの秘蔵データは消しておきますから〜」


 そんな事頼んでなーーーーいーーー!


 目の前が真っ白になり、何も見えなくなった…


 ………


 ……


 …


「ここは何処だ…?」


 何も無く、真っ白な世界。


「いらっしゃい〜 ここは神の間だよ〜」


 背後から声がした。

 振り返ってみるとさっきの者と思われる人が全身白い布を巻いた様な服を着てこちらを見ていた。

 中性的で性別が分からないが神々しい感じがする。


「本当に神様なのか…?」


「まあね〜」


 どうも胡散臭い…


「そう思うのも分かるけどね〜 あのままだと君、死んじゃうからさ〜」


「どうして死ぬんだ?」


「君は心臓に欠陥があってねあの後自宅に帰ると部屋に入って直ぐに心臓が止まってそのままポックリ行っちゃうんだよ〜」


「死んでから連れてきた方がその世への未練が少なくて楽だったんだけど〜 そうすると転生した時の力が弱くなっちゃうから生きてる新鮮なうちに来てもらったんだ〜」


 新鮮って…


「なんで俺なんだ?」


「君、一人だし〜、親戚とも疎遠で未練もあまり無さそうだし〜、異世界に好きそうだし〜」


 ほっとけ! 

 確かによく異世界物とかのアニメ見てたけど…


「そんな人がポックリいきそうじゃな〜い?」


 ポックリはやめろ。


「まあ、こちらとしても都合が良かったんだよ〜」


 まじかよ… なんてこった…

 俺死ぬところだったのか…

 正直かなりショックだ…


「でも第二の人生をやり直せるんだからあのまま、おっさんで終わるよりはいいでしょ〜」


「確かにあのおっさん人生に未練はないが…」


「でしょ〜 と言う事で異世界へご招待〜」


 本当に軽いなこの自称神様。


「だから自称じゃないって〜 周りの神達からも神様ー! って黄色い声が聞こえるんだよ〜」


 はいはい…


「そういえば異世界転生と言えば! チートな能力が貰えたりするんですかね?」


「え? 欲しいの?」


 ないんかい⁉︎


「冗談だよ〜 力を得る為に新鮮なまま連れてきたんだかからね〜」


「君は異世界、シャインメグードと言う世界に行ってもらいます。そこは少々変わった世界でね降霊術を行い呼んだ霊から色々な能力をもらい魔法のように使ってる世界なんだ〜」


「普通に魔法は無いんだ?」


「魔力はあるけど魔法や特別な能力は降霊術から貰わないと使えないね〜」


「貰える能力は選択できる?」


「うーん、呼んだ霊によるから選ぶ事は出来ないかな〜 ただ、力のある降霊術士ならある程度制御は出来るね。」


 降霊術士次第か…


「まあ、君にはあまり関係ないけどね〜」


「なんで?」


「内緒〜♡」


 うざっ!


「担当する降霊術士はいい子にしてもらうようにするからさ〜」


「それで? 俺はその世界で何をすればいいんだ?」


「特に何も〜 第二の人生を無事に生き抜いて…」


「楽しんでくれたらいいよ〜」


「危険な世界なんだな⁉︎」


「まあ、魔物とか戦争とか普通にあるからね〜」


 俺の世界じゃ普通じゃないんだが…?


「あ、それと向こうの世界に行ったら生まれたところから始まるけど成人するまで今まで記憶は封印されるからね〜」


「なんでだよ、異世界転生っていったら記憶そのままで行くのがお決まりだろ⁉︎」


「幼い時から記憶があると色々やっちゃうでしょ?」


「そうすると目立って狙われてちゃうからさ〜」


「狙われるってだれから?」


「いろ〜んな人にだよ〜、あ、人じゃ無い者もいるか…」


「大丈夫かよ!その世界⁉︎」


「普通に向こうの人として暮していれば大丈夫だよ〜」


 絶対何かあるな…


「あるっちゃーあるね〜」


「あるのかよ⁉︎」


「おっと、寄合があるんだった♡」


 寄合って庶民的な…  じゃなくて全然説明不足なんですがーー⁉︎


「そんじゃ、行ってらっしゃーい」


 また一面が白くなって行く…


「あの子は大事にしなよ〜 … 」


 あの子って誰〜〜 〜 …


 …

 

 …




「長いーーい回想だったね〜」


 転生前の事を思い出していた俺の顔をまじまじ見て神様は呆れた。


「思い出したよ! 全て!」


「良かった〜 お帰り、山下寛樹ヤマシタヒロキ君」


 … そう、俺の名前は山下寛樹だったんだ。

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