4
「あっぶねーなあ、もう少しで死ぬところだったわ」
半透明の防壁を消し、ヴァイスはノワールの方へと歩いていく。数発命中したためか、その身体からは若干ではあるが出血していた。
ノワールは地を蹴り、空へと飛び上がる。それを見たヴァイスもノワールに続き飛び上がると、ノワールの方にエネルギー弾を撃ち込んだ。
撃ち込まれたエネルギー弾をノワールは迎撃する。一つ
「お前、なかなか狙いが正確じゃないか。まあ、そうでもなきゃ面白くねえや」
「そっちこそ、ああいう技を使って大丈夫かよ。バリアってのはずいぶんエネルギー使うらしいけど」
ノワールは気づいていた。ヴァイスの飛ぶ速度が、少し落ちていることに。
「まあ、なんて言うんだ。普通の攻撃しかしていない俺と、大技をバンバン使っているお前のエネルギー消費量のどっちが大きいかなんて、中学生でもわかるだろ」
ノワールはさらにヴァイスを煽った。
彼は少し前に殴った時のあの激昂から、ヴァイスの怒りやすい性格を理解していた。このまま煽り続ければ、相手はエネルギーを全て消費して倒れるかもしれない。そう考えて、ヴァイスに対する煽りを行なっていた。
ただ、ヴァイスはそれに簡単に乗ってしまうほど馬鹿ではない。
「まあ、そうだな。だから、お前の煽りに乗らないように気をつけて力を使っているんだ」
ヴァイスはノワールのいるところまで来て、彼の胸を殴る。ノワールは策が破られたと感じつつ、
ノワールは浮上を止め、重力に身を任せながら自由落下する。地上に着陸すると、追いかけてきたヴァイスに遠距離から攻撃を浴びせた。
ヴァイスはそれにも関わらず、下の方へと突っ込んでくる。そのまま下がり続け、攻撃を続けるノワールに対し斜め上から思い切り蹴りを入れた。
「うわあああああああっ!」
ノワールはあっという間に二百メートルほど吹き飛ばされる。途中に障害物がなかったので、彼の身体は草土の上に激突した。
龍人の力による耐性がありながら直径四メートルほどのクレーターを作ったほどの衝撃。それでも、ノワールは立ち上がった。
ノワールの落下地点に向け、遠くから狙いを定めるヴァイス。
「もっぺん地獄見せてやるよ、コピー人間クン」
エネルギー弾の光が、遠くに見える。
ノワールはそれに対抗するために、再び浮上して急速に距離を詰めた。
「こっちだよ、ヴァイス。ずいぶんとマヌケたことしてるみたいだが、頭の方は大丈夫かい?」
瞬間、ヴァイスの頭に対しノワールの右手による一撃が加わる。
ヴァイスの頭に衝撃が走るが、手に出されたエネルギー弾は撃たれない。右腕の向く方向が変わり、その弾は至近距離でノワールに撃ち込まれた。
レーザーのようになった弾は、シャワーを浴びせるような形で攻撃をする。光が消えると、そこにいたノワールの服がじわっと紅く染まってきていた。
「そろそろ、お前も終わりだな。コピーだっつーからどんな泥仕合になるかと思いきや、思ったより早く終わっちまった」
力の出ないノワールに対し、ヴァイスはその胸ぐらを掴む。
「抵抗、しねーのかよ。したところでなんだって話だが、こうも抵抗されないと味気なさすら感じちまうじゃねーか……」
ヴァイスはつい数秒前に傷ついた身体に、容赦なく拳を振るう。
「しかし、弱い者いじめってのは案外楽しいもんじゃねえか。
顔、胸、腹。何度も攻撃を受け、何度かに一度血を吐くノワール。身動きすら出来ないように見えたが、そんな彼にももちろん策があった。
ノワールへの攻撃に夢中なヴァイスの
「ってえええええええ!」
「足元がお留守だな、ヴァイス。ずいぶん俺をボコボコにしてくれたが、そんなに弱い者いじめが好きなんだったらそっちも経験してみたらどうだ?」
脛に手を当てるヴァイスの腹を、ほぼ無傷の足で思い切り蹴飛ばした。
「長いこと歩いてきたから、腕力は弱くても脚力は強いんだ。どっちが勝つかなんてわからないが、少なくとも俺はまだ戦えるぞ」
口から血を垂らしながら、ノワールは言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます