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エリーへの取材は、長い時間をかけて行われた。
まずは名前や出身、家の仕事など簡単な質問から入り、それに答えると今度はそれまで起こったことについて次々と質問された。
龍人であると分かった経緯は何か。その後はどうしたのか。
連れ去られた理由は
どのように戦地から逃げてきたのか。龍人の力というものは、どれくらいのものなのか。
一つ一つ、丁寧に彼女は答えていった。
全ての質問が終わると、次は龍の姿になったエリーの写真を
この時に取られた写真は、世界史や現代社会などの教科書にも
数回の撮影を終えると、最後にエリーから世界へのメッセージの収録が始まる。アビゲイルがカメラを構え、他の二人は新聞社相手に送るための写真を確認している。
龍の姿ではなくもとの姿に戻って
彼女の口から、今まさに世界に向けてのメッセージが送られようとしていた。
「世界にいる全人類に、私は問います。私が殺人鬼に見えるでしょうか?」
力強く、エリーは語り出す。
「おそらくこれを見ているほとんどの人は、私をそうは思わないでしょう。確かに、私は今はまだ誰も殺していません。ですがおそらく、このままだとあと一年も経てば、私は殺人犯へと
写真を確認しているトーマスたちの目線が、エリーの方へと向いた。
「その理由は簡単です。龍の姿に変わる方法が、私のせいで一部の人に漏れてしまったからです。もしその力が軍事的に利用されてしまえば、多くの人がその強力なエネルギーに巻き込まれ、命を奪われることになるでしょう……。それどころか、もしもこの世界に多数の龍人が存在した場合、またそれが戦争に投入された時には、人類の文明すら崩壊してしまうかもしれません」
感情を耐えている少女の拳が握られる。
「そのようになった場合、責任は私にあると考えています。
少女の声に、
「ですが、もちろん私はそんな責任を負いたくありません。私のせいで誰かが殺されたり、苦しんだりするのは絶対にあって欲しくないんです。だから……」
少女は椅子からバタンと立ち上がり、左手でテーブルを叩いた。
「だから! 私からみなさんにお願いがあります。……どうか、未来に
彼女の叫びを聞いた、その場にいる他の三人は身体が動かなくなっていた。
世界に向けるメッセージには、それだけの力が込められていた。
「私は、龍人が世界を壊す光景を想像したくありません。……終わります」
カメラが止められたのは、それから十秒以上経ってからだった。
はあはあと息を切らしながら、エリーは自室に戻った。
その時の感情を表現するための言葉を、彼女は持っていなかった。不安とも安心とも言えるような、そんな彼女のもやもやした気持ちを正確に説明することは、たとえ名だたる文豪にすら不可能なことだろう。
自分の言葉で世界の意識が変わるかもしれないという安心感。自分の言葉が意味を成さないのではないかという不安。国際機関への期待と猜疑。
感情が混ざり合ったエリーには、ほっとしたような心配しているような深い息を吐くことしかできなかった。
龍人の存在の認知され、また一人の少女が世界に向けてメッセージを送ったこの日、確実に世界は大きく変わっただろう。
世界が変わったその日から、およそ四年の月日が経った。
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